バレンタインに振りまいたもの

CAST林 芽亜里林 芽亜里

作者:あめのしずく

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2021.12.12

「おはよう」





そのひと言を言うにも、





心臓が
飛び出しそうになる。







これは、そんな私の
恋の話です。













○ * ○ *





2月の朝は、
冷え切った空気が
私を包み込んでいる。





窓には水滴がついていて、
それを私は手で拭った。





私は林メアリ、
高校1年生。





成績も運動も
真ん中くらいで、





人気者でもない。





そんな私には今、
片想いしている人がいます。





同じクラスの、
八田ハアト君。





私とは正反対の人気者。





なんで彼を
好きになったかって?





理由は今から説明するね。













・*。・ 中学3年生の冬 ・。*・





アム「メアリ、私
進路決めた!」





メアリ「よかったね!
アムずっと悩んでたし。
私も早く見つけなきゃな・・・」





アム「メアリ、
絶対に自分の行きたい
学校にした方がいいよ。
私のお姉ちゃん、それで
大変なことになったから」





彼女は深尾アム。





中学時代の親友で、
高校は別になったけれど
今でもよく会うんだ。





この頃私は、
候補は挙がっていたけど
進路は決まらなかった。





正直、焦ってた。





そんなある日。





ココハ「みんな!
うちのサッカー部と練習試合に
来てるニコ中の男子に、
すっごいイケメンがいるって!」





当時、
女子の中心だった
阿部ココハ。





ココハともそこそこ
仲が良かった。





セナ「えー、
見に行きたい!」





ルキ「行こう行こう!
気になるー!」





ココハ「メアリとアムも
見に行こうよ!」





メアリ「えっ」





そのままココハに
連れられて、
グラウンドまで来た。





そこには、
ひときわ目を引く
別校の男子がいた。





ココハ「ね、イケメンじゃないっ?」





アム「そうだね~」





メアリ「うーん・・・」





ココハ「メアリはあんまり?」





正直この時は、
かっこいいって
思わなかったんだ。





メアリ「うん・・・
今は進路に
迷ってるから
頭が回らなくて」





アム「大丈夫だよ、
きっと決まるから」





ココハ「そうそう、
私のお姉ちゃんも
ギリギリまで悩んでたし!」





メアリ(本当に決まるのかな・・・)





ふと気がつくと、
もう試合は終わっていた。





ココハ「メアリ、教室戻ろー」





メアリ「あっ、うん!」





と、その時。





ドンッ





別校の男子、
さっきひときわ
目を引いた人と
ぶつかった。





そして、私の
ヘアピンが落ちた。





ハアト「あ、ごめん!
ピン落としたよね」





メアリ「あ・・・いえ、
大丈夫です。
私こそごめんなさい」





ハアト(なんか・・・元気ないな)





彼からピンを
受け取ろうとした時、
なぜか彼は





「ちょっと
じっとしてて」





と言って、
私の耳の上に
ヘアピンを挿した。





耳が熱くなる。





ハアト「よし、これでオッケー。
・・・何か嫌なことがあったの?
元気ないね」





メアリ「・・・なんで
分かったんですか?」





ハアト「表情。
3年生?」





メアリ「あ、はい」





ハアト「もうすぐ受験だから
しんどいけど、
お互い頑張ろうな!
俺ニコラ大学附属
受けるんだけどさ、
もう難しすぎて
頭死にそう(笑)」





メアリ「そう、なんだ。
私はまだ進路が
決まらなくて・・・」





ハアト「あぁ・・・じゃあさ、
俺と一緒のところ
行ってみたら?」





メアリ「えっ?」





ハアト「あっ、
変な意味じゃなくて!
ニコラ大学附属って
すごいパンフレット見たら
楽しそうだったんだよ。
なんかすごく惹きつけられて」





メアリ「そうなんだ・・・
考えて、みます」





ハアト「うん!
じゃあまたな!」





ドキッ・・・





そして私は、
彼に一瞬で恋をした。





それから私は、進路を
ニコラ大学附属高校に決めて、
なんとか合格したの!













