君への１歩

CAST小松崎ふたば

作者：トマト星人

2022.09.18

私はフタバ。
昔からドジで
恥ずかしがり屋で、
自分に自信が持てないんだ。

中学１年生の４月、
まだ中学校に
慣れていなかった私は、
教室で転んじゃった。

皆が私を見てて、
とても
恥ずかしかった。

そんなとき、
まだ話したこともなかった
同じクラスのナツくんが

「大丈夫？」
と言って
助けてくれたんだ。

私はそれ以来、
ナツくんをずっと
目でおっちゃって・・・

でも、ナツくんは
私と違って
みんなの明るい
リーダーのような存在。

話す機会も
きっかけもなく、
中２になっちゃった。

奇跡的に
同じクラスだったけど、
いつもみんなに
囲まれているナツくんに、
５月になっても
話しかける勇気がなくて・・・

そんなある日、
エイト先輩っていう彼氏がいる
友達のアンジに
相談してみることにした。

・・・　放課後　・・・

アンジ「３年になったら
クラス離れちゃうかもよ！」

フタバ「ええーっ!?」

アンジ「中２のうちに話して
仲良くなっておくべきだよ！」

フタバ「じ、じゃあさ、
アンジはどうやって
エイト先輩と
仲良くなったの？」

アンジ「う～ん・・・
まずはあいさつから
始めたかな」

フタバ「あいさつかぁ・・・」

アンジ「明日、勇気出して
ナツくんに
あいさつしてみれば？」

フタバ「あ、明日!?」

アンジ「あ、エイト
迎えに来た！
そんじゃ、
頑張ってね～。
また明日！」

そう言って、アンジは
エイト先輩と帰っちゃった。

・・・　その日の夜　・・・

私は「勇気の出し方」
で調べた。

そして、紙に
ナツくんの似顔絵を描いて
壁に貼り、
何度も何度も
「おはよう」
「おはよう」
と話しかけた。

アンジと約束したし、
明日、頑張ろう・・・！

・・・　次の日　・・・

下駄箱につくと、
早速ナツくん発見。

そっか、
ナツくんの家遠いから
登下校中は
クラスメイト達と
一緒じゃないって
アンジ言ってたっけ。

昨日の夜、
あいさつの練習した
ナツくんの似顔絵も、
お守りがわりに
持って来ちゃった。

大丈夫。大丈夫。
勇気を出して・・・

私はカバンを開いて
ナツくんの似顔絵のお守りを
握りしめた。

上手く声が出ない。

昨日練習した通りに・・・！

フタバ「あっ、あのっ、
おっ、おは・・・」

「おはよう」
って、もうすぐ
言えるところだったのに―――・・・

ズッテーン!!!!

下駄箱のすのこに
足を引っ掻けて、
転んじゃった。

そして、カバンに
入ってたもの全部
ぶちまけた。

もちろん、下手くそな
ナツくんの似顔絵も。

ナツくんはもちろん、
他の人まで
私のことを
じーっと見ていた。

ああ、最悪だ。

もう、
あいさつをする勇気も
元気もなくなった。

私が教科書を
拾おうとしたら、
先に誰かが
教科書を拾ってくれた。

上を見上げると・・・

ナツくんだった。

ナツ「大丈夫？」

私はポカンとして
ナツくんを見つめた。

ナツ「って、何コレ！
誰の似顔絵？」

ああっ、
ナツくんに見られた・・・！

どうしよう、
返事しなきゃ、
無視されたって
思われちゃう！

『中２のうちに
話しておくべきだよ！』

アンジの言葉が蘇った。

そうだ、今しかない！
言え！

フタバ「な、ナツくんの
似顔絵・・・だよ・・・」

ナツくんは
驚いたような顔をして、
たちまち笑顔になった。

ナツ「すげえ！
小松崎、
絵上手いな！」

ナツくんは、
そう言って、
笑ってくれた。

その後、
ナツくんと一緒に
カバンの中身を拾った。

告白出来たとか、
付き合えたとか、
そんなドラマチックな
ものじゃないけど、

ナツくんに近づく為の
大きな１歩を踏んだ
フタバだった――――――。

＊ｅｎｄ＊