美少女スイッチ

CAST有坂 心花有坂 心花

作者:M

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2023.12.25

あなたは
魔法を信じますか?





これは、
魔女と出会った
とある中学生の物語・・・。











* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





ピーンポーン





玄関ベルの音に、
ドアから顔を出した私・・・
有坂心花・・・は、
目が合った人物に
パッと表情をゆるめた。





「───はい、コレ。
プリントとか入ってるから」





持っていた紙袋を
突き出したのは、
幼なじみであり、
私の想い人でもある
八神遼介である。





「───ありがとー! 助かる」





受け取った後、
はにかんだとき
咳がでた。





「───ゴホッゴホッ」





「───大丈夫か・・・・・・
熱なんだよな、
お大事にな」





「───────うん」





「───じゃ」





小さくなっていく彼の背を
しばらく見つめた後、
私はパタンとドアを閉めた。













─── 翌日 学校 ───





「───コハナ、
完全復活でございまーす!」





朝1番大声をだした私に、
親友の白水ひよりは
笑顔を浮かベた。





「───うむ。
元気そうでよろしい」





じゃれ合う私達の横を
スッと通った人影に
「───あ!」、
と私は呼び止めた。





「───リョースケ
昨日ありがとねー!」





ふり返った彼は、
私を目にすると





「───・・・・おう。
良かったな、熱下がって」





手短かにそう言うと、
そそくさと男子の輪の方へ
去っていく。





「───ムー・・・・・・
あいかわらず、つれない・・・」





すねたように
口を鋭らせると
ヒヨリは苦笑した。





「───いやー
中3にもなると
あんなもんでしょー」





(昔は・・・・・・・)





そっと、男子の輪で
声を上げて笑っている遼介に
視線を向けた。





(昔は2人ずっと一緒で───
隣で笑っているのは
私だったのに・・・)





「───ってかコハナ、
進路調査書、出した?
あたしまだでさ・・・」





「───ああっ、忘れてたっ」





「──────ヤバいよ。
締め切り来週だし」





「───マジか・・・・・・
早いもんだな、3年間って」





「───いきなり笑」





(・・・リョースケは
どこ志望なんだろ)





ふとそう思い、
彼の方へ目をやる。





そんな私の視線の先に
気がついたひよりは
苦笑した。





「───がんばんな」





「───うん・・・・・・」





彼の隣には
うちのクラスのマドンナ、
松尾そのまが
楽しげに笑っていた────。













・*。・ 放課後 帰り道 ・。*・





「───やっぱさ
───顔可愛いい方が
いいのかな・・・」





松尾さんと笑い合っていた遼介が
頭にちらついて離れず
ぐちをこぼすと、
ひよりも少し答えにくそうに
うなずいた。





「───それだけでは
ないだろうけど・・・・・・
まあ、顔は良いに
こしたことはないかもね―――」





今日だけではないのだ。
最近、急速に
遼介と松尾さんは
距離が近くなっている。





従って、私のモヤモヤも
蓄積されていっている訳だが。





「───あー
美少女に生まれたかったー!」





やけくそぎみに
そう怒鳴ると
カラスが慌てて
飛び去っていった。





そのときだった。





「───・・・・・・私なら
可能であってよ?」





ハッとふリ向くと、そこには
真っ黒の長い髮の
ゴスロリに身をつつんだ
少女がいた。





「───私、魔女の
チョコ・ブラックといいます。
話はうかがったわ。
お力になれましてよ」





あやしく笑う彼女の迫力に
気押され
ぽー、としている私の腕を
ひよりが強く引いた。





「───ひっ、人違いです!」





「───あっ、お待ち!」





そう言うやいなや
駆け出したひよりに、
こけそうになりながらも
引っ張られていく私。





魔女と名のった少女の姿が
見えなくなると、
ホッと息をつき足を止めた。





「───絶対あれヤバい人だよー。
振り切れて良かっ・・・ーッ!?」





ゆらり、と
目の前の空間がゆらいだ。





突然のことで
身動きもできず
立ちつくす私達の前で、





そのゆらぎの中から
黒髪とゴスロリの少女が現れる。





「───ごきげんよう。
また、お会いしましたね」





「───・・・ッッ!」





ぞわり、と全身から
嫌な汗がふきだす。





あっけにとられた
次の瞬間には
えたいの知れない
この少女への恐怖で
胸がぬり潰される。





そんな私達の様子に、
少女は少し悲しげに笑った。





「───ご安心して下さいな。
私はただ、
可愛くなりたい女の子に
お力ぞえしたいまでですわ」





その言葉と共に、
どこともなく取り出した
スイッチを
少女は差し出した──。





「───目を閉じて、
このスイッチを押すと、
理想の顔になれましてよー」





急きょ開いた女子会
私の家で、少女・・・
チョコ・ブラック・・・を
再現した私の向かいで、
ひよりはうなった。





「───信じがたいけどー・・・・・・
信じざるをえないかも」





空間のゆらぎ。





どこともなく現れた
このスイッチ。





チョコがブラックのかもしだす迫力。





「───百聞は一見にしかず!
とりま、本当に
そんな力があるのか試してみよ!」





私は、勢い良く目を閉じる。





そして、手にした
スイッチのボタンを
カチッと押すと・・・・・・





(・・・・・・)





(────あれ?
何も起きない?)





