五月病と初恋の夏

CAST有坂心花

作者：M

2024.05.05

ダルい。
何もかもがダルい。

動きたくない。
しゃべりたくない。
何もしたくない。

私、有坂心花は
五月病のような無気力症に
おちいっている。

けっこう重症。

夏休みなのをいいことに、
最近は寝るか食べるか
スマホしかしてない。

（あーそろそろ宿題やばい・・・）

そう思いながらも
ダラダラと寝ころがってしまう。

「心花ー！
もーいつまで寝てんの!?」

ガラッと部屋の扉が聞いた。

威勢（いせい）の良い彼女は
幼なじみであり親友の
松尾そのま。

「来年の春まで起さないで」

「またそんなこと言って！
宿題は？
一生懸命受験して入った
学校でしょ、
ちゃんとしてるの？」

私が通うニコラ学園は
難関として有名で、
私は中学受験でやっとの思いで
入学した。

ちなみにそのまは
近所の新潮中に通っている。

「それが・・・
全く手付かずで
残ってマス・・・」

私の答えに、そのまは
額に手を当て
大きくため見をついた。

「ところで、心花、
来週の予定空いてる？」

「空いてるけど。なんで？」

変わった話題に
救われた思いで返事する。

「大阪にいとこがいて、
遊びに行くんだけど
一緒に行かない？」

「えーそれって、
親戚どうしの
集まりみたいな感じ？」

私がいたら場違いじゃ、
と思っていると
そのまはかぶりを振った。

「ううん。
いとこも友達を何人か
連れてくるらしいから。
暑いし、海に行く予定」

「へー」

海、かぁ。
久しく行ってない。

「多分、いい気分転換に
なると思うよ」

そのまの言葉に、
たしかにと私はうなずく。

「いいよ。行こう」

ちょうど自分でも
この無気力症を
なんとかしなくてはと
思っていたところだ。

・＊。・　１週間後　・。＊・

私とそのまは電車を乗りつぎ、
２人で大阪にやって来た。

「・・・暑い溶けそう」

「マジそれ」

途中、店に寄って買った
アイスをなめながら、
２人で海まで向かう。

水着に着替えた私達は
砂浜に着き、
そのまが先にいた３人組に
声をかけた。

「久しぶりー」

後ろからの声に
パッと真っ先にふり返ったのは、
えくぼが特徴の少女だった。

「そのま！　久しぶり！」

「この子が、いとこの
青山姫乃ちゃん。
こっちは、友達の心花だよ」

紹介され、
私は軽く会釈する。

「初めまして！
姫乃って呼んでな！」

バチバチの関西弁に、
少しドキドキしながら頷く。

「で、紹介するけど、
うちの隣にいるのが沙音、
その隣が岬」

「よろしく」
「よろしくな」

軽く頭を下げた岬くんに
目をやった私は次の瞬間、
ドクンッと胸が跳ね上がる音が
きこえた。

（えっ、イケメン）

この瞬間、
私は初恋に落ちた。

・＊。・　数週間後　・。＊・

「明日の夏祭り
姫乃達も来るって」

死ぬ気で宿題をしていた私は、
私の部屋でくつろぎながら言った
そのまの言葉に顔をあげる。

「ガチ!?
よっしゃ宿題絶対
今日で終わらせる」

誓った私を見て、そのまは
少しおかしそうに笑った。

「・・・心花が戻ったぞ」

言われて、ふといつのまにか
無気力症が治っていることに
気がついた。

・＊。・　翌日　・。＊・

「久しぶり～」

相変わらずの姫乃ちゃん達は
浴衣を着ていた。

「・・・心花、
岬くんに告るの？」

こそっとそのまがささやき、
私は赤面する。

「まだ早くない？」

「そーだ、２人にはまだ
伝えていなかったけど・・・
沙音と岬が付き合い始めたの！」

そんな私たちの様子に気がつかず、
姫乃ちゃんがうれしそうに報告した。

「え!?」

私は衝撃を・・・
意外と受けなかった。

（・・・あれ？）

「心花、大丈夫？」

姫乃ちゃん達と別れた後、
そのまが心配そうにたずねた。

「なんか意外に
ショックじゃなかった」

「マジっ？」

「・・・でも、この恋は
して良かったとは思うけどね」

だって君と出会えたから
きっと、私は無気力症から
立ち直って

また未来へと進める。

＊ｅｎｄ＊