推し活舐めんな!!!

CAST伊藤 沙音伊藤 沙音

作者:アクアリウム

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2024.04.06

私は、シャノン。
中学の3年ね。





まあ、私のことは
どうでもよくて・・・!!





何と言っても!
私は超人気アイドルグループ
“PEACH MELODY(通称:ピチメロ)”の
不動のセンター、フタバちゃんを
マジのガチでめちゃくちゃ推している!!!





あ~!
マジでふぅちゃん
今日も可愛すぎてやばい!!
尊い!!!!!





・・・でも、私のクラスには
なんかオタク? を馬鹿にしてる人達が
結構いて・・・





私、筆箱とかリュックとか、
結構色んな所にピチメロの
キーホルダーとか付けてるのね?





だって、推しに囲まれたいじゃん??





でもそれで前になんか、
いかにもクラス1軍って感じの
ミユウ達が絡んで来たの。





ミユウ「うっわwww
またオタ活ですかーー?w
シャノンちゃーん?w」





ナツ「おいマジかよw
こいつまたやってるww」





ミユウ「しかも何これー?
こんなボロい・・・
何? ピチ・・・メロ?
のキーホルダー筆箱に
付けちゃったりしてww」





ミユウはそう言って、
私が筆箱に付けていた
デコキーホルダーを乱暴に弄った。





ユアン「・・・」





ミユウ「ね~え、も~!w
ユアンもコイツに
はっきりキモいって
言ってやり・・・」





シャノン「は・・・・・・・・・?
ふざけんな」





シャノン「ファン舐めんな。
ってか、この素晴らしさを
理解できないアンタ達に
口出す権利はないんだけど。
何夢見ちゃってんの?」





ミユウ「えっww えっっwwwww
ガチのガチ勢じゃんww
きっもww」





まあこれがデフォルト。





やっぱ憧れちゃった系かなって感じ。
勿論いい意味で。





推し活してる人に
憧れちゃったみたいな。





でもああいう人に限って、
実は自分が1番推し活してるんだよね。





でも表に出すのが
格好悪いとか思っちゃってる感じ?





・・・・・・www・・・





あー、タチ悪いなー。





でも・・・え? あれ何?
え、あれなんか1人だけ
馴染んでなかったよね?
いっつも3人でいるくせに・・・?













* * *





次の日・登校中





シャノン(は?
・・・アイツらいるんだけど・・・)





シャノン(あー。もうマジで最悪。
おかげで道ふさいでて
通れないじゃん)





シャノン(あー。どっか別の道あったっけ。
遠回りになっても良いから
そっちで行きたいんだけど・・・)





ミユウ「あれー?ww
シャノンじゃんww」





ナツ「マジかよww
朝っぱらからコイツに会うとかww」





ユアン「・・・」





あー。
もう最悪最悪最悪最悪。





こっちだって
出くわすなんて知ってたら
いくらでも早く出てたのに。





・・・ん・・・?? ん???





・・・は?





今ミユウが持ってるのって・・・
ピチメロの今度のドームライブの
チケット?





は? なんで?
しかも3枚??





え、やっぱ・・・だよね?





私もあのチケット
超運良く当たったから
家の机の引き出しの中に
あるはずなんだけど。





ん???
もしやアイツら
私のチケット盗んだ?





シャノン「ちょっと。
そのチケット見せ・・・」





ミユウ「・・・っ!?!?!?」





ミユウ「・・・人の物勝手に
触んないでくれる!?!?
・・・何のつもりっ!?!?」





ナツ「・・・ミユウ!
もう行こう」





私は今、ミユウがチケットを
持っていたのを確実に見た。
しかも3枚。





そしてミユウはそれを隠し、
一瞬でどっかに行った。





・・・・・・ははは。
そんな訳ないよね・・・?
・・・まさかね。
散々馬鹿にしてるもんね・・・?