予想していたような
何か特別な感じも何もなく、
いささか拍子抜けして
目を開く。





「───コ、コハナ・・・?」





まず視界に入ったのは
顔を青くして固った
ひよりだった。





「───か、鏡見てみて・・・・・」





信じられないとでも
言うように
私を凝視するひよりに、
まさかと思い
全身鏡の方に振り返る。





そして、息を飲んだ。





(っ・・・!)





こちらを見つめ返していたのは、
見知らぬ、
それはそれは
美しい少女だった。





「───うそ・・・・・
これが私?」





天使の輪を描く髪に手をやると
サラサラと指のすき間から
こぼれ落ちた。





大きな瞳は
長いまつげでふちどられ、
ピンク色に染まったくちびるは
ポッテリとしていて愛らしい。





「───それ、
戻れるんだよねー?」





鏡の中の自分に
魅入っている私に
ひよりがこわごわと
腰を上げた。





(もう一度目を閉じて
スイッチを2回押すと
元の姿に戻れますわ―)





チョコ・ブラックの言葉を思い出し
実行すると、
次の瞬間には鏡の中の少女は
見慣れた自分に戻っていた。





「───効果あるのは
分かったけど・・・・・・
なんか怖くない?
副作用とかあるかもだし」





「───まあ───それは・・・
そうだね」





消極的なひよりに対し、
私の気持ちは、かなり
このスイッチに傾いていた。





「───使うのそれ?
あたしちょっと反対かも。
えたいも知れないし・・・」





でも、ひよりの主張ももっともで、
反論できず曖昧にうなずく。





「───うん・・・・・・・」













・*。・ 日曜日 ・。*・





「───いってきまーす!」





今日は、
足りなくなったノートなどを
買う用事を済ませるため、
近所のショッピングモールに
自転車で向かう。





お昼少し前で、人もまばらだ。





そんな中、本屋さんで
買い物を終えた私は
見知った顔を見つけ、
駆け寄った。





「───リョースケじゃん!
何してんの、ひとり?」





(やった、
休みの日に会えるとか
ラッキー!)





内心テンションが
上がっていた私は、
振り向きざま、
あっという表情をした彼に
小首をかしげる。





「───あーちょっと・・・・・・」





「───ごめーん! 侍った?」





遼介の言葉をさえぎり、
急に割りこんできたのは────
松尾さんだった。





「───お、松尾さん?」





「───あーええっと・・・・・
ちょっと買い物に
付き合ってもらってるっていうか」





きまずそうに
遼介がそう言う。





その態度に
胸がドクンッと
嫌な音をたてた。





足から力が抜け、
よろめき後ずさった。





「───あーごめんっ
おじゃまだよね、私」





心なしか重くなった空気に、
張りついた笑顔をうかベ、
なんとかそう言うと
無我夢中で私は走りだした───。





気がつけば、
家の前にいた。





ドアを開け、
2階の自室に上がると
床に座りこむ。





ひとしきり泣くと、
少し落ちついてきた。





(───多分あの2人、
付き合ってるんだ・・・)





暗い面もちのまま
うつむいていたとき、
手に何かが当たった。





目を向けると、そこには
昨日もらったスイッチがあった。





(これを使えば、
私にだって
ふり向いてくれるのかな──)





うかんだ思いに
私はすぐさま夢中になった。





ギュッとスイッチを握った私が
自転車をモールに
置き忘れてきたことに
気がつくのは、もう少し後の話。













──―― 翌週 ────





(・・・・・・・いた!)





私は草かげにかくれて
遼介を探していた。





(やっぱり。
いつもこの公園で
ゲームしてるから──)





私は、考えた
「──遼介をふり向かせ作戦」
を思い返す。





1、スイッチを使って美少女になる。

2、道に迷ったと言って案内してもらう。

3、ライン、連絡先交换

4、距離を縮めていってつき合う!





(・・・・よし)





私はギュッと目をつぶり、
スイッチのボタンを押す。





そして、
遼介の座っているベンチに
駆け寄った。





「───あの・・・・・
道に迷ってしまって」





私の声に目を向けた遼介は
驚いた表情をしたあと、
ポッと顔を赤くした。





(おおー!
美少女パワーすげ───!!)





内心ガッツポーズをしながら
続けて言う。





「───〇〇ショッピングモール
なんですけど・・・・」





「───ああ!
良かったらそこまで
案内しましょうか?」





「───お願いします!」





(いよっしゃあああー!)





