あの有名人は隣の席で

CAST有坂 心花有坂 心花

作者:M

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2024.06.28

「KOHAの新曲きいた?」





「まじやばいよな~」





「ってか、新曲リリース
まだ1週間なのに
もうチャート2位だし」





「ミュージックビデオも
もう少しで1億だって」





「さすがすぎる・・・!」





─────────
──



みんなは、知らない。





素顔は謎に包まれた
若手ミュージックアーティスト、
記録的大ヒットを
立て続けに出しているKOHAが、





隣の席でその会話を
きいていることを。













─ ニコラ学園3年A組 ─





「おはよ、有坂さん」





「おはよ」





クラスの中心的存在であり
学級委員の今井暖大からの
あいさつを返したとき、
ドンッと誰かにぶつかられた。





「・・・じゃまなんだけど」





ムスッとした表情の彼女は
川原美杏。





オレオレ系強気の美少女だ。





彼女はどうやら今井暖大に
片想いしているらしく、
その彼が地味でも
目立つわけでもない私に
声をかけたことに
ご立腹のようだった。





(あーあ、めんどくさっ)





人間関係のいざこざが
得意でない私は
どちらかというと
クラスでも孤立している方だと思う。





思わずため息をつき、
川原美杏にぎろりとにらまれる・・・





と、まあそんな映えない
学生年活の中に、
もうすぐ非日常がやってくる。





その非日常とは、ズバリ文化祭。





ありとありゆる文化部が
主人公としてスポットをあび、
学校全体で大盛りあがりする
このイべント





・・・なのだろう、





おそらく一般的な
健全な中学校では。





だがしかし残念なことに
ここ、ニコラ学園は
治安が悪いことで有名な学校で、
もちろんイベントにも
さまざまな規制がかけられている。





つまるところ、
ニコ学生徒の常識として
「イベント=つまらない」
の方程式が出来上がっているわけで。





そんなわけだから
もちろん盛り上がりにも欠け、
もはや近いうちに文化祭だなんて
消えてしまうのではないかレベル。





そもそも参加する気すらない
生徒も多くいる、という
現状である。













― 休み時間の廊下 ―





(おー1週間前に出した
新曲のミュージックビデオが
1億突破した~)





私は、スマホでそんなことを
確認して歩いていた。





(あーマネージャーから
メッセージもきてる。
次の新曲もそろそろ
考えないと、か・・・)





そんなことを
考えていたからだろう。





ドンッ





「あっ」
「えっ!?」





ふいに誰かとぶつかり、
しりもちをついた。





「ごめん! 大丈夫?」





(今井暖大か)





私はヨロヨロと立ちあがる。





「・・・うん。
怪我はしてない」





「よかった~。
ってあっ、落としてるよ」





言われて、私は
スマホが手の上にないことに
気がつく。





わざわざ拾ってくれた彼は、
次の瞬間驚いたように
画面を2度見した。





「え!? これってKOHA・・・」





「ストーップ!!」





慌てて大声をだし、
今井暖大の言葉が
周りに聞かれていないか
確認した私は、
つっけんどんに手をのばす。





「返して」





「あ、うん。
でもこれ・・・」





「絶ッ対誰にもいわないでね」





「ま、待って!
・・・お願いがあるんだけど」





すぐさま立ち去ろうとした私は、
今井暖大に呼び止められ、
仕方なく足を止める。





「有坂さん・・・
いや、KOHAに、文化祭に
出場してもらえませんか?」





「無理」













― 文化祭前日 ―





「有坂さん、お願い!」





出場を断ったその後も
今井暖大は
しつこく私に
頭を下げ続けていた。





マネージャーさんにも
相談したら、
意外なことに
乗り気だったことから、
私もあからさまに
断れずにいた。





「・・・なんでさ、そんなに
私に出て欲しいわけ?」





「だって、俺らの中学校生活・・・
何にも青春もなく終わるとか
むなしくないか?
イベントとかもダルがらず
もっと全力で楽しんだら
よかったって、
最近すごく思って・・・」





今井暖大は、私を
じっと見つめた。





「今超話題のKOHAが
文化祭に出るとなったら
みんな絶対に盛り上がる。
だから・・・俺のため、
いや、俺らの青春のために・・・
お願いします」





(私たちの、青春のため)





思えば。





今まで、中学校生活3年間の中で
なんかをみんなで全力で
楽しんだことがあっただろうか。





(みんな、絶対に盛り上がる)





その言葉を噛みしめ、
私はついにうなずいた。





「わかった。
・・・私たちで、
文化祭を盛り上げよう」





3年生、
受験を残した
最後の大イベント。





協力してもいいじゃないか、





私たちの鮮やかな
青春の1ページのために。













― 翌日 文化祭本番(in 体育館) ―





「ねぇねぇあの話って・・・
本当?」





「なんかKOHAが
出るらしいけど・・・」





「ガチっだったら
ヤバすぎだよね~!」





ざわざわとしずまらない
観客席の声を
ステージ袖で聴きながら、





私はKOHA公式アカウントで
ライブを開始する。





「今から初ライブ~
緊張しすぎてやばい」





そんな私の顔には仮面。





KOHAの正体は、あくまでも
謎に包まれたままにするというのが
マネージャーからの
条件だったからだ。





「それでは、いよいよ
お待ちかねの・・・
KOHA初ライブ、スタートです!」





今井暖大の司会と共に
ステージに私が登場した途端・・・





歓声で、地面が
大きく震えた・・・







歓声。





歓声。





そして、手拍子。







音の波は、体育館中を
飲み込んでいく。





私は、その怒涛の嵐に
負けぬよう、
なお声を大きく上げる。





(・・・すごい)





みんなで、1つのものに
夢中になって、盛り上がる。





これが、今井暖大の言っていた
「青春」なのだろう。





弾ける熱気と弾ける歓声。





そして、今、
体育館中のみんなが
笑顔だった。







「KOHAさん、
ありがとうございました!!」





夢のようなひとときは、
しかしすぐに過ぎ去る。





「こちらこそ
ありがとうございました!」





こうして、中学3年生、
最後の文化祭は
終わりを告げた。













― 翌日 ―





「おはよ」





いつものあいさつ。





今日は、今井暖大からではなく
私から。





「おはよ!
・・・昨日はありがと。
まじで楽しかった」





今井暖大は
まわりを見てから
小声で私にささやいた。





「ううん。
私もいい経験になったよ。
・・・てか、なんか
カップル増えてない?」





なんだかまだ
浮かれた雰囲気の教室で、
明らかに2人寄りそう男女が
増加している。





「あーなんかこういう
大イベントの後は
そういうジンクスは
あるっぽいからね。
今まではイベントとか
ないようなもんだったから
変わんなかったけど」





「ふーん」





その時、私を
じっとにらみつける
川原美杏の視線に気がつき、





(・・・今井暖大も
誰かから告られたりしたのかな)





ふと、そんなことが浮かび、
なぜか胸の辺りがもやっとした。





「・・・ところで、
有坂さんって
好きな人いたりすんの?」





「何急に。
いない・・・けど」





面食らう私に
今井暖大は向き直り、
言った。





「じゃあ、俺とかどう?」





「は?」





なぜか鳴り止まない鼓動。





体温が急上昇していく。





(・・・何何何)





私にはまだ、
この気持ちの名前が
分からなかった。







*end*

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