この恋は甘い夢。

CAST小松崎 ふたば小松崎 ふたば

作者:rena

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2022.12.10

昔、夢を見た。





大好きな人と、
結ばれる夢。





でも、私に、
夢みたいな恋なんて
訪れっこない。





万が一あったとしても、
それは夢を移すシャボン玉で、





パッ!
と割れてしまう・・・。













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





「あっ、ユナ! おは~」





「フタバ。
今日も元気だねえ」





寒い2月の朝。
学校に登校してまもなく。





友達の吉岡優奈が、
笑顔で挨拶を返してくれる。





私は、小松崎ふたば。
中学2年生です。





「あれ? ユナ、
普通、ゆななとコハナと
一緒じゃない?」





ユナに向かって聞いた瞬間。





「ヤッホー!」
「待ったー?」





と、2つの明るい声が
聞こえてきた。





「待ったよー」





ちょっと遅れてやってきた
この子たちは、
高比良由菜と有坂心花。





コハナはともかく、
ユナが2人も? と思うよね。





優奈はユナで、
由菜はゆななって
あだ名だから、大丈夫。





以上、4人揃っての
グループです!





「もうすぐ、
バレンタインだね」





私は、降ってくる雪を見ながら、
つぶやく。





「だねー。
って、そういえばね。
ハアトがさ、
家によってきてくれたの~。
今年も、チョコくれって
言ってくれたの!
キャーッ」





バレンタインという話題に、
ゆななが照れながら
ときめいている。





八田大翔くんは、
ゆななの幼馴染であり、
長年の片想い相手。





「キャー。ラッキー。
実は、私も、エイトくんと昨日、
帰り道で話せたんだ!」





今度は、河島英人くんと
友達以上恋人未満の
ユナが言う。





「いいなあ。
私は、まだ、ナツ先輩と
話せいないんだよねえ」





コハナが羨ましそうに、
ゆなゆな(ユナとゆなな)を
見ている。





「確かに、久野先輩、
部活で忙しいもんね」





考えながら
フォローを入れると、
皆の目が私に向く。





「な、何?」





「フタバは、まだ、
好きな人ができないの?」





先に口を開けたのは、
ゆななだった。





「う、うん」





恥ずかしいけど、
メンバーの中では、
私1人が恋をしていない。





「もったいないじゃん!
可愛いのに。
まさに天使!
って感じだし~」





コハナ、それ、大げさ。





「ルワとかどう?
タイヨウやヨシトもいいよね!
リュウノスケ先輩も、
ユアンくんもタスクも、
オオゾラや、
あ、レンくんも!」





次々と名前を言い当てる
ユナに対して、私は言う。





「南くんは、好みじゃない。
犬飼くんは、キラキラすぎだし、
野口くんは、彼女がいるじゃん。
宮本先輩はモテモテ、
西くんは甘えん坊で嫌、
前川くんは冷静で
一緒にいても盛り上がらない、
懸樋くんは派手で、
内田くんと同じクラスになったこと
ないから、どんな人か知らない」