この日は一日中
授業に集中出来なかった。













* * *





そしてとうとう・ライブ当日





私はここぞとばかりに
気合いを入れた。





いつもの眼鏡をコンタクトにして、
薄くだけどメイクもして、
ネイルチップも付けて、
髪にふぅちゃんのメンカラの
ピンクのリボンを付けて。





シャノン「よし! 行こう!」





シャノン(今日本当に
ふぅちゃんに会えるんだよね・・・!?
しかもアリーナ最前列!!!
なんかもう私運良すぎない!?!?)





でも、私の運は
そこまで良い訳じゃなかった。





シャノン(・・・マジ?
・・・なんで?
信じられないんだけど・・・)





私は物販で買ったグッズ達を
落としてしまった。





あれだよね。
もう何と言っていいのか、って感じ。





だって・・・アイツらと
アリーナの席が隣だったんだよ!?!?
しかもアイツら3人揃って!!





アリーナ最前列!!
倍率信じられないほど
めちゃくっっっちゃ高いのに!?!?





マジで、なんで?





マジで。





あーもう。
アイツらに食われちゃ本末転倒。





ふーっ、落ち着いて・・・













* *





幸か不幸か、アイツらは
私には気づかなかったみたいで。





フタバ「みんなーっ!
今日は本当にありがとう!!
私、楽しみ過ぎて
ずっと寝られなかったんだよーっ!!!」





ふぅちゃんの声に、
1つも空きのない客席から
ものすごい歓声が巻き起こる。





私はファンの1人として
誇らしかった。





フタバ「じゃあ、
最後の曲行くよーっ!!!」





ふぅちゃんが
とびっきりの笑顔で言った。





私がふぅちゃんを推し始めたのも、
その笑顔があまりにも
輝いて見えたから。





フタバ「最後の曲は、
『キミとの恋』っ!!!」





音楽が流れ出し、
ステージのみんなが歌い出す。





「「「「「僕は一瞬でキミの虜に~♪」」」」」





「「「「「僕はまだキミに~
何もで~きてな~いけ~れ~ど~!!♪」」」」」





このままライブは
無事に終わるはずだった。





フタバ「は~(笑)
・・・んっ、もう全部
歌い終わっちゃったよ~(笑)
やっぱライブは早いな~!」





ライブが終わった。





シャノン(はぁ・・・
ふぅちゃん尊過ぎた・・・)





シャノン(帰る準備しなくちゃね)





その時、





シャノン「・・・っ!?」





私は左側から肩を叩かれた。





左に座ってたのは、確か・・・・・・





ユアン「シャノン・・・だよな?」





シャノン「・・・ユアン!?」





あー! あー!! あー!!!





もう嫌だわ。





バレた。





終わった。





シャノン「あれ? アイツらは?」





ユアン「アイツらって・・・」





ユアン「ミユウとナツなら
もう先に帰ったよ」





シャノン「え、なんで?」





ユアン「アイツらカップルだしな」





シャノン「へ~、ふ~ん」





シャノン「で、なんの用?」





ユアン「・・・あ、いや・・・」





シャノン「じゃ、私帰るよ」





ユアン「あ、待って・・・」





シャノン「じゃあ、何?」





ユアン「・・・ちょっとこの後
時間ある?」













* *





今回のライブは
16:00~18:00と
割と早くにあった。





だから時間もあるしってことで、
仕方なくユアンに着いて行くことに・・・





まあ、ユアンはアイツらの中に
いるにはいるけど
何も言ってこないし
いいかなってね?





