赤と青の魔法の書

CAST松尾 そのま松尾 そのま

作者:m

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2024.02.25

「何コレ」





青い表紙の本を
私・・・松尾そのま・・・が
見つけたのは
学校の図書室だった。





題名がない本だ。





好奇心がわき、
私はパラッとめくる。





「えーなになに。
死後転生できる呪文?
イタシイセンテ・・・って
これオカルト系だったんだ」





冗談半分に記述された
文字を読み、一人苦笑する。





「戻しとこ」





そろそろ予鈴が鳴ることを知らせる
図書委員の子の声に、
すぐに図書室を出た私は
気がつかなかった。





・・・青い本が、消えたことに。













― 昼体み、2年A組 ―





「そのま。
話したいことがあんねん」





半年前まで大阪に住んでいた
親友の名は、有坂心花。





いつも明るく、
ムードメーカーの彼女が
いつなく真剣な声音で
私を見つめた。





「何?」





首をかしげると、心花は
思いつめたように口を開く。





「うち・・・
そのまの転生者やねん」





(はっ??)





思わずポカンとしてしまう
私に相反して
心花の声に暗さがのった。





「それも、4回目の」





「・・・よく
分かんないんだけど」





「今日。
青い本読んだやろ。
そのせいで、そのまは死後、
転生するんや。
それも1回やない。
死んだ数だけや」





転生するときの
共通点は3つ。





なぜか必ず
2010年に生まれること。





なぜか必ず
ニコラ学園に入学すること。





なせか毎回
2年A組になること。





「・・・じゃあクラスの中に
何人も私の転生者が
いるってこと?」





信じられない思いで問うと、
心花は首をふり答えた。





(・・・心花疲れてるのかな?)





「そーなんだ」





口ではそう言いつつ、
私はまさかと
本気にしていなかった。





チャイムが鳴り、
席に着く。





(あれ、図書室で見た本について
心花に話したっけ)





少し、ほんの少し
ひっかかりを覚えながら。





「そのまちゃん。
ちょっといい?」





家へ帰ろうと、
昇降口でくつに
履き変えようとしたときに
声をかけられ振り返る。





「うん、いいけど」





両サイドのお団子に髪をまとめ、
私を手招きしたのは
うちのクラスの一軍リーダー、
伊藤沙音。





ひとけのない廊下に
移動した私達は
階段に腰かける。





「そのまちゃんさ、
転生って、本当にあると思う?」





突然の切り出しに
昼の心花が重なり
うろたえる。





沙音は、私の答えを待たずに
ポツリポツリと話し始めた。





「ニコラ学園には、
100年に一度現れる
魔法の書があるの」





「魔法の、書?」





沙音はコクリとうなずき、
よりいっそう
重たい声で続ける。





「題名のない、
青い表紙の本だよ。
その本は、中に書かれた
魔法の呪文をとなえられると消滅し、
また100年後現れるの」





(題名のない青い表紙の本・・・ッ!?)





いよいよ昼の心花の
言葉に重なり、
私は心拍数が
大幅に上昇するのを感じ
息をつまらす。





「そのまちゃん・・・
いいえ、私が転生の呪文を
読んだのは
2度前の人生だった」





わかる?





沙音は、声に出さず
私に問いかけた。





「私・・・
あなたの転生者なの」





「うち・・・
そのまの転生者やねん」





視界がブレ、
沙音と心花が1つに
重なった気がした。





「転生?」





ばかみたいに
震えた声がでた。





「そう。
私は3回目だけど・・・
心花ちゃんはきっと
4回目だよね?」





ヒュッと息を飲むと、
沙音は苦笑した。





「なんとなく、
転生者同志って
分かるものだから」





「そうなんだ」





転生? まさか。
でも、なんで知ってるの。





青い本って
図書室にあったやつのこと?





転生? 本当に?