「ひゃー、フタバ。
今、世の中の女子中学生の心を
痛めること、言ったよ~!」





コハナが、頭を抱える。





そこが可愛いんだけど、
コハナは
大げさなところがある。





「てゆうか、現実的すぎ!
夢くらい、見たら?」





ユナが苦笑している。





「見たことあるし~」





言い返すと、思い出が
波のように打ち寄せてくる。





私だって、
夢を見たことあるよ。





ずうっと前、
男の子に助けられて、
恋をしたこと。





再会できると。





彼と、
名前も知らない彼と、





そう約束したから。





一度思い出すと、
振り返ってしまう。













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





今から、7年前。





幼稚園の、6歳の頃。





お母さんとお父さんと
NICOLAショッピングモールに行って、
迷子になった。





「ママ? パパ?
どこお?」





必死に探したから、
力が出ない。





歩き回ったから、
自分がどこにいるかも
わからなかった。





とりあえず、壁の隅っこに
座り込んで・・・泣いた。





迷子のお知らせは、
泣いていたから、
気づかなくて。





呼んでも、呼んでも、
お父さんたちは来なくて。





「パパあ。ママあ。
ねえ。どこおー?!」





すると、人影を感じた。





見上げると、
同い年の男の子が
私を見下ろしていた。





「何よ。迷子が、
物珍しいとでも言うの?」





両親じゃなかったことに
ムカついて、
憎まれ口を叩いた。





でも、すぐに顔が歪んで、
また泣き始めた。





そんな私を、
彼はじっと見て・・・
離れていった。





結局、行くんじゃない。
また、1人ぼっちに
なるんじゃない。





そう思うと。





また、彼がやってきた。





今度は、
彼の父を連れて。





「パパ。
この子じゃない?
放送で言ってた子。
ほら、ピンクのスカートだよ?」





「そうだな。
多分、この子だ。
1人だし」





彼のお父さんが
そう言うと、
私を立たせてくれた。





「どうしたの~?」
「何だ何だ?」





母親と友達らしき人がやってきて、
泣いてる私を両親の元へ
連れてってくれて。





その間、男の子は
ずっと手を握ってくれた。





優しくて、力強い手。
温かい手。





お母さんとお父さんは、
私の姿を見て、
ドッと泣いてしまった。





何度も何度も、
彼の両親にお礼を言った。





「ありがとう」





私も、彼にそう言った。
涙が、止まらずに。





「ねえ。
また会える?」





幼稚園生だからこその
無邪気さで、聞いた。





「うん、また会おう!
今度は、ちゃんと、
僕と遊んでくれる?」





「もちろん!
私も、遊びたーい」





「じゃあ、約束だね」





指切りをした。
ハリセンボン飲ますと言った。





物語みたいに、
運命だと思った。





今思えば、
涙はまだ頬に伝っていた。





「僕たちが、
小学校6年生になったら、
◯△公園で待ち合わせしよう」





「それ、いいね。
待ってるよ!」





話し合っていると、





「じゃあ、ふたば。
そろそろ行こうか」





親と手を繋いで歩きだすと、
振り返って彼を見た。





「バイバイ」





「また今度ね」





最後の挨拶を言うと、
彼が呼ばれた。





「おーい、
う・・・だ!」





友達が叫んだ。





「レ・・・もう、
早くしなさい!」





彼のお母さんも。





私たちは、
手を振って、別れた。





家に帰ってから、
気づいた。





私、涙目で、彼の顔を
しっかり見れなかったと。





それでも、彼は私を
見ていたから、
大丈夫だと思い、
月日は流れていった。





あっという間に、
小学6年生の入学式。





終わってから、
◯△公園に、
走っていった。





きっと、会える。





信じながら、
公園についた。





男の子は、いない。
仕方がなく
待ってみることにした。





来ない。来ない。
来ない。





そう思うばかりで
太陽は沈んでいった。





小さな時の約束なんて、
浅いものだと知らされた。





運命なんかないと、
わかった気がした。





顔すら見れなかった、
私が甘かった。





ゆっくりと、
家に帰り始める。





振り向いては、
彼らしき姿を探したけど、
なくて。





そのまま、
後ろを見ずに帰った。





う・・・だ。
レ・・・。





彼の名前の部分が、
頭の中で響き渡りながら。













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





「たば。フタバ!」





ハッと我に返る。
放課後、4人で
教室に残っていた。





ユナが、不満そうに
私の顔を覗き込んでくる。





「聞いてた~?」





冗談っぽく笑うコハナ。





「も、もちろん、聞いてた」





「じゃ、何を言ったか言ってみて」





大人っぽくクールなユナに
試されると、
素直に負けを認めた。





「う。ごめん、嘘ついた」





「見りゃわかるよ。
フタバ、
全然話に集中しないからさ」





ユナ、厳しい・・・。





「大丈夫! きっと、
しばかれるだけですむよ!」





ゆななが一生懸命に
「慰めて」くれる。





正直、あんまり
大丈夫じゃない・・・
しばかれる?





「私って、
そんなことしそう?」





ユナが、
コハナに聞いている。





ゆななのこういう、
訳がわからない話に、
いつも笑ってしまう。
癒やされるって感じ?