私はユアンについて行って
カフェに入った。





どうやら穴場の様で、
普通のお客さんも
ライブ帰りのお客さんも
ちらほらとしかいない。





ユアン「まずは、
今までごめん・・・」





シャノン「え、何が?」





ユアン「その・・・ミユウ達が
シャノンに何か言ってる時も
何も言えなくて・・・」





シャノン「ああ、いいよ、別に。
アイツらのことタチ悪いって
もう分かってるし、
今更そんなことで傷つく訳ないじゃん」





ユアン「それなら良かっ・・・」





シャノン「それに」





シャノン「私、ユアンのこと信じてるし」





ユアン「えっ」





そう、あれはいつだったかな・・・
一昨日くらいかな。





休み時間に、私が席を
立っていた時のこと。





ミユウ達がまた
私の悪口を言っているのが、
廊下まで聞こえて来た。





ミユウ「アイツマジでふざけ過ぎ。
あんなにグッズジャラジャラと
付けちゃって」





ナツ「いやそれな?w
見せつけってかw」





ユアン「・・・お前らも本当は
ピチメロ推してるじゃん。
あいつとももう少し仲良くやれよ」





ミユウ「うわw 偽善者?w
私がアイツなんかと仲良く?w
出来る訳ないじゃんww」





ナツ「まずユアン、
お前が仲良くwなってから
言えww」





私の考え方は、
これを聞いてから
少しだけだけど変わった。





本当に少し、、
ほんの少しだけね。





シャノン「ね、前に私のこと
かばってくれてたの、聞いてたの」





ユアン「そ、そうか」





シャノン「うん。だから、
最初はユアンも含めて
3人みんな嫌いだったけど・・・
今は」





シャノン「今は」





ユアン「シャノン、好きです。
俺と付き合ってください」





シャノン「・・・!?」





シャノン「・・・www
まだ早いよww ユアン」





不思議と私の口元は緩んでいた。













* * *





2週間後





結局あれから私達は
ちゃんと付き合うことになった。





まあまだ子供だから、
“ちゃんと”が“ちゃんと”なのかは
分かんないけどね。





そして、あれからミユウとナツとも、
ユアンを交えて
仲良くなることが出来た。





どうやらミユウは
かなりの同担拒否だったみたい。





中3で初めて私と
同じクラスになったものだから、
ふぅちゃんを取られるとか
色々考えちゃってたらしい。





でも、もう仲良くやってる。





ユアンのおかげだね。





シャノン「あ、ピチメロの
新しいライブ情報出てる!!」





私は、共有ボタンから
“ピチメロいつめん”と
名前のついた4人グループへ、
情報を送った。





その時、机の上に置いてあった
ふぅちゃんのぬいぐるみが
少しだけ微笑んだ気がした。

















・。・:・°・。・:・°・。・:・°・。・:

───────────────
(視点:アンナ)
───────────────





才能がある人っていいよね。
うらやましい。





私は中学3年のアンナ。





私には推しがいる。
超人気アイドルグループの
“PEACH MELODY(通称:ピチメロ)”の
圧倒的センター、フタバちゃん。





ふぅちゃんには
才能を感じずにはいられない。





なんといっても本当に可愛くて、
でもそれでいてサバサバしてて、
そのギャップに沼る人が多い。





かくいう私も見事にその1人。

















* * *





アンナ「シャノ~ン、
ミユウ~、おはよー!」





シャノンとミユウは、
同クラの私のオタ友。
最近仲良くなった。





あ、ちなみにミユウとは
3年間ずっと同クラ。





シャノン「あ、アンナ・・・・・・」





ミユウ「ちょっ・・・見てよ・・・」





ミユウがなぜだか暗い様子で
スマホを見せてきた。





アンナ「!?!?」





私は目を見張った。





そこには
こう書かれていた。





「PEACH MELODYフタバ、熱愛か」





「昨夜8時頃、PEACH MELODY
(通称:ピチメロ)のフタバさんが
自宅マンションの・・・」





・・・じゃなくて。
私が目を見張ったのは、
その記事の写真。





その写真に写っていた男の人。





顔は隠されてるけど、
ふぅちゃんと
手を繋いで歩いてる。





・・・なんかこの人、
ミサキに似てる気がする・・・





身長といい、髪型といい、
体格といい。





・・・まさか、これミサキ?





