片手のピアノ

CAST伊藤 沙音伊藤 沙音

作者:ここみ

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2023.03.10

アンジ「シャノン!
危ない!」





キキーッ







・:*+・・:+・:*+・・:+





私、シャノン。





1週間前、横断歩道を
お姉ちゃんと歩いてたら
トラックにはねられたの。





左半身に麻痺が残って、
立ったり座ったり
自分で出来なくなった。





何も起こらない、
暇すぎる病院での生活が
始まった。





アンジ「ハロー!
シャノン? 元気~?」





お姉ちゃんは、私が
ピアノが弾けなくなって
落ち込んでるから
いつもこんなハイテンションで
病室入ってくるの。





シャノン「普通」





アンジ「なら良かった!
今日はクラスのお友達、
お見舞い来てくれたのよ」





シャノン「え」





やだ!





クラスのみんなに
こんな体になった私を
見て欲しくない!





ルミ「失礼しますぅ」





ユラ「シャノン、元気~?」





アンジ「はい! シャノン?
お返事は?」





シャノン「あ・・・うん・・・」





レン「何?
その冷たい言い方」





シャノン「え」





レン君は
私が好きな男子。





今私の心を
一刀両断された
感じがする。





痛い。





レン「なんでそんなに
冷たいん?」





ルミ「レ、レン!
落ち着いてってば」





ユラ「レンく・・・」





レン「なんでいつもと
そんなに違うんだっ
つってんだ!」





「もっと明るかっただろ!
元に戻れよ!
左半身動かないからって
何だよ!
ピアノは片手でも
弾けるだろうが!」





と言い残して
レン君は病室を去った。





沈黙が続いた。





こんな時に
お姉ちゃんがいれば、
話題変えてくれるのにって
思ったけど、
お姉ちゃんは
トイレに行ってた。





ルミ「・・・レンのこと、
気にしないで」





いや、気になるの!





ユラ「いつもあんな
感じだから・・・
レン君は」





いや、いつもと違うから
気にしてるの、私。





アンジ「あ、みんな~?
ついでにジュース飲んで
行かない?
買ってきたの」





ユラ「いいんですか?」





アンジ「ええ!
わざわざ遠くから
ありがとね~」





私はレン君のことで
頭がいっぱいだった。





いつも一瞬で飲む
大好きなジュースも、
飲む気にならなかった。





ルミ「じゃあ、私たち、
行きますね」





アンジ「うん! ありがと!」





ユラ「元気になって、
戻ってきてね」





シャノン「・・・はーい」





アンジ「ふぅ。
あの男の子はどこ行ったの?
なんかどこにも
いなかったんだけど」





シャノン「・・・帰った」





アンジ「うっそぉ~!
サイッテーね」





シャノン「好きだったんだけどなぁ」





アンジ「へ!?」





あ・・・言っちゃったぁ。





お姉ちゃんは
恋の話になると
止まんないんだった・・・





アンジ「えぇ!
初耳だったわ!
お名前聞いといた方が
よかったじゃん!
早く言ってよぉ~」





シャノン「もー、言っても
私の得にならないわ」





アンジ「もーもー言い過ぎ!
牛になるよ!」





笑えない。





いつもだったら
笑えるのかもしれないけど。





レン君のことが
気になりすぎて、
お姉ちゃんの世間話には
耳を傾けられなかった。





アンジ「じゃ、また明日ね~」





「いい夢を~」













・:*+・・:+・:*+・・:+





トントントン





ノックする音が聞こえた。





こんな遅い時間に
誰だろう。





シャノン「はーい」





れ・・・





シャノン「レン君・・・」





レン「さっきはごめん、
言い過ぎた」





「屋上行こ」





シャノン「・・・え?」





「でっでも・・・」





レン「俺が連れてってやるから。
今夜は星が綺麗なんだ」





レン君は、
ゆっくり私を持ち上げて、
丁寧に車椅子に乗せてくれた。





何事にも丁寧な
お姉ちゃんよりも
ずっと、ずうっと
丁寧だった。





そしてゆっくり、
車椅子を押してくれた。





シャノン「あ、・・・」





星はホントに
綺麗だった。





色んな星が、
綺麗に瞬いてた。





まるで、・・・
絵本に描いてある
夜空みたい。





私は、こんな感じの
夜空の下で、
コンサートしたことを
思い出した。





あぁ、コンサートは
もう出来ないんだと、
泣きそうになる。





レン君の前、
泣くわけにはいかない。





下唇をグッと噛んで
堪えてたら、
優しく語りかけるように
レン君が話し始めた。





レン「そりゃぁ、
片手のピアノなんて
楽しくないよな」





シャノン「あ、・・・うん」





そうよ。
私はピアニストに
なりたかったんだもの。





左手が上がらないなら
もう何の価値もないよ。





片手でのピアノなんて、
誰も聴きたくないよ。





そう思うと、
また涙が出てきて、
下唇を噛む。





今度は
堪えきれなかった。





涙がポロポロ出た。





レン「分かるよ」





「俺はヴァイオリンしてた。
でも、練習し過ぎて、
腱鞘炎になって、
でもそれでも隠し続けたら
もう弾けなくなったんだ」





「それを遮断するために
サッカーし始めたんだ」





「ピアノ、心の中で
諦めきれないんでしょ?」





え?





・・・確かにそうかもしれない。





私は、弾けないって
分かってるけど
弾きたい。





弾いても誰も
聴いてくれないっていうことは
分かってるけど
弾きたくてしょうがない。





レン「俺に聴かせるだけの
ピアノ、
聴かせてくれないか」





シャノン「え」





え?





レン「俺、シャノンのコンサート、
1回行ったことある。
すごい綺麗な音色。
右手だけでも、聴きたい。//
聴かせて?」





私は涙を拭った。





シャノン「なんで私?」





レン「え?」





シャノン「私じゃなくっても。
ピアノは片手より
両手の方が
聴きごたえあるよ?」





レン「シャノンじゃなきゃやだ」





レン君は真剣な表情で、
私を見つめた。





・・・/////
かっこいい・・・/////





シャノン「うん、
・・・私でいいなら」





レン「よし!」





そういうと、レン君は
車椅子をまたゆっくり進ませて、
また私をベッドに丁寧に
寝かせてくれた。





レン君の手は
あったかかった。





「じゃあ明日、
またね」





シャノン「うん」





「あっ」





大事なこと言うの、
忘れてた。





レン「なぁに?」





シャノン「わ、私っ、
レン君のこと、
好きっ、です!」





レン「はは! 俺もだ!」





シャノン「・・・///
良かったぁ・・・」





レン「じゃあな」





シャノン「うん、ありがと」













・*。・ 次の日 ・。*・





アンジ「ハロー!
シャノン? 元気?」





シャノン「うん、元気」





アンジ「あ!
今日は顔色良いね!
何かあったの?」





「あ! あの子と
何かあったとか!?」





シャノン「もー!////
人の恋路に
首突っ込まないで!」





えっ、恋路!?





自分で発した言葉に
びっくりした。





でも、そうなるか。





アンジ「キャァ!」





「とうとうシャノンに
彼氏ができたのね!
やったぁ!」





シャノン「もー!
うるさいよぉ!」





アンジ「牛!」





あははははは・・・







*END*

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