反撃するまで、あと少し

CAST林 芽亜里林 芽亜里

作者:ののもん

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2021.03.28

「もうさぁ、
LP(ライフポイント)が
なくなりそうなわけ」





バイト先の休憩室で、
高校1年生の内田蓮
(ウチダレン)が、
溜息交じりにそう言った。





同じく、高校1年生の私、
林芽亜里(ハヤシメアリ)は、
小首を傾げて、賄いの
ミートスパゲッティを
食べながら続ける。





「なに?
ライフポイントって。
スーパー?
買い物したら
たまるポイント的な??」





「なんでやねん!」





バンッ!
と、内田君は
テーブルをたたいて
私を見る。





先に休憩に入り、
すでに食べ終えた
ミートスパゲッティの
皿の上でフォークが弾む。





さっさと
下げればいいのに。





と、それを横目に
私は続ける。





「関西人でもないくせに、
関西弁って
使わないほうがいいよ。
私の従妹が関西人なんだけど、
わざと関西弁使ってみたら
エセくさい関西弁
使うなって怒るもん」





「だって突っ込みって
関西弁のほうがよくない?」





「知らないよ、
そんなの」





私は『かっこよくない?』
みたいな感覚の
内田君を見て笑い、
スパゲッティを口に運ぶ。





内田君はむむっと
唇をむすぶと、
「はぁ」と、
溜息を吐いて、
説明をする。





「ライフポイントってのは、
ヒットポイントと同じ」





「ふーん。
じゃヒットって、
なにに命中するの?
新商品? 新曲?
誰の?? どこの??」





「いや、そのヒット
じゃないから」





「どのヒット?」





「だからヒット曲とか、
ヒット商品の
ヒットじゃないから!!
いや、命中ってのは、
まぁそこから
きてるんだろうけど、
いや、だから!
そうじゃないんだよ!」





「じゃぁなにに
命中するものなの?」





意味がわからないと、
私は内田君を見た。





内田君は真面目な
顔をして続ける。





「いや、いったん
命中から離れよう。
ってかこの説明って
前にもしなかった?」





「さぁ?」





「もう! だから、
俺が言いたいのはこの場合、
生命力みたいな感じ。
ってかほんっと、
マジでこのままいくと俺、
レイズでも生き返れないし、
教会行っても無理そう」





「ちょっと、ごめん。
本気でなに言ってんのか
分からない」





「・・・・・・戦闘不能に
なったら生き返る呪文とか、
お金払えば教会で
蘇生できたりすんだよ」





「なにそれ、
またゲームの話?」





私は「はっ」と、
息を吐くように笑った。





内田君はゲームが好き。
私はゲームはしない。





たまに
何をいっているのか
分からなくて困る。





でも、内田君も
私に分かってもらえなくて、
困っているみたい。





そしてそのやりとりは
意外と嫌いじゃない私。





っていうか、
むしろ好き。





内田君は
傷ついたように
私を見る。





「そんなオタクを
蔑むような笑い方
するなよな」





「別にしてないよ。
ただ分からないのに、
どうしてそんな
説明をするかな?
って、そっちに
理解できないだけ。
まぁいいんだけどね、
面白いから。
嫌いじゃないよ」