・・・んな訳ないよね。





・・・うん、ないない。





だってあいつ
アイドル興味ないじゃん。













* * *





ミサキ「あー。あぁー」





フタバ「これ、私
どうなるんだろww」





ミサキ「俺が悪いのは
確かだけど・・・
笑ってる場合かよ・・・」





フタバ「www
ミサキはなんも悪くないよww
だって私達・・・」













* * *





次の日





アンナ「ミサキ」





アンナ「・・・これって、、
もしかしてミサキ?」





アンナ「ミサキ、
ふぅちゃんと
付き合ってたの・・・?」





ミサキ「・・・ふぅちゃん、、
あぁフタバか・・・」





アンナ「なっ・・・
フタバって・・・」





ミサキ「・・・今日の放課後
あそこのカフェに来てくれないか」





アンナ「は、、?
まあいいけど・・・」











* *





私は放課後、急いで
カフェに行った。





ミサキが指定してきたのは、
まさに近所の人しか知らない
穴場のカフェだった。





えっと、、、
あいつどこだ、、、?





あ、いたいた。





アンナ「・・・!?!?」





ミサキ「しーっ」





・・・なんで? なんで?
なんで。なんで。





なんで。・・・なんで?





フタバ「あは。アンナちゃん?
私のこと推してくれてるって
聞いたよーっ?
ありがとね~」





め、、目の前に
ふぅちゃんがいるんだけど・・・





私は叫びそうになった。





けど、ファンとして
会えてうれしい気持ちがある中で、
昨日見てしまったあの記事の写真が
脳裏をよぎって。





私の叫び声は
喉に突っかかってから
胃に戻った。













* *





アンナ「ミサキ、と・・・
本当にふぅちゃん・・・?」





フタバ「しーっ。
私、内緒でここに来てるから、
静かにお願い」





本物なんだ・・・?
やっぱ可愛い。





・・・今はそれどころじゃ
ないんだけど。





フタバ「でね、早速なんだけど、
今回はびっくりさせちゃって
ごめんね」





ミサキ「マジで。
俺ら付き合ってるとか
そんなんじゃないから」





アンナ「・・・でも、、
じゃああの写真は・・・」





フタバ「ミサキ、いい?」





この時のふぅちゃんは、
なんだか私の知ってる
ふぅちゃんとは違う気がした。





フタバ「ふーっ。
あのね、私たち実は
3人とも幼馴染なんだよ」





アンナ「・・・?」





アンナ「いやまさか・・・ね・・・笑」





ミサキ「いや、お前は
覚えてないかもだけど、マジ」





アンナ「いやいや。
だってまずフタバちゃん、
年齢非公開じゃん」





フタバ「あー、そっか。
中学は違うけど
私も普通に中3だし、
普通にこの辺りに住んでるよ」





アンナ「・・・そう・・・なんだ・・・?」





やばい・・・やばい。
情報量が多すぎる・・・!





えっと、取りあえず、、
ふぅちゃんは私とミサキと
幼馴染で、中3、
ご近所さんってことで
合ってる・・・よね?





フタバ「うん。
信じてもらえないだろうと思って
幼稚園の卒アル持って来たんだけど」





そう言ってフタバちゃんが
見せてくれたのは、
あの幼稚園の卒アルだった。





確か私が最後にいた幼稚園。





“あの”っていうのは、
私は親の仕事の影響で
昔っから引っ越しばっかりで、
幼稚園も小学校も
変わってばっかりだったから。





まあ今は戻って来て
小学6年からまた
この辺りに住んでる。





フタバ「これが私でー・・・
で、これがアンナちゃんだね。
で、これがミサキ」





どうやら私がフタバちゃんと
一緒に過ごしたのは、
幼稚園の最後の半年と
小学6年のあわせて1年半みたい。





なるほど・・・?





でも昨日、私
小学校の卒アル見てても
ふぅちゃんいるって
気づかなかったような・・・





もしかして・・・?





フタバ「ね、こういうこと。
やっぱ驚くよねー」





アンナ「・・・うん・・・かなり、、」





アンナ「でも、、これとあの写真って
どんな関係があるの?
わざわざ卒アルのためだけに
ふぅちゃんが来てくれるとは
思えないし、、」





フタバ「おー。早速ですか」





フタバ「実はね。ミサキ、
アンナちゃんのこと
好きなんだっ・・・」





ミサキ「おい、やめろ・・・」





フタバ「・・・はー!?
わざわざ私のこと
呼んだくせにー!!」





ん?? ん???