「ゆーなな!
部活行こう!」





「わっ! ハアト!
びっくりするじゃん。
もう!」





プンプンと怒るゆななは、
なんだかんだ嬉しそう。





「ぎゃー。鬼が来た!
オレは、迎えに
来ただけなのにさあ」





バスケ部の八田くんは、
マネージャーのゆななを
迎えに来たらしい。





「鬼なんて、ひどい!」





「とりあえず、行こうよ~」





「話をごまかさないの!
・・・って、本当!
こんな時間?
コハナ、ユナ、フタバ、
また明日!」





「バイバイー」





2人は、バタバタと
教室を出ていく。





「カップルみたいだね」





コハナが独り言を言うと、





「私もそう思った!」





と、ユナと私も同意する。





ゆななが素直になったら、
2人はうまくいくと思う。





「じゃ、私、行くわ。
エイトくんと帰れるかどうか、
聞いてみるの!」





相変わらずユナは積極的だ。
そうやって努力している彼女は、
カッコいい。





「じゃあね」





これで、私とコハナは
2人っきり。





「久野先輩に話しかけないの?
コハナ」





「う、うん。
先輩、シャノン先輩と
一緒に帰るんだって・・・」





シャノン先輩とは
伊藤沙音さんのこと。





可愛くておしとやかな
清潔感のある、
学校のアイドルだ。





「カレカノって
わけじゃないかもよ?」





「でも、帰るくらいの
仲なんだって思うと、
不安になる・・・」





普段明るいコハナは、
久野先輩のことになると、
弱くなる。





「聞いてみなよ」





「それじゃ、
気持ちがバレるよ!」





「コハナ。
コハナは、それでいいの?
伊藤先輩、確かに
久野先輩を狙っているよ。
ふたりがくっついていいの?
コハナは、それで落ち込まない?」





「・・・はあ。フタバの、
そのピュア系な可愛い顔で、
現実的なもんを聞かされると、
変な感じになるわ~」





「悪口?」





「褒め言葉ではない」





「じゃあ、悪口じゃん」





「ねえ。フタバ。
私、やっぱ、頑張ってみる!
シャノン先輩くらい
可愛くはないけど、
自分の個性でアタックしてみる!」





コハナは、
教室を出ていった。





これで、とうとう、私は
1人ぼっちになった。





可愛くないとは言ったけど、
いきいきした「恋をしている!」
コハナは、私には、
とびきり可愛く見えたよ。













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





休日。





7年前、迷子になった
NICOLAショッピングモールの中を歩く。





何年かたったってこともあり、
昔なかったショップとかがある。





もう、中学生なんだし、
迷子になんかならない!





・・・と、思っていたけど。





「どうしよう~」





迷子になりました。





最悪。最悪。
悪夢!





景色が変わっていたから、
よくわかんないとこまで
来ちゃったじゃん!





ヤバい。
お母さんに、
遅くなったと言おうかな・・・。





どうしたのって
聞かれるよね・・・。





中2で迷子とか
恥ずかしすぎる!!





どうしよう、
どこに行っても、
出口が見つからない!





また、1人になる。





そう思うと、
涙がちょっとだけ
目に浮かんだ。





泣くもんか。
絶対、泣かないもん!





でも、あのときの記憶が
蘇ってくる。





どうしよう。





と、その時。





「お客様に迷子の
お知らせがあります。
ピンクの服を着た
中学2年生の女性を見つけた場合、
オレのところまで
お越しくださいませ」





懐かしい声がして、
慌てて見上げる。





「だ、れ・・・」





そう聞くけど、
もう答えはわかっている。





「ひでーな。
覚えてくれないなんてさ。
ま、顔が見えてなかった
みたいだし、いっか」





「だから、誰って
聞いてるでしょ」





「相変わらず、
見た目とは違って、
ハキハキした気の強い
性格だよな~」





男の子が笑っている。





優しい瞳。
楽しげな唇。
くすぐるような笑い声。





「自己紹介していないのは、
本当だけど」





「だから、
答えてってば!」





「オレ、内田蓮。
レンって呼んでいーぞ」





記憶の中の名前に、
当てはまる。





う・・・だ。
レ・・・。





内田レン。





「なんで、
覚えているのに、
来なかったの・・・?」





自分でもよくわからない
強い感情が広がって、
顔がゆるんじゃう。





言葉が、想いが、
溢れてしまう。





「ずっと、待ってたのに、
なんで来なかったの?」





同じ学校に通う
同級生の男子は、





泣き続ける私を、
申し訳なさそうに
見下ろしていた。





「待ってたのに、
約束したのに!
内田レン、
君は自分から
申しでた約束を破るの!?」





私、自分から尋ねたくせに、
耳をふさいじゃう。





だって、
答えを聞かされると思ったら、
怖くなって。





ダッシュで、
その場から走り去る。





内田レンは一度だけ
「小松崎!」と叫んだけど、
無視して走り続けた。





私の名前、
調べていたんだ・・・





やめてよ。
溢れちゃう、想いが。





迷子になっていたから、
どこにいるのかも
よくわからない。





出口は、
バレンタインのチョコを
売る店の前だった・・・





見つけられると思う。





でも、なかなか
視界に入ってこない。





目的地が。





私は、何を探している?





内田レンのことは、
もう、過去のはず。





だったら、なんで、
私はこんなにも
必死に彼を想うの?