分からない。
分かりたくない。





私は何か、恐ろしいものが
ヒタヒタと近づいてくる感覚に
押し潰されそうになる。





「考えてみて。
転生って、前世の記憶を
残らず憶えているでしょ?」





静かな廊下に、
沙音の声はよく響く。





「それって、
人間をあきらかに
越えることなんだ。
正直今3回目の私も
ずっと頭痛してるの。
だから」





沙音は少し
言いにくそうに
言葉を切る。





「私が思うに、
人間の脳が
これに耐えうるのは
4回が限界」





「4回目の心花ちゃんは、
次転生すると
死より恐しい苦痛が
まっている」





視界がグニャリと歪む。





強い耳鳴りがして、
私は立っていられず
ヘナリと床に膝をつく。





気がついてしまったのだ。





魂に、何かが
巻きついていることに。





「私はそんなこんなの」





見えない、だけど
私にからみついた黒いナニカ。





「一度でも転生すると、
呪文は完成し
ソレは魂内部に刻みこまれる」





静かに、淡々と
沙音は続ける。





「まだ未完成の・・・」





「あなたなら、
魔法をとける」





私はパッと顏を上げた。





青い本と
対になった赤い本。





赤い本は、青い本の魔法が
行使された2日後
消えてしまう。





「魂に呪文が刻まれた私達は
もはや人ではない。
でも、まだ未完成のあなたなら・・・
赤い本の解魔の呪文をとなえられる」





「───どういうこと?」





「魔法は人間にしか
使えない力」





だから、と
沙音は伏せた目を上げ
私をジッと見つめた。





「あなただけが頼りなの」





涉音と別れた私は、
重たい足取りで
校門へと向かっていた。





なんだか色々と濃すぎる一日で、
頭の中を整理する時間が
ほしかった。





それに。





見えないナニカに
気がついてしまったときからの
気持ち悪さが
まだおさまっていない。





思わず深いため息を
ついたとき、





「松尾さん?
どうしたの?」





後ろからの声に
驚きふりむく。





「八神くん」





彼は、ニコ学理事長の息子の
人気者で、
女子にキャーキャー言われている
タイプである。





「何か元気なくない?」





無駄に整った顔で
心配そうに見つめられ、
精神的にまいっているのもあってか
私はドキッと、心臓がはずむ音がきこえた。





「俺でよければ相談しない?」





天然の女たらしである。





私もそれに負けて、
気がつけば
全てを話していた。





「ふーんなるほど・・・」





彼の声に
ハッと目が覚める。





(やっちゃった・・・!
転生とか魔法の書とか
絶対頭おかしいと
思われた・・・・・・!)





既に手退れながらに青ざめ、
私は冷や汗をドッとかく。





気まずすぎてうつむいたが、





「俺・・・
赤い本の場所、知ってる」





「えっ!?」





次の瞬間超スピードで
顏を上げる。





「代々理事長一族に伝わる
口伝なんだけど・・・」





息をつめ、
私は八神くんを見つめる。





「赤い本は消えるまでの2日間、
ニコ学の図書室に
12時から2分間のみ現われる」













― 翌日、ニコラ学園図書室 ―





心花、沙音、八神くん、
そして2回目の
私の転生者らしい
青山姫乃ちゃんが
図書室に大集合していた。





時計の針が
12時をさした瞬間、
私の目の前の本棚に
赤い表紙の本が出現する。





「きたっ!」





私は素早く手に取り
ページをめくる。





「解魔の呪文・・・あった!
・・・って」





喜んだのもつかの間、
私達はいっせいに青ざめた。





ページの一部が破れ、
呪文の後半が
分からなくなっていたのだ。





「ヤバい・・・!
あと一分だ!」





八神くんの叫びに
私はパニくりながらも
懸命に頭を動かす。





(どうしよう、どうしよう。
後半の呪文って、何!?)





「えーなになに。
死後転生できる呪文?
イタシイセンテ・・・」





青い本を読み上げたときのことが
ハッと蘇る。





(イタシイセンテ・・・・・・
反対に読むとテンセイシタイ、
転生したい!)





じゃあ・・・!





「残り15秒!」
沙音の悲鳴をあげるような声に、
私はゴクリとつばを飲みこむ。





「テイトヲウホマ!!」





その瞬間、
赤い本は消えた。





そして、
まばたき一つの静寂ののち、
まばゆい光が
目をつきさした・・・。













― 翌日、2年A組 ―





「青い本? 転生?
何ソレ」





心花は心底不思議そうに
首をかしげる。





「てかさ聞いて、
うち昨日、変な夢みて・・・」





魔法は無事解かれて、
心花や沙音達の
本や転生に関する
記憶は消えた。





ガラリと教室のドアが開き、
八神くんが顔を出す。





「おはよ」





目が合い、
私も返事を返した。





「おはよ!!」





一度きりの人生は、
これからも物語を紡いでいく─────。







*end*

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