雨の日に君が

CAST伊藤 沙音伊藤 沙音

作者:M

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2024.04.27

それは雨が降る日。





私は彼と出会った。







* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





私、伊藤沙音は
部活帰りの重たい体を
引きずるようにして
帰路についていた。





梅雨に入った影響で、
今日もお決まりの雨である。





かさのポツポツポツという音に
うんざりしながら
歩いていたときだった。





「沙音!?」





突然驚いたような大声を
あびせられて、
私は反射的にビクリとして
足を止める。





前から小走りでやってきたのは、
おもわず身惚れてしまうほどの
美しい少年だった。





「なんで、ココに!?」





とてもうれしそうに
たずねた彼は、
新潮中の制服を着ていた。





私はつい見とれつつ、
首をかしげる。





「あの・・・誰?」





私と彼は初対面だ。





なぜ初めて会った
この美しい少年が
私のことを知っているのか、





なぜ親しげに
話しかけてくるのか、





疑問符が頭の中を飛び交う。





しかし、少年はそんな私の様子に
大きくショックをうけたようだった。





「誰って・・・何言ってんだよ」





ジョーダンだとでも言いたげな彼は
しかし私が再度首をかしげたことで
ひどく表情を落胆させた。





「・・・沙音、だよな?
・・・ニコ学2年生で
誰生日が9月22日」





ポンポンと彼から出てきた
私の個人情報に、
おもわず顔を引きつらせる。





(え・・・これもしかして
ストーカーとか
そういうたぐいの人?)





そんな懸念に、
一步後ずさる。





怪訝な表情をした彼の口が
何か言いたげに開きかけた・・・
次の瞬間。





消えた。





(え?)





私は狐につままれたように
ポカンとして立ちつくした。





しかし、何度見ても
さっきまでいた彼の姿はない。





(・・・消えた?
どういうこと!?)





疲れているのかな、と
1度強く瞬きをして、
また家へと歩き出そうとした私は





ポツポツという
傘に雨の雫が落ちる音が
なくなっていることに
ふと気がつき、傘をたたむ。





雨は、やんでいた。













― 翌日、2年A組 ―





「・・・ってことがあって」





「何それおもしろー!」





昨日の出来事を話した私の隣で
食いついてきたのは、
友達の心花。





「めっちゃイケメンなんだよね?
・・・新潮中なら思い当たる人が
何人かいるから特定できるかも。
名札は見た?」





「ええっと・・・見てない。
でも確かネクタイが
緑だったような・・・」





「ってことは2年生だ!!
同い年じゃん!」





爛々と目を輝かせる心花に
あきれて息をついたのは
姫乃、これまた友達である。





「てか、キモくない?
初対面でなんで沙音のこと
そんなに知ってんのって感じ」





「やっぱそう思う?」





いつも冷静な姫乃の言葉に、
私はほおずえをつきうなずく。





(・・・でもなあ)





私を呼び止めたときの
驚きながらも隠せないうれしさが
あふれでていた彼。





私が、知らないと言った時の
落胆した表情。





いまでも鮮明に憶えていて、
なぜか彼が頭から離れなかった。





(なんか悪い感じは
しないっていうか)