ミサキが私のこと、なんて?





フタバ「いいや。
もう私から言っちゃいまーす!
あのね、実はミサキ、
アンナちゃんのこと好きなの!!」





なんかフタバちゃんの目が
いきなりハートになった気が・・・





フタバ「で、私がどうやって
告ればいいかとか
聞かれてたってワケ!!」





フタバ「だからあの写真は、
その時にマジのマジで
偶然撮られちゃったんだよー。
だって私達ただの友達だし。
手繋いでるとか言ってるけど、
あれだって本当にマジで
たまたまあの一瞬だけ
手が重なってただけだし」





フタバ「・・・でも悪い気はしないよねー。
だって、幼馴染の恋を
1番近くで応援出来るんだよ!?
もはや特等席!」





アンナ「・・・そう・・・なんだ?」





・・・ミサキって
私のこと好き・・・なの?





フタバ「でも~。
私だってアイドルである以前に
普通の女の子なんだから、
恋愛してもいいと思わない?
勿論、ファンのみんなのことも
大好きだけどさ。
それとこれでは違うじゃん?」





フタバ「だからさー、
なんか今回の騒動も
色んな意味でいい経験に
なったっていうか・・・ねw」





フタバ「ほら~、ミサキ、
顔赤いよー・・・
って・・・アンナちゃんもじゃん」





私がチラリとミサキの方を
見てみると、
そこには顔を赤くしたミサキがいた。





フタバ「全くもーw
2人ともすっかり
話さなくなっちゃってーw
・・・ってやっば、
私もうレッスンの時間だわ。
じゃあこれ私の分のお金。
お会計お願いね。じゃ」





そう言い残して、フタバちゃんは
そそくさと帰って行った。





その姿を私達は
狐につままれたように
見送ることしかできなかった。





圧倒的なオーラを放つ、アイドル。





そのオーラはまだ
フタバちゃんが座っていた席に
残っていた。





ミサキ「・・・ごめん、いきなり」





アンナ「ううん」





ミサキ「そっ、それで・・・
さっきのことなんだけど・・・」





ミサキ「初めて会った時からの
一目惚れでした。
でもアンナはすぐ引っ越して。
俺はずっと引きずってたんだ。
そうしたらアンナが
帰ってきたもんだから・・・
だからフタバに相談してたら
こんなことになっちまって」





ミサキ「こんな俺だけど・・・
アンナのことがずっと好きでした。
付き合ってください」





アンナ「・・・うん・・・!」













* * *





次の日





あのときフタバちゃんが
連絡先を交換しようと誘ってくれた。





ピロン





フタバ『あの後どうなった~?w』





ピロン





フタバ『まあどうせ付き合ったよねー?ww』





ピロン





フタバ『でもさー、ちょっとくらい
私に振り向いてくれても
良かったんじゃないかなーって感じ~ww
だってあいつ、アンナちゃんがいない間
マジで毎日毎日
「アンナ帰って来んのかな」
とか言ってたもんww』





この日から、私にとっては
なんだか特別な、
新しい友達ができた感覚だった。





いつかシャノンとミユウにも、
フタバちゃんのこと
紹介できたらなーって感じ。

















・。・:・°・。・:・°・。・:・°・。・:

