全世界スマホ消失事件

CAST有坂 心花有坂 心花

作者:MIKI

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2024.02.10

これは夢か現実か。





「・・・え?」





有坂コハナは声をもらす。





手の上のスマホが、消えた。





「昨日におきた、
スマホ消失事件では
世界中の人へ──」





テレビのアナウンサーを背に、
家を出る。





「おはよー。
コハナ、テレビ見た?」





親友の青山ヒメノが
とてつもなく沈んだ表情で問い、
コハナは大きく首を縦にふる。





「昨日のタ方に、
世界中全てのスマホが突如消滅。
同時にインターネットも
なぜか使用できなくなって
工場ではスマホが完成した瞬間、
これもまた消滅していく・・・」





「それで昨日の推しの配信
見れなかったんだよ~(泣)」





「あーね」





泣きつくヒメノをなだめつつ、
コハナは首をかしげた。





「にしても謎すぎる事件だよね・・・」





クラス中、昨日の事件で
もちきりだった。





そんな中、担任から
急きょ転校生が来るとあり、
さらに教室はさわがしくなった。





「黒澤リョウです」





「松尾ソノマです」





黒板の前に立つ
2人の顔面力の高さに
どよめきが広がる。





「よろしくお願いします」





コハナは、リョウから
やけに視線を感じる気がして
パチクリとまばたきした。





「久しぶり」





隣の席になったリョウは、
開口1番コハナに言った。





コハナは、
なんのことやらと
首をかしげる。





「・・・どっかで
会ったことあったっけ?」





少しいぶかしむような声に、
リョウはひどく驚き
傷ついた顔をした。





「昔、同じ新潮保育園で──」





「そうだったんだ!」





(まったく覚えてないけど)





なっとくして
うなずいたコハナに、





「・・・忘れた? 俺のこと」





リョウは青白い顔色で
おそるおそる聞く。





瞳に涙をため、すがるように
こちらを見つめる彼に、
コハナは忘れたとは
あまりにも言いにくく、
気づけばとってつけたように
笑みをうかべていた。





「そういえば!
さっきは分かんなかったけど
今思い出した!」





「だよね!」





少し早口で口走った言葉に、
リョウはパッと
輝かんばかりの笑顔になった。





「あのときの約束も覚えてるよな。
俺、それを果たすために
転校してきたんだ」





(・・・約束?)





「ゴメンな、俺がいないとき
つらいめにあわせて。
・・・でも、もう大丈夫だから」





「う、うん・・・」





よく分からないまま、
合づちを打つ。





「ソノマも、
コハナのために作ったんだ」





(・・・えっ?)





リョウの言葉に、
思わず動きを止める。





(作った?)





聞き返そうとしたとき、
先生から注意がとび、
会話は中断となった。













*・.*・.*・.*・.*・.*





2ヶ月たった。





定期テストが迫ってきたので、
いつメンで勉強会を開いた。





「分かんない・・・」





グダーと机にのびたヒメノに、





「それはね・・・」





新しくグループに入った
ソノマがつきそう。





「ソノマ頭良すぎ。
計算も超速いし」





うらやましげに言うヒメノは、
はぁとため息をついた。





「てか、最近マジ
推し不足なんですけど。
スマホとインターネットが
恋しいよお」





まだ、スマホ消失事件は
解決していない。





(そういえば)





コハナはふと、2ヶ月前の
リョウの言葉を思いだし、
口を開く。





「前にリョウが、ソノマを
作ったとか言ってたけど・・・
どういうことなんだろ。
約束のためらしいけど」





するとソノマはうなずき、
驚くべき発言をした。





「だって私、人工知能だもん。
リョウが作ってくれたのは
コハナを守るためだから」





予想ななめ上の返答に
思考が止まる。





ソノマは、ごく普通のことの
ように続ける。





「スマホが消滅したのは
私を作る材料にしたからだよ。
インターネットは今完全
私の支配下にあるから
使えないのだし」





「何言ってんの、
ジョーダン・・・」





「2年前。
コハナいじめにあって
不登校になってたでしょ?」





「えっ」





「・・・!」





驚いたヒメノを尻目に
コハナは息がつまった。





「・··なんでそれを」





ソノマの言っていることは
事実である。