○ * ○ *





そのあと奇跡で





2人とも合格して





同じクラスに
なったんだけど・・・





未だにひと言も
話せてないの。





「おはよう」のひと言も
言えない。





そんな自分が虚しくて、
時々嫌になる。





メアリ(・・・こんなことしてる間に、
八田君に彼女ができちゃう)





今月には
バレンタインという
恋のイベントがある。





そこで彼に
彼女ができても
おかしくない・・・!





どうすればいいんだろう。













・*。・ 通学中 ・。*・





ナナ「メアリおはよう」





メアリ「おはようナナ」





彼女は野崎ナナ。
小柄で女の子っぽい子。





高校でできた親友!





ナナ「聞いてよー、レン君に
誰かがバレンタインに
告白するって言う噂が
流れててさ・・・!」





ナナも同じクラスの
内田レンという人に
片想いをしてる。





でも私が見る限り、
2人は両想いだ。





ナナ「それでさ・・・
私、バレンタインに
告白しようと思う・・・!」





メアリ「こ、告白・・・!?
すごいなぁ、ナナは」





耳まで真っ赤になるナナ。
可愛いなぁ。





それに比べて私は・・・





ナナ「ていうかメアリ!
今日こそ八田君に
おはようって言うんだよね!?」





ギクッ





ナナは私の恋を
応援してくれている。





でも、そんな勇気
でないよ・・・!





メアリ「無理だよ・・・
八田君はモテるし、
それに・・・
まだひと言も話せてないの」





ナナ「ひと言も!?
何してんのー!」





メアリ「だってー!」





ナナ「もう、メアリったら!
ほら、あそこにちょうどいるよ。
おはようって言ってきな!」





メアリ「えっ!」





ナナに押されて、
私は八田君の
目の前まで来た。





小首を傾げる彼と、
パニックになる私。





ナナ「ほら、
おはようって!
コソッ」





ナナに促されて、
やっと口を
開くことができた。





メアリ「おっ、おっ・・・
おはよう!」





ハアト「急に目の前に来たから
どうしたのかと思った(笑)
おはよう林さん」





そのまま、
私の前から
去って行った。





メアリ(八田君に・・・
名前呼ばれた!)





隣には、
ニヤニヤしながら
私を見てくる
ナナがいる。





好きな人に名前を
呼ばれるのが、
こんなに嬉しいなんて・・・













・*。・ 休み時間 ・。*・





ナナ「メアリよかったね!
おはようって
言えたじゃん!」





メアリ「うん、ありがとう。
でも・・・やっぱり
仲良くなるなんて
私には無理だろうな・・・」





ナナ「弱気にならない!
メアリ可愛いんだから
もっと自信持っても
いいと思うけどな・・・」





ナナの言葉に、
恥ずかしくなって
顔を下に向ける。





でも、
自分に自信なんてない。













○ * ○ *





そんなメアリたちの会話を、





クラスの人気者女子であり
中学からの同級生である、
あのココハが見ていた。





ココハとメアリは、
まだ仲がいい。





そんなココハも、
ハアトに恋をしていた。





でも、まさかメアリも
好きだなんて
思わなかったので、
心底驚いた。





ココハ(メアリも
ハアト君のこと
好きなんだ・・・
よし、
負けないように
頑張らなきゃ!)





ワカナ「ココハはさ、
バレンタインに
八田に告白するの?(笑)」





ココハ「なっ!
・・・したいな、
とは思ってる」





ワカナ「え~ほんとに!?
応援するよ!」





ココハ「ありがと。でも、
メアリもハアト君のこと
好きらしいんだよね。
メアリは可愛いし、
強敵だよ・・・」





ワカナ「うーん、
たしかにメアリちゃんは
可愛いけど、
ココハも可愛いと思うよ!
それに、
今はココハの方が
八田と仲良いじゃん!
頑張れ!」





ココハ「・・・うん!
頑張る!」





ハアト君の
彼女になりたい・・・!













○ * ○ *





それからココハは、
さらにハアトと
距離を縮める努力をした。





それがメアリを
不安にした。





メアリ(もしかして・・・
ココハも八田君が、好き?)





だとしたら、私
邪魔しちゃうんじゃ・・・





ナナ(これはまずいかも!)