───────────────
(視点:コハナ)
───────────────





コハナ「みんなー!
今日はドームまで来てくれて
ありがとーっ!!」





私は満面の笑みを
浮かべて言った。





あぁ、頬が引きつって痛いな。





・・・自分で言ってて
吐き気がする。





馬鹿馬鹿しい。
虚しい。阿呆らしい。





私はこの歓声が
私に向けられていないのを
知っている。





この歓声は・・・
そのほとんどが
フタバに向けられている。





あはははは。
・・・ははは。





私、なんでこんなこと
やってんだろ。





こんな私にファンなんて
1人もいないことくらい
分かってるはずなのにね。













* * *





私は今や大人気のアイドルグループ
“PEACH MELODY(通称:ピチメロ)”
のメンバー、コハナ。





最近はメディア露出も
多くなってきている。





でもね。普通は
「自分のことこそ
自分が1番知らない」
っていうじゃん。





・・・けど、私は私のことを
悲しいくらいに1番知っている。





私には、ファンがいない。





ライブの度に、他のメンバー達は
ファンレターだとかプレゼントだとか、
ごちゃごちゃ貰ってるのを見るけど、
私は1回たりとももらった試しがない。





自分でも分かってるし、
ファンの間でも
もはや周知の事実。





世間では“とても仲の良いグループ”
と言われているとしても、
実際、本当にそうかと聞かれると
淀むグループの方が多い気がする。





事実、私たちピチメロも
五万とあるそんなグループの内の1つ。





ピチメロは、5人グループの
ごく普通のアイドル。





強いて言えば、中1からの
結成3年目で、
今はメンバー全員が
中3女子のグループ。





あ、でも。
やっぱりフタバちゃんが
結成当初から人気で・・・





だから3年目なのに
こんなに人気なグループに
なれたのかなって感じ。





ピチメロは女子小中学生に
人気のモデル、フタバちゃんと同じ
アイドルグループになれるという
謳い文句で、他メンバー4人を
募集していた。





まあ今考えると
ただ単に引き立て役を
募集してたって感じなんだけど。





で、結局メンバーはフタバちゃん、
レイナ、ミアン、ミオコ。あと私。





みんな仲良し・・・の
グループのはずだった。





でも現実はそんなに
生ぬるくはなかった。





あれは・・・
ピチメロ結成から3回目くらいの
ライブが終わり、
事務所に帰って来た時だった。





レイナ「あ!
私、ファンレター
こんなにもらえてるー!
やっぱ私人気だよねー!!」





ミアン「うわー、、確かに。
うらやまだわ~」





ミオコ「んもー!
私だって人気なんだからー!」





レイナ「・・・それにしてもコハナ、
1通もないの?w
なんかヤバすぎない?w」





コハナ「・・・」





ミアン「えww
うわ、ガチじゃんww」





ミオコ「えー、それってつまり~、
私たちの足引っ張ってるってこと~?
ちょっとーw
前から思ってたけど、やめてよー?w」





3人は私をあざ笑うかのように
言い残して去って行った。





ただの冗談だって
思いたかったけど、
そうもいかなかった。





確かに言ってることは
全部正しいし、
言い返そうとしても
そもそも言い返すところがない。





フタバ「・・・コハナ?
・・・コハナ? 大丈夫?」





コハナ「・・・触んないでよっ!?」





フタバ「・・・!?」





コハナ「同情なんてやめて!!」





コハナ「・・・アンタだって
どうせあの子達と同じように
思ってるんでしょ!?
だってアンタが圧倒的に
1番人気じゃん。
私のことをあざ笑ってるんでしょ!?
同情してあげてる自分
可愛いとか思ってるんでしょ!?」





うざい。うざい。うざい。
うざいうざいうざいうざいうざい。





同情なんてしないで。
やめてよ。
思ってもないこと言わないで。





私の中の醜い“ワタシ”が
過敏に反応する。





え・・・?