・・・また会えたらいいななんて。





そんなことが
頭にフッと浮かんで、
私はドキりとする。





チャイムが鳴り、
会話は中断された。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





再会は予想外に早く訪れた。





新潮中の友達に探りを
入れてみたところ、
早速特定できたというので





放課後、心花に連れられ
私たちは新潮中の校門前にいた。





「ほら、あの男子じゃない?」





心花が指さした先には、
今から帰宅なのか
こちらに向かってくる男子がいて、
そして確かにあの少年だった。





私がうなずいたのを見て、
心花がワクワクしたように
笑顔になる。





「やっぱり!
ガチのイケメンだし、
声かけよ!」





そう言うやないや、
さっそく彼へと近づいていくので
私と姫乃もあわてて追いかける。





「へ~八神くんっていうんだ!」





心花は早速名前をゲットして
うれしそうだ。





が、彼の方は困り顔をしていた。





「あのっ」





私がグッと勇気を出し、
話しかけると、
彼・・・八神くんは私を見た。





「きのう・・・その・・・」





勇んだのはいいものの、
八神くんのけげんそうな顔に、
ヒュルヒュルと私の声は
自信をなくし小さくなっていく。





「・・・昨日、どうかした?」





戸惑ったように質問され、
顔に血が昇った。





「ご、ごめんなさい、
なんでもないです・・・」





なんとかそう返すと、





「? ・・・そっか。
ゴメン、
俺用事あるから」





そそくさと、わたしたちから
逃げるように
彼は去っていった・・・





雨が降りはじめた。





傘をさし、3人で歩く。





「・・・どういうこと?
昨日彼に
話しかけられたんだよね?」





姫乃のつぶやきに、
あまりにもそっけない、
昨日とは90度反転した
態度だった八神くんを思い出し、
頭が混乱していく。





「・・・うん。でもなんで」





「・・・昨日、どうかした?」





とまどった表情。





(まるで昨日のことを
知らないみたいな)





「人違いってことは」





心花の言葉を
私は確信をもって
否定する。





「ううん。
本人・・・なはず」





声がとぎれた。





前から歩いてくる人影。





「・・・っ、八神くん?」





気がつくと、
口からこぼれでたつぶやきに
反応した彼と目が会う。





「沙音!?
・・・俺のこと、憶えてる?」





昨日、彼のことを知らないと
私が言ったからか、
八神くんはおそるおそる
私にたずねた。





「覚えているって・・・
さっき会ったばかりじゃん」





心花がおもわずといったように
わりこむと、
八神くんは少しポカンとした。





「心花ちゃん、
一週間ぶりだっけ?」





その返答に、
私達は顔を見合わせる。





「ええっと
八神遼介くんだよね。
新潮中2年B組の」





姫乃が確かめるように
たずねると





「当たり!
って言いたいところだけど、
もう4月だし3年生でーす」





ふざけたように笑って、
彼は返した。





「4月・・・?
今、6月だけど」





私は違和感に、口を開く。





「え? 6月??」





「うん」





「え?????」





私と初めて出会ったのは
6月(今日)。





初めは不思議な子だなという
印象だけだったが、
そのあと心花と共に
しばしば会いに来るようになって
親しくなり、





最終的には私と八神くんが
お互い気になり出して
付き合う・・・らしい。





八神くんとも順調な中、
2月のある日、親の仕事の都合で
急きょ私が遠くに
引っ越すことになった。





私と会えず1ヶ月が過ぎ、
春休み突入。





私と会いたいな・・・と思ってた
ある日、急に視界がぼやけたかと
思えば私が歩いてくるのが見えた。





驚きながら声をかけて・・・
今に至る。





八神くんの話をあ然として
聞いていた私たちは、
なんとか話を飲み込む。





つまり、だ。





彼は未来から、なんらかの理由で
やってきたというのだ。





「・・・雨」





不意に姫乃がつぶやいた。





「昨日会った時も、
降ってたよね?」





私が頷くのを確認した姫乃は
またつぶやいた。





「そして雨がやんだとき
消えた・・・」





「あ!」





ハッとして声上げる。





その時、
まばらだった雨が止んだ。





そして、彼は、消えていた。





翌日、梅雨あけが
ニュースで報じられた。













― 登校中 ―





「世の中、不思議なことも
あるもんだねぇ」





しみじみと言う心花に、
姫乃もうなずく。





「今でも
夢だったんじゃないかって
疑っちゃうもの」





「でも、さ。
もしあれが本当なら・・・」





心花は、ニマリと
私に目をやる。





「八神くんは
沙音の未来の彼氏かぁ」





「!!」





私は、言葉の意味を理解した瞬間、
自分でもわかるくらい
赤くなってしまった。





「よーし、じゃあ
今日も行っちゃう?
新潮中」





ますます
ニマニマとする心花。







空は青く、
青く晴れていた。







*end*

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