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





朝がやってきた。





「行ってきまーす」





私は、家を出て、
学校に向かう。





コハナとユナとは
違う方向に住む私は、
ゆななと登校することが普通だ。





ただ、ゆななはハアトくんと
通うことが多いから、
1人で行くのも日常。





ガラッ。
教室への扉を開けると、
クラスメイトの視線が、
私に集まる。





は? え、何?





真剣な眼差しや噂話の笑い声に
呆然と立ち尽くす私の元へ、
ユナとコハナ
(ゆななは私を呼ぶために
校庭で待っているらしい)
が慌ててやってきた。





「フタバ、レンくんと
付き合っていたの!?
知らないって言ったじゃん!」





コハナが騒ぐ。





内田レンのこと?





私が、彼と付き合っている?





「はあーっ?!
なんで、そうなるのよ?!」





叫びが、思わず口から
出てしまう。





「さっき、来たんだよ!
小松崎ふたばってヤツ、
いないかって!
とりあえず、まだ来てないと
伝えておいたけど。
でも、クラスの乱暴な男子が
カップルですか~?
とからかったら、
レンくんは照れたのか、
そんな感じって
イケメンセリフを言うなり
出てったのよ!」





ユナが、
とても細かい説明を
してくれる。





あいつってば、
そんなこと言ったの?





「で。
そんな感じって、
どんな感じなの?」





背後から声がして、
振り向くと、
ゆななが興味津々な表情で
私を見ていた。





「わかんないよ!
私、告白された覚えないし、
自分から告白をしたことなんて、
絶っ対にないし!
なんでもないよーっ」





「じゃ、なんで、レンくんは
そう宣言したのよ?」





「知らないよ!」





本当に、
彼が何を考えているのか、
わかんない・・・。





なんで、
交際宣言しちゃうの?





2回しか
会ったことがないのに。





私たちは、揃って
ユナの席まで行く。





「にしても。
レンくんって、
嘘つきなんだ~。
意外! 悲し!」





コハナは、
好きな人がいるくせに、
わざと寂しそうな顔をする。





「皆。帰り道、どうだった?」





「え?」





私が聞くと、
全員が不思議そうに見てくる。





「ほら、
好きな人誘ったじゃん、
一緒に帰ろうって」





「あー。それね!
ハアトが部活で
シュートできてね!
その話ばっかり聞かされたの~」





不満そうに言う
ゆななだけど、
雰囲気は明るい。





「私、エイトくんには帰るの、
断られちゃった・・・
けど、野球部でカッコいい姿を
見せるために頑張るからって!
キャーッ!」





「ナツ先輩、シャノン先輩、
私の3人で帰ったよ!
シャノン先輩とは別れてから、
2人っきりになって、
お話ができたの」





3人とも、嬉しそう。





「良かったね!」





本当に、皆、
頑張ってるから
私も嬉しい。













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





「小松崎!
なあ、ちょっと
来てくんない?」





放課後。





内田レンに呼び出された。





「なんで?」





「言いたいことがあって」





彼は、笑顔で言う。





ちゃんと
空気を読んでほしい。





クラスメイト、
全員見てるじゃん。





「それ、今言う?」





「うん。だって、
オレのこと、避けてるし」





バレた?!





そう。なるべく
目が合わないように
していたけど。





「一生のお願いだからさ!」





なんか、
断れない感じがする・・・。





嫌なはずなのに、
ちょっとだけ、
嬉しい私がいて、
そんな自分が恥ずかしい。





とりあえず、
彼についていく。





屋上にたどり着いたら、
彼がこっちを向いて、
真剣な表情で
私に語りかけてきた。





「なあ。怒ってるの?
オレが交際宣言みたいなこと、
したって」





「少し・・・
だって! 私たち、
付き合ってないでしょう?」





答えながら目をそらす。





目に、涙が浮かんだから・・・





「え? 違うの?」





予想外な返事だった。
そう思い込んでいたの?





「違うじゃん!」





「だって、約束したし。
再会したら、
付き合おうって」





「そんなこと、
覚えていないよ?!」





私、そんなこと言った覚え、ない。





「ほんと、ひでえな。
公園で待ってたのにさ?
ずっと」





今、なんて言った?