「───ニコラ学園の人ですよね?」





「───えっ、俺を知ってるんスか!」





「───何度か
すれ違ったことあるので───」





道中も会話ははずんだ。





(いつも私が話しかけても
そっけなかったのに・・・・)





うれしい反面、
少し複雑な心境だ。





「───よかったら
連絡先交換しない?」





気がつけばもうお互いため口で、
私の言葉にも
遼介は快くうなずいてくれた。





全ては順調に思えた、
そのときだった。





「────八神くんじゃん!
その人は?」





突然の声に、足が止まる。





ふり返った遼介は
彼女───松尾さんを目にし、
笑みをうかべた。





「───おー松尾さん。
この人はええっと・・・」





「───町田優未です。
リョースケくんには
道案内してもらってるの」





「───そーなんだ。
うちは、松尾そのまです」





とっさに偽名を名のった私に
松尾さんは笑いかけた。





(やっぱり可愛いな・・・・・)





悔しながらも
そう思ってしまった私は、
気がつくとポツリと
質問していた。





「───2人は、つき合ってるの?」





「───「───ええっ!!?」」





驚き声を上げた後、
遼介があわてたように口走った。





「───ち、違うって!
俺、他に好きな人いるし!」





(えっ───)





「───松尾さんとは
その子にあげるプレゼント選び
手伝ってもらってるだけ」





「───プしゼントあげるの?」





松尾さんヘのわだかまりが
消えた私は
ふと気になり問う。





「───俺らもう中3で
卒業だから───
最後にその子に想い伝えたくて。
そのときに渡すんだ」





顔を真っ赤に染め、
ポツポツ語る遼介を見つめる。





(ここまで聞いちゃったら──
きいてもいいよね?)





私は、大太鼓のように
打ち鳴る胸をおさえ、





「───その子って、───誰?」





「───名前きいても
分かんないと思うけど・・・・・・
俺の幼ななじみで──
いつも元気なやつ」





(・・・・えっ・・・・?
それって───)





言った後、りんごのように
赤くなった顔をごまかすように、
彼ははずかしそうにそっぽ向いた。





「───八神くんねー
その子に話しかけられても
はずかしくていつも
超塩対応なんだよー」





「───ちょっ、松尾さん!」





からかうように笑う
松尾さんの言葉を
頭の中でくり返す。





もう、ほぼ確信していた。





「───遼介くんは
その子のどこが好きなの?
顔?」





「───顔ってw」





「───そんな訳ないだろ・・・
もち、性格だよ」





ぶふっと吹き出した松尾さんと、
少しあきれた目を向けてきた遼介を
交互に見る。





「───そっかー」





「───あ、着いた。
あれが〇〇ショッピングモールだ」





「───ありがとうー
めっちゃ助かった」





「───じゃあ俺らはここで」





「───じゃーねー」





手を振り、
遼介と松尾さんの
小さくなった背を見た。





私はそっと目を閉じ、
スイッチのボタンを2回押す。





「───最初から───
こんなスイッチ、
使わなくても良かったんだ」





(俺の幼ななじみで──
いつも元気なやつ)





(───もち、性格だよ)





温かい気持ちが、
胸から指先まで
広がっていく。





もし、スイッチを使って
美少女の姿で
遼介と付き合うことになっても
本当に心の底から喜べただろうか。





────否。





そもそも
女子の顔しか見ないような
人ではなかったのだ。彼は。





私自身を見てくれていた。





私は、お店のガラスに映った
自分にほほ笑む。





いつしかスイッチは
消えていた────。













・*。・ 1ヶ月後 卒業式の日 ・。*・





「───コハナ・・・
ちょっと来て」





私は遼介の後に続いて
歩いていた。





人気の少ない校舎裏にくると、
彼は私に向き直り、
手にしていた紙袋をさしだした。





「───・・・・これは?」





中には
犬のふで箱があった。





「───高校で使えるかなと思って──」





(──うれしい)





「───ありがと!」





パッと笑顔になった私の前で、
不意に遼介は深呼吸し、
意を決したように
私を見つめた。





「───あのさ、
伝えたいことがあるんだ」





「───-何?」





ドクン、と胸が高なる。





期待が心ではじけて
跳ねていく。





私も、遼介の瞳を見つめ返す。





「───ずっと好きでした!
付き合って下さい!」





(────!!)





「───はい・・・・・!」





あなたは
魔法を信じますか?





これは、
魔女と出会った
とある中学生の物語・・・・・・・







(お終い)

Like

この物語に投票する

有坂 心花が主人公の物語が主人公の物語

NEWS!NEWS!

nicola TVnicola TV

おススメ!おススメ!

物語募集

「ニコラ学園恋物語」では、ニコ読の
みんなが書いたニコモを主人公にした
オリジナルラブストーリーを大募集中!

応募する

主人公別 BACK NUMBER主人公別 BACK NUMBER

  • nicola TV
  • 新二コラ恋物語 恋愛小説を大募集!