メアリはココハを
呼び出した。













・*。・ 昼休み ・。*・





ココハ「ごめんメアリ、
お待たせ!
委員会の仕事が
長引いちゃって・・・」





メアリ「ううん、
私もせっかくの
昼休みにごめんね!」





ココハ「謝らないで~」





ココハの
気を遣えるところも、
友達としては憧れる。





でも・・・今は
恋のライバルだ。





メアリ「そ、その、ココハに
聞きたいことがあって・・・
ココハ、
八田君のことっ、
好きだよね・・・!?」





2人の間に
沈黙が流れた。





しばらくして、
やっとココハが
口を開いた。





ココハ「うん、
ハアト君のこと好きだよ。
だから、
バレンタインに
告白しようと思ってる」





メアリ「え・・・」





衝撃的だった。





だから距離を
縮めていたんだ。





八田君と仲の良くて
可愛いココハと、





ひと言も会話
できないような私。





そんなの、ココハが
うまくいくに決まってる。





込みあげてきたものを
グッと堪えて、
メアリは言った。





メアリ「そ、そっか・・・!
ココハは可愛いし
八田君とも仲良いもんね、
応援、してる」





ココハ「・・・ありがとう。
じゃあ、私先に
教室に戻っとくね」





メアリ「うん」





パタン





話をしていた屋上から
ココハが、
出て行った。





その瞬間、
堰を切ったように





私の目から
涙が溢れ出した。





分かっていたはずなのに。





叶う可能性のない片想いは、
甘くなんてない。





むしろ苦いんだ。













・*。・ ナナは ・。*・





その頃ナナは、
メアリを探していた。





最近のメアリが心配で、
昼休みに
いなくなったからだ。





すると、
屋上に繋がる階段で、





ひとり座りながら泣く
メアリを見つけた。





ナナ「メアリどうしたの!?」





メアリ「あ・・・
なんでも、ないよ」





ナナ「そんなことないでしょ!?
泣いてるじゃん・・・」





メアリ「・・・っ!
うぅ・・・」





ナナ「何があったか話せる?」





コクリと頷いた。





そして、メアリは
昼休みにあったことを
全て話した。





話し終わると、
ナナは話し始めた。





ナナ「・・・厳しいこと
言っていい?」





ナナの真剣な声に、
怖くなった。





それでも、
今は聞きたかった。





ナナ「正直、恋って
アピールしたもの勝ち
なんだよ。
だから・・・メアリは
自分に自信がなさすぎる!」





メアリ「!」





ナナ「ココハには
アピールする力がある。
でもメアリにはない。
じゃあその力を上げればいいじゃん!
自信がないなら、私も手伝うから
一緒に頑張ろう?
それと、これは
私からのミッション」





メアリ「ミッション?」





ナナ「バレンタインに
告白しなさい!」





メアリ「え・・・えっ!?」





ナナ「告白したら、
両思いかもしれないじゃん。
それに、
もし失敗しても
それで
吹っ切れるかもよ」





メアリ「うん・・・
分かった。
私、告白する!
でも、自信ないから、
ナナに手伝ってほしい」





ナナ「分かった!
私がメアリを
プロデュースする!」





そして、私たちは
可愛くなる努力を始めた。













・*。・ ある日の放課後 ・。*・





今日は久しぶりに
アムと遊ぶ日!





最近、ナナの影響で
白っぽい服や
小物に目覚めたの。





スキンケアやメイクは
ハマって、
貯金で買うようになった。





メアリ「アム、久しぶり!」





アム「え・・・メアリ?
めっちゃ
可愛くなってる~!」





メアリ「ありがとう。
・・・頑張ったんだ」





アム「あぁ、
例の好きな人のことね。
でもメアリが告白だなんて
想像しなかったな・・・」





メアリ「だよね・・・(笑)
でも親友に
アドバイスされたの。
もっと自信持たなきゃ
ダメだって」





アム「ちょっと~、
私も親友だからね(笑)」





メアリ「分かってるよ~!(笑)」





アムも変わったって
言ってくれた。





私、変われてるんだ・・・!











・*。・ バレンタイン1週間前 ・。*・





「メアリちゃん、
最近可愛くなったね!」





「林って
最近変わったよな」





最近、
よく言われるように
なった言葉。





私にはとても
嬉しい言葉だ。





ナナと内田君も
順調みたい!