「うっわ、
なんかきつい。
だって、どう言えばいいか
分かんねぇんだもん。
つーか、聞いてた?
俺、死にそうなわけ」





「だから何が?」





「何がって・・・
今日は2月14日ですよ!」





「うん?」





「今日は何の日?」





あ・・・、
これは・・・





何が言いたいのか
分かってしまったと、
私は口に運びかけた
フォークを1度置く。





「今日?」
と、わざと
聞き返す私に、





内田君は
「今日!」と、
繰り返した。





私はさらりと
続ける。





「今日は
煮干しの日でしょ」





「に? 煮干し・・・、
とは???」





ぽかぁーんと、
鳩が豆鉄砲を
食ったような顔をする
内田君を見て、
私は笑いそうになるのを
こらえながら続ける。





「に(2)ぼ(1=棒)し(4)。
全国煮干協会が制定してて、
煮干しを食べて
元気になって
もらおうという日よ。
なのにミートスパゲッティ・・・」





ふふっと私は笑って、
スパゲッティを
再び口に運んだ。





内田君は
欲しかった答えじゃ
なかったようで、
そうじゃない! って
顔して、続ける。





「知らないよそんなの。
やめろよ、もう。
マジで点滅してっからな」





「点滅って?
さっきいってた
ライフ・・・えっと、
ヒットポイントが?」





「そう!
瀕死だっつーの。
って違う!
それより、何の日かって、
ほら! あるだろ!?」





「あぁ。今日は
日本チョコレート、
ココア協会が、
チョコレートの日って
制定してるね」





「違う!!!!!」





内田君は力いっぱい
そう言った。





私はあまりにも
力いっぱいだったから
「っく・・・」と、
噴き出して
笑いそうなのを
必死にこらえ、
内田君は更に続けた。





「違うだろ!
そうじゃない!!
でも惜しい!
もう一声!!!」





「っあはは」





私は我慢が出来ずに
笑ってしまった。





言い方、面白い。
可愛いー。





「笑うなよ・・・」





落ち込むように
内田君は続けた。





「今日はバレンタインデーだろ。
チョコ貰えるかもって
ずっと期待して
待ち続けてた俺はもう、
もらえないかもって
泣きそうなんだよ。
戦闘不能にならないように、
回復してよ」





「戦闘不能って
誰と戦うのよ」





「そういう言い方するだけ。
つまり死なないように
回復してってこと」





「回復って?」





私は小首を傾げる。





内田君は
もじもじとして、
続けた。





「だから言ったじゃんか。
チョコ、もらえるかもって
期待したって。
俺にくれないの?
だったらどうして俺に
昨日告白したんだよ」





そう。私は昨日、
内田君に『好きです』って
告白をして、
え? って戸惑ってる間に、
『じゃまたバイトでね』って、
返事も聞かずに帰った。





内田君は可愛い。
男の子なんだけど
可愛い。





私よりも背が低いし、
細いし、
女の子みたい。





男の子は女の子より
子供だってよく聞くけど、
ほんと性格も
子供っぽくって、
そこがいい。





いつも一生懸命で、
子犬みたいで、
ゲーム好きで、
たまに意味が
分からないけど、
その意味の分からない具合が
嫌いじゃない。





あぁなんて可愛いの。





今日も変わらず
可愛らしい内田君。
愛らしいわ。





私はわざと答えずに、
内田君を見た。





「からかったの?」





「まさか。
好き、大好き、
めっちゃ好き。
ちょー好き。
世界一好き。
私の気持ちは本物よ、
内田君」





不安そうに
私を見る内田君に、
私は好きって
言葉を並べた。





内田君は
真っ赤になって、
じゃぁどうしてって
顔をする。





その顔が可愛いって
いったら、怒るかな。





「内田君は私が好き?」





「え?」





「内田君は
バレンタイン前日に
私に告白されて、
今日を思ってドキドキして、
いつもよりも
私のことを考えた??」





ふふっと私は笑って
内田君の顔を
のぞきこんだ。





ドキッと、
言い当てられた顔をした
内田君。





私は笑った。





「好きって言って」





「え?
あ、えっと、俺・・・
林さんのこと、
す、好きです・・・」





「知ってる♪」





「え!?」





私の言葉に
内田君は目を丸めると、
私は休憩室にある
ラックにかかった
内田君のコートを指さした。





「チョコならポケットに
つっこんだよ」





「え!? うそ!!!!」





「嘘じゃないよ。
見てよ、ほら。
ほらほらほら~」





指を何度もさす
私に促され、
内田君はポケットの中を
探った。





すると出てきたのは
コンビニで100円で
買えるような
小さなチョコレートだった。





それは義理ですって
書いていないけど、
書いているみたいな
チョコレートで、
しかもカカオ濃度の高い
ビターもビター、
超ビターなチョコレートだった。





内田君の顔も
苦そうな顔をしている。





私は彼ががっかりしたところを
見計らって、
ちゃんと用意した
チョコレートを渡した。





もう嬉しいのか、
怒っていいのか分からない
内田君は、
素直にそれを受け取ると、





やっぱり
嬉しいが勝って、
笑っていた。





でも、この時の呑気な
私は知らない。





この時、内田君が
心に誓っていたことを。





反撃のチャンスは
今じゃない。





いつか絶対、林さんに
反撃してやる。





そんなことを
内田君は考えていた。





可愛い見た目の
内田君を相手に、
調子に乗っている今の私は、





成長期という名の
レベルアップを
まだ知らない。





自分より大きく、
男らしく
成長する内田君に、、





あらめて恋に落ちる私は
気がつけば、立場が逆転。





かわいい子犬は
ずっと
子供のままではない。





そんな未来を知らぬ私は、
短い優位な立場を
この時、楽しんでいた。







*end*

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