ねぇ、桜が綺麗だね

CAST小松崎ふたば

作者：ぽにょ

2025.03.01

「ねぇ、桜が綺麗だね」

私はカメラのレンズ越しに
桜を見て、１人でそうつぶやいた。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

―　今から３年前　―

私、小松崎ふたばには
とても仲の良い幼なじみがいた。

ちっちゃな頃からずーっと一緒で
何をするにも一緒だった私たちは
高１になった今も一緒にいた。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

ふたば「ねー！　みさきー!!
将来の夢、何にすんの？」

私は進路希望のプリントを持って
みさきのところに行った。

みさき「俺ー？
まだ決めてないよ。ふたばは？」

ふたば「はぁ？
決まってんじゃん」

ふたば、みさき「カメラマン!!」

みさき「やっぱな（笑）」

ふたば「あ、そーいえばさ！
ニコラ公園の大きな桜の木あるじゃん？
今度あそこでみさきの写真
撮ってあげる（笑）」

みさき「なんでだよ！」

ふたば「いーじゃん！
思い出作りだよ！
撮りに行こ？」

みさき「んー。しゃーねーな（笑）
いいよ。いつ撮りに行くの？」

ふたば「明後日の日曜日！」

みさき「おけ。
じゃあ１０時に
桜の木の下でな！」

これが私たちの
最後の会話となった。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

―　日曜日　―

ふたば「みさき遅いなー。
寝坊でもしたのかな？
・・・ぶはっ!!
みさきならあり得るかも（笑）」

とか、言いながら
ずっと待ってた。

でも、１時間たっても
２時間たっても
みさきが来ることはなかった。

ふたば「なんでよ・・・
みさきのバカ」

そう言い残して
私は家に帰った。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

私が家に帰ってテレビをつけると
ちょうどニュースをやっていた。

テレビ「えー、
ただ今速報が入ってきました。
東京都ニコラ町で
高校１年生の北島みさき君が
飲酒運転の車にぶつかって
意識不明の重体となっております」

ふたば「え・・・嘘・・・
北島みさきって・・・!!」

私はすぐに
家を飛び出した。

全速力で走って
近くの病院に駆けこんだ。

ふたば「あの、北島みさきって
いますか!?」

ナース「はい。３０９号室です」

ふたば「ありがとうございます!!」

すぐに３０９号室に行った。

ガラガラガラガラ!!
部屋のドアを開けた。

それと同時に
ピーーーーーーーーという音が
部屋中に響きわたった。

ふたば「みさき・・・
みさきぃぃぃぃ!!!」

みさきママ「あ、ふたばちゃん・・・！
みさきがさっき亡くなる前に
あなたにこれを渡してって」

ふたば「なんですか？　これ・・・？」

そう言って渡されたのは
事故にあう前に書いたと思われる
１枚の手紙だった。

――――――――――――――――――
―――――――――
ふたばへ

小さい頃からずっと俺と遊んでくれてありがとう。
ふたばは小さい頃からカメラマンになるのが
夢だったよな。
俺はふたばなら絶対なれると思うよ!!
あと、最後になったけど
俺、ふたばのことが好きだ。小さい頃からずっと。
返事は分からないけど、俺は１０年後も２０年後も
ずっとふたばと一緒にいたい。
桜の木の下で桜が綺麗だねって笑いあっていたい。
返事、待ってるから。
　　　　　　　　　　　みさきより

――――――――――――――――――
―――――――――

ふたば「待ってるって・・・
遅いよ・・・みさき・・・」

私は、みさきの横でずっと、
ずーっと泣いた。

どれだけ泣いたか
分からないくらい。

ふたば「みさき、
今までありがとう」

空から『ごめんな』と
聞こえた気がした。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

私は今、高校を卒業して
プロのカメラマンをやっている。

ふたば「ねぇ、みさき。
桜が綺麗だね」

＊ＥＮＤ＊