そして、八田君とも
少しずつ
話せるように
なったんだ!





メアリ「お、おはよう!
昨日の課題終わった?」





ハアト「おはよ。
俺はまだ
終わってない(笑)」





ココハ(メアリ・・・)





ドサドサッ





カノン「落としちゃった・・・」





メアリ「大丈夫?」





ナナ(メアリ、
やっぱ優しい!)





ハアト(優しいな)





ココハ(メアリの
良いところだよね・・・)





バレンタインまで
もう少し。





果たして、
結果は・・・?













・*。・ 前日 ・。*・





バレンタイン前日。





放課後、メアリは
ナナの家に行って
チョコ作りをした。





ナナは
チョコレートクッキー、





メアリは
ブラウニーだ。





ナナ「メアリのブラウニー
美味しい!」





メアリ「ナナのも最高だよ~!」





チョコ作りも終わって、
いよいよ
明日はバレンタイン。





メアリ&ナナ(上手く
いきますように・・・!)













・*。・ 当日 ・。*・





朝。





私は緊張した状態で
起きた。





いつもより髪型に
気合を入れて、





研究した
ガーリーメイクを
薄めにした。





今日は人生で初めての
告白だ。





メアリ(緊張する・・・!)





ダメだダメだ。





弱気にならない!





必ず好きって伝える・・・!













・*。・ 学校で ・。*・





朝から
男子も女子も
そわそわしている。





まるで駆け引き
しているみたいに。





私は、放課後に
告白することにした。





ココハもいつもと
様子が違う。





いつ告白するんだろう・・・





LINEを開く。





そして、
つい最近交換した
八田君との
トークルームを見る。





一息吸って、
メッセージを送った。





メアリ〈八田君、放課後に
体育館裏に来てください〉













・*。・ 放課後 ・。*・





放課後、私は
八田君を待った。





すると、手に紙袋を持った
八田君が
こちらに向かうのが見えた。





そして、彼から
遠く離れたところに
いるのは・・・





メアリ(ココハ・・・!!)





・・・ココハと、
上手くいったのかな。





ココハみたいな子に
告白された後に





私にされても、
見劣りするよね・・・





集めてきた自信が
崩れ落ちる。





私は思わず、
走り出した。





メアリ「こんな後に・・・
告白なんてできないよ・・・!」





ハアト「・・・林さん!」





八田君に
名前を呼ばれた。





ああ・・・
もう逃げ出せない。





メアリ「八田君・・・
えっと・・・」





ハアト「なんでここに
呼んだの?」





メアリ「それ、は・・・」





ハアト「教えてほしい」





メアリ「・・・っ!
その、
伝えたいことがあって・・・
私、
は、は、
八田君が好きです!!」





ハアト「・・・良かったー・・・」





メアリ「・・・え?」





ハアト「良かった・・・
両思いだ」





メアリ「えっ? え!?」





ハアト「俺も林さんが好きです。
・・・付き合ってください!」





目の前のことが
理解できない。





八田君が
私を好きって
言ってる。





そんなこと、
あるのだろうか。





でも・・・





メアリ「よろしく
お願いします・・・!」





ハアト「こちらこそ!」





勇気を出したら、
願いが叶うって
本当だ。





告白してよかった・・・!





ハアト「あ、えっと・・・
今日一緒に帰らない?
荷物、取ってくる!
林さんの分も!」





メアリ「あっ、
お願いします!」





ピロン♪





ナナからのLINEだ。





ナナ〈レン君と
上手くいったよ~!〉





ナナ、
上手くいったんだ!





良かった・・・





しばらくして、
八田君が戻ってきた。





その遠くでは、
ココハが泣いていた。





メアリ(ココハ・・・)





思わず叫んでいた。





メアリ「ココハー!!
私、ココハの分も
幸せになる!」





ハアトもココハも、
2人して
びっくりしている。





でも、2人とも
次の瞬間には
笑顔になった。





私も笑った。







バレンタインが
振りまいたのは、





笑顔と恋の魔法。







きっとそうだと思う───・・・











*end*

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