私、本当はこんなこと
思ってないはずなのに・・・
フタバは何も悪くないよ・・・





フタバ「そんなことない・・・」





パリンッ





鋭い音がした。





フタバ「!?」





コハナ「・・・っ・・・!!」





私は、誕生日にフタバからもらった鏡を
気づかないうちに投げてしまっていた。





コハナ「・・・私っ・・・!!
・・・・・・ごめん・・・」





鏡は割れてしまっていた。





フタバの顔から笑みが消えたのが、
少しだけど見えた。





今、私、絶対嫌われたよね・・・





まあいいや・・・
さっさと片付けよ・・・













* * *





ドームのライブが終わり、
事務所に戻って来た。





私がピチメロ用の部屋に入ると、
あの時の
“PEACH MELODYコハナ宛ファンレターはこちら”
と書かれた空っぽの段ボール箱が
まだあった。





せっかくだし、なんとなく
少し気になったので
その段ボールの中を
見てみることにした。





コハナ「えっ」





あの時はなかったはずの
ファンレターが、
なぜか1通だけ
段ボールの折り目の隙間に
挟まっていた。





封筒にはまるで
何も書かれていなかった。





宛先もないし、
差出人の名前すらない。





なんかちょっと怖かったけど、
封を開けてみた。





コハナ「・・・は?」





そこには身の程知らずな言葉が
ただ適当に・・・
でもつらつらと並べられていた。





『ピチメロのコハナさんへ

たまたまネットで見て、
気になったからライブに来てみた。
実は俺も最近からだけど
アイドルやってるんだ。

そしたらなんだか俺自身が
コハナさんに自己投影してて。
例えば、コンビニのお菓子とアニメが
コラボした時に最後まで残っちゃう
キャラみたいな。
・・・ごめん、今のは失礼すぎた。
忘れて。

でもピチメロ、もう既に結構人気だし
絶対コハナさんも俺なんかより
ずっと売れると思う。

いつかピチメロと俺のグループ、
テレビか何かで会えるといいな。
その時はよろしく。

ずっと応援してるよ。じゃ。
           R・Y』





いや・・・
書いてあることは
あながち間違ってない・・・





確かにこの前、ピチメロと
コンビニのお菓子がコラボした時も
私のグッズだけ最後まで残っていた。





フタバのなんて、
入ったどの店舗にも
もう無かったのに。





ははは。
それでなんか自分が
可哀想に見えたから
自分のグッズを選んで
お菓子と一緒に買っちゃったよ。





それに、その時のレジだって
私何もサングラスとか
かけてなかったのに
店員さんにすら気づかれないし。





・・・あはは。
でも私のこと、見てくれてる人も
ちょっとはいるんだ・・・





・・・誰なんだろ・・・













* * *





案外、その手紙の差出人とは
早くにテレビで共演した。





「今日の撮影は終わりでーす!
お疲れ様でしたー」





「お疲れ様でしたー!」





コハナ(やっと終わった・・・
バラエティ番組って
常に笑顔じゃないといけないから
キツいんだよね)





???「ピチメロのコハナさん?
だよね?」





コハナ「んっ、、はっ、はい!」





私は急いで振り向いた。





ん、、この人
あの人気の男アイドルの、、?





???「俺、2年前ぐらいかな・・・
ピチメロのライブに行った時に
コハナさんに
ファンレター入れたんだけど・・・」





コハナ「・・・!?」





???「あ、ごめんなさい。
俺リョウスケ」





コハナ「ん・・・え、
リョウスケ・・・さん!?
もしかしてあのファンレターの
R・Yさん?」





リョウスケ「あ、そうです」





なーんだ。
この人私よりずっとファンいて
ずっとずっと有名じゃん。





ファンレターにあんなこと
書いてきたくせに・・・





この日、私はリョウスケと
連絡先を交換した。













* * *





その日の夜





リョウスケ『まさか本当に
テレビで共演できるとは
思ってなかった』





コハナ『お互い有名に
なったってことだ』





リョウスケ『まあな』





コハナ『ねぇ、今度一緒に
出かけてよ』





リョウスケ『なんかいきなりだな、、
いいけど』





コハナ(やった)





それから私達は
何度か出かけるうちに
とんとん拍子に
付き合うことになった。





この時ばかりは、うちの事務所が
割とゆるいところでよかった、
と本当に心から思った。













* * *





夢の中でもステージに立ち、
自身のメンバーカラーのサイリウムで
目をいっぱいにしているコハナの横で、
スマホが鳴った。





ピロン





フタバ『私が言えた義理じゃないけどさ・・・
私はコハナが1番頑張ってるの、
1番ちゃんと知ってるよ』





コハナ「遅いよ・・・ばか」





コハナは小さく寝言を言った。







*end*

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