「待ってた?
私、ずっとそこにいたのに?」





「うん。
小6になった日に。
って・・・いたの?」





「私もいたよ!
4月8日!」





「オレは、
4月6日・・・」





そう、だったんだ。





違う小学校だったから、
日付が違ってたんだ・・・
考えもしなかった自分が、
恥ずかしい。





「そんな。
だって、だって。
忘れられたと、思って・・・」





泣き出しちゃった私を、
彼、内田レンは
愛おしそうに見ていたことを、
私は知らずにいた。





とにかく、
安心したような、
怒ったような、
バカにされたような、
嬉しいような、
悲しいような、





そんな複雑な感情が
心を染めていく。





「こんな、当然な事実、
どうしろっていうの・・・
その日が来た時、
嬉しくて、嬉しくて、
舞い上がっていたら、
君はいなくて・・・」





私は、じーっと見られていることに
ムカついて、言う。





すると。





ギュッ





え?





今、ハグ・・・された?





背の高い内田レンが、
私を抱いている。





力強いけど、優しい腕。





男の子のような感じがして、
妙に自覚してくる。





ハグされている。





沈黙が続く中、
私も、そっと
彼の背中に腕を回す。





こんなことするの、
初めてだ。





男性と抱き合うなんて、
あり得ない夢だと思っていた。





だって、私は、
約束を「破られた」
女の子だから。





私の行動に驚いたのか、
内田レンが一瞬、
びっくりした表情になる。





でも、それは一瞬のことで、
すぐにまた私の肩に
顔を押し付けてくる。





「好きだよ」





ポツリと、彼が言う。





「え?」





「大好きだよ」





告白されたことに気がつく。





「可愛いのに、
ギャップのある君が、
寂しいのに、強がる君が、
でも、結局すっげえ
可愛い笑顔で笑う君が好きだ」





やっぱり、
そう見えるんだな・・・。





「小松崎ふたば」





名前を呼ばれて、
彼を見上げる。





「好きです!
付き合ってください!」





「私も・・・」





ポツリと、
想いが口から出て、
形になる。





「私も、好き!」





そう。





ずっと、好きで、
傷ついたから、
認めたくなかっただけ。





私は、内田レンが好き。





「あの、内田くん」





呼びかけたら、





「ブッブー。
レンだよ、フタバ」





下の名前を呼ばれた
嬉しさが、広がる。





「うん! レン!」





自分で言ってって
言ったくせに、
レンが顔を赤らめている。





可愛い。





そういうところも、





「大好き!」













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





その晩、
電話をもらった。





相手は、
レンの母親だった。





「あなたが、
フタバさん?」





「え、あ、はい!
どうしたんですか?」





レンの母親は、
微笑ましそうに、
でも、その倍くらい
悲しそうに、言った。





「良かった。
レン、最後は、
幸せになれたんだね」





「どういう、意味・・・
ですか?」





決意を固めたかのように、
レンの母親が息を吸う。





「死んだの」





一瞬、心臓が止まったと思った。





「レンは、今日、帰り道で・・・
交通事故にあったの」





私たちは、もうすでに、
涙が溢れている。





レンが?





やっと、
両想いになれたのに?





「本当に、死んだの?
意識を失っただけじゃない?」





敬語が抜けてしまった。





それくらい、
信じられない話だったんだ。





「・・・まだ、
少しは生きている」





「だったら!」





「でも、元気になれる可能性・・・
生きられる可能性は、
たったの2%で・・・」





可能性は、2%?





レンの命は、そんなに
軽いものじゃないのに?





もっと、もっと、優しくて、
強くて、素晴らしいものなのに?





「だから、フタバさん。
最後に、レンに会ってみる?
私も、信じたいけど、
本当にいなくなったら・・・
レンが・・・もしも・・・っ」





レンの母親が、
声を上げて泣き出した。





自分の息子が死に近づいていて、
大丈夫でいられるわけがないよね。





私でさえ、もう、悲しみで
潰れそうだから・・・。





ズン。ズン。
心臓が鳴っていることすら
感じられないほど、
レンのことしか考えられなかった。





私なんかに、
甘い恋なんて訪れっこない。





だって、私の大好きな人が、
いなくなっちゃうかも
しれないから・・・。





「はい。レンに会います」





泣き声しか聞こえない沈黙を、
私は自分の言葉でさえぎった。





「え? 本当に、いいの?」





「はい。彼女として、
ちゃんと会いたいんです」





「・・・いいわ。
レンも、きっと喜ぶよ。
明日の12時、
◇○病院で」





「はい。
あと、その・・・
頑張りましょう」





「一言余計よ」





普通、彼氏の母親に
そんなこと言われたら、
最悪だろうけど、
レンのように、
からかっていることがわかった。





電話を切ってから、
シャワーを浴びて、
ベッドに倒れ込む。





月が、青く光っている。





その美しさに
吸い込まれそうで、
なんだか怖い。





「お願い。レン。
無事でいて・・・」





私は何もできなくて、
頬を涙でぬらしながら、
ただ、そうつぶやくことしか
できなかった。













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





次の日の朝。





私は、予定ぴったりの時間に、
病院についた。





「フタバさん!
こっちよ」





レンの母親の目は、
赤く腫れていた。





多分、ずっと
泣いていたんだろう。





「あの、呼び捨てでいいですよ?」





空気を明るくするために、
私はふいにジョークを言った。





「じゃあ、ちゃん付けね。
フタバちゃん」





私たちは、笑い合う。





「行こうか」





レンの元へと、
案内される。





寝ている彼を、
私は覗き込む。





違う。寝てない。
レンは、本当に、
意識をなくしている・・・。





息すら、ささやかなほどで、
まるで聞こえないくらい。





「レン」





静かに呼びかける。





返事を期待したけど、
レンは口を開かない。





冗談であってほしい。





でも、これは現実で、
今起こってることはリアル。





長いまつげが、
揺れている。





静かに息を吐く音。





私、何もしてあげられない・・・。





お願いだから、
行かないで。
私と一緒にいて。





レン!





ギュッと目をつぶったとき。





「?」





起き上がる音がした。





レンが、座りながら、
不思議そうに私を見ている。





「レンが!
起きました!」





慌てて
レンの母親に知らせる。





そこからが、大騒ぎ。





医者や看護師たちが、
急いで病室に入ってくる。





私は、レンの母親と一緒に、
ひたすら待つ。





結果を。





運命を。





「確かに、意識は戻りました。
怪我も大したことではありません。
しばらく入院すれば大丈夫でしょう」





「話せますかっ?」





お医者さんが
うなずいてくれる。





ドクン。ドクン。





緊張と、その倍くらいの嬉しさを
心に踊らせながら、
再び内田蓮と書かれた病室に入る。





そこには、
元気そうな彼がいた。





「レン!」





彼の名前を呼んで、
手を握る。





確かな温かさがあって、
ホッとする。





でも、
レンの反応は違った。





その楽しげな口から、
こんな言葉が出てきたから。





「君、誰?」





頭が真っ白になる。





何も考えられない。





レン、





「覚えていない、の・・・?」





そう言うと、
心臓がいつもの何倍も
早く鳴っていた。





「フタバだよ!
小松崎ふたば!
何年も前にあって、
再会したばかりの、フタバ!
ねえ。冗談を言うときは、
もっと軽いのでして?」





「冗談なんか言ってないし。
オレ、君のこと知らないから。
会った覚えもない」





まさか、レン、
記憶喪失・・・?













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





ズン。ズン。





音をたてずに、
帰り道を歩く。





レンは、一時的かどうかも
わからない記憶喪失なんだって。





両親のことは覚えていたけど、
学校のことを全部、
忘れている。





どの教室かも。
先生も。
スケジュールも。





学年もクラスメイトの名前も、
全部、忘れている。





中学校の前にあった私まで、
何故か知らないんだって。





記憶喪失なら、
仕方がない。





でも、私のことは、
当然のことでも、
覚えていてほしかった。





ポト。





雨が降り始めて、
水が地面に当たって跳ね返り
また歩道に溶け込む。





小降りが、だんだん、
嵐のように激しく降っている。





でも、そう思っているのは、
私だけ。





私の心の中で、
嵐が起こっている。





強い感情がぶつかり合い、
絡まって、私を苦しめる。
締め付けられる。





レンに、忘れられた。





レンは、覚えていない。





私のことを。





私たちの想いを。





忘れている・・・。





「ねえ。見て、あの子。
傘ももたずに、
立ち止まっているわ」





子連れの女性が、
そう言うのを聞いた。





ピロン。





携帯の画面に
通知が現れた。





『レンのラインを使ってるわ。
フタバちゃんに言わないと
いけないことがあって』





どうやら、レンの母親が
彼の携帯を使っているらしい。





『レン、フタバちゃんと会った
niko・puchiショッピングモールに
行ったことを覚えているけど、
でも、フタバちゃんのことはすっかり・・・。
でね、思ったんだけど、
そんなことあったっけ?』





メッセージの最後の文章が、
心に引っかかった。





そんなことあったっけって、
いたじゃん・・・。





あと、niko・puchi
ショッピングモール?
私がいたのは、
NICOLAショッピングモールだった。





少しずつ、
気づいてくる。





あの時、
起こったことを。





スピードを上げて家に帰る。





夢、





・・・かもしれない。





私とレンが出会ったのは、
夢なのかもしれない。





何を考えているのって
思うでしょ?





ヒントは、3つ。





まず、レンは私たちが
付き合うと約束したってこと。





私はそんなこと、
していない。





次に、レンと私の
「行ったショッピングモール」
が違うということ。





私たちが同じ場所に
行っていなければ、
出会うはずもない。





そして、
1番重要なこと。





レンの母親が、
小さな私のことを、
記憶にないこと。





一時間弱も一緒にいたのに、
覚えていないわけがないから。





そこで、思い浮かぶのは・・・
「出逢い」が夢だということだ。





状況がそっくりな、
でも、お互いの夢だから
ちょっと違う、
そんな「幻想」を、
私たちは見ていたんだ。





偶然だと信じたくないけど、
「本物」じゃない
「出逢い」だったんだ・・・。





そう考えると、
全部、つながる。





夢だったんだ。





私の、小さな私の、
すべてが偽物で。





本当のことではない夢、
だったんだ。





「レン・・・」





甘い未来を移した、
期待のシャボン玉が、今、





パッ!





と、心の中で
割れてしまった。













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





「フーターバ!」





「ふゅえっ?!」





朝。1人で登校していると、
背後から急に
声がふりかかったかと思うと
肩をぽんっと叩かれた。





びっくりして、
変な声が出てしまった。





「ゆなな!
もう、心臓が
飛び出るかと思った!」





そう。
ゆななが立っていた。





「見ないんだから!
メールを送ったのにぃ!」





ほっぺをふくらませるゆななを、
私は目をパチパチさせて見た。





「は?」





「既読無視したかと思ったら!
スマホも見なかったの?」





とりあえず、
携帯を取り出す。





そこには、ゆななからの
「一緒に行こう!」
というメッセージがあった。





「忙しくて・・・ゴメン」





「ふふっ。いいよ、別に。
じゃ、登校、登校!」





ゆなな・・・
私に気を遣って、
許してくれている。





まあ、元々こんな感じ
なんだけどね、ゆななは。





「思ってたんだけどさ、
フタバ」





「んー?」





「最近、元気ないね?」





「バレてた?」





意外すぎる事実に、
私は強いショックを受け、
気分が沈んでいたんだ。





「うん。ユナたちも
心配してたから、
私に話聞けって。
ほら、方向が一緒だから」





「気づいていたんだね・・・皆」





コハナも、ユナも、
私のことを
ちゃんと見てくれていた。





「で、どうしたの?」





私を覗き込んでくる
「友達」に、
私はすべてを伝えた。





出会いも、告白も、真実も。





すべてを言い終えたあと、
ゆななが口に手を当てた。





「フタバ、本当に
大変だったんだ・・・」





「これ、コハナたちに
言ってくれない?
また口にしたくないから」





「了解」





レンは、
まだ学校に来ていない。





1週間ちょい、
入院をしているらしい。





交通事故にあったことには、
変わりないから。





「ほら、ついた。
重い雰囲気は、もうナシ!」





私は、わざと明るく言った。





自分の漂う暗い空気で、
他の人達に
迷惑をかけたくない。





レンのことは、ちゃんと
自分に向き合ってからにする!













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





出来事から、4日。





レンは、元気いっぱいで
学校に来ている。





友達だった人たちと、
また仲良くなっている。





そんな彼の姿を、
私はそれとなく
微笑みながら
遠くから眺めていた。





まだ、本当のことを
打ち明けられる勇気がないから。





そんなある日。





私が、先生に頼まれた荷物を
職員室に運んでいると。





はしゃいで笑っている
男子のグループが通り過ぎて、
その中の1人とぶつかってしまった。





ドン! バサッ。





紙や箱が
散らかっちゃった!





わーっ。
先生に殺されるよー!





「ご、ごめんっ!
大丈夫?!」





誰よ~と文句に言おうとしたけど、
その前に、私を見下ろしている
男子の顔を見て、はっとする。





「内田、レン・・・」





「あれ?
君、病院にいた・・・」





そうか。
当然、知らない人にまるで
2人が出会っていたかのような
扱いをされたら、
そりゃ覚えるよね。





「じゃ、ぶつかってごめん。
手伝ってくれて、ありがとう」





そう言い、再び職員室を
目指して進み出す。





「あ、君の名前は、何?」





角を曲がるところで、
レンがそう聞いてきた。





「小松崎ふたば。
でも、私のこと、忘れていて」





私の言葉を、レンは
不思議そうな表情で
受け止めていた。





荷物をおろして、
教室に戻る。





ユナたちが喋っていた。





「それにしても、
レンくん、ひどいよね。
フタバのこと、
忘れてしまうなんて!
ショックを受けているフタバに
気づかないでさ!
男子として、あり得ない!」





大げさなコハナの大声が
聞こえてくる。





記憶喪失なんだよ?
しょうがないじゃん。





でも、本当に、





「思い出してほしいなあ・・・」





なんてね。





本音を、打ち明けてしまった。





自分に、教えてしまった。





気持ちを。





言葉に出してしまうと、
形になる。





涙になって、流れ出す。





やっぱり、好きだ。
レンが、好き。





でも、私たちの恋は、
夢だから。





夢はいつか、
思い出せなくなるんだ。





「あ、フタバ。
おかえりー。
重かった?」





ユナが呼びかけてくる。





泣いているのを
見られたくなくて、
慌てて涙を袖で拭く。





「平気だったよー。
私、普通に力持ちだし」





笑顔を作って、
返事をする。





だって、
心配かけたくないし、ね。





「とりあえず、おいでよっ」





ゆななが誘ってくる。





私たちは、その後、
好きな人に渡す
チョコの話をした。





バレンタインまで、
あと1週間弱。





カウントダウンが、
始まった─────。













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





やっぱり、
レンが好き。





やっぱり、
諦めたくない。





例え、出会いやキッカケが
夢だとしても、
好きだから、
諦めたくない。





思い出さなくてもいいんだ。





恋という感情は、
本物だから。





バレンタインの1日前、
いつメンで
コハナの家に集まった。





今から、
チョコを作るところ。





私は、もちろん、
レンへの想いを皆に伝えた。





だから、この
「好き」と「恋」を、
チョコに込めるんだ。





きっと、伝わる。





「コハナ。
伊藤先輩と久野先輩、
どう?」





ダークチョコを刻みながら、
聞く。





メニューはナッツ入りの
トリュフチョコ。





「付き合ってないみたい。
でも、シャノン先輩は、
告白するんだって。
だから、私も好きって伝えるの!」





「頑張っているコハナ、
可愛いっ!」





ゆななが、コハナに
抱きついている。





「ゆななはどうなの?
ハアトくんとの恋愛」





ユナが尋ねる。





「普通?
でも、バレンタインで
進展させてみるから、
ヨロシク~!
って、そういうユナは?
エイトくんと、どう?」





「毎日、アタックしてる!
多分、効いているから、
嬉しいんだあ」





すると、全員の目が
私に向けられる。





言うしかないみたい。





「挨拶できた」





すると、皆がパチパチと
手を合わせた。





「一歩踏み出せたねえ」





成長した娘を見守るように、
コハナは言う。





「もう、何よーっ」





恥ずかしいじゃん。





「よし、できたっ」





完成したチョコを見ていたら、
私たちは顔を見合わせる。





「頑張ろう!」





声を合わせて、叫んだ。













☆・・・*・・・/////・・・*・・・☆





「内田くん!」





「あ、小松崎。
どうした?」





とうとう、
この日が来た。





私は、廊下でレンを見つけ、
呼び止める。





勇気を出して・・・、





「はいっ!」





チョコの箱を差し出す!!





「え?」





「好きです!」





言えた。





返事を聞かされていないのに、
力が抜ける。





「あの、覚えていないの、
わかっている。
でも好きなの。
内田くんが好き!」





「ありがとう。嬉しい」





レンが、チョコを
手にしてくれる。





私が作ったトリュフチョコを、
レンが食べている。
美味しそうに、食べている。





「ちょーうまい。
小松崎、料理得意だな!」





嬉しさが、踊っている。





レンが、いつもより
キラキラしている。





「ありがとう!」





笑顔になる。
もう、嬉しくて、幸せで。
その小さな褒め言葉が、
全てだと感じる。





「で、告白の返事だけど」





ハッ。忘れてた。





身構える。
オーケーかごめんなさいを
言われる心の準備をする。





「好きだよ、オレも」





空耳に聞こえるけど、
今、レンは確かに、
そう言ってくれた。





ピンク色が全身に広がる。





「あの、内田くん」





「ブッブー。
レンだよ、フタバ」





レンは、
前にそう言ったことを、
覚えていないのに、
もう1回言うなんて。







出会いが夢でも良い。





だって「今」は、
決して夢じゃないから。







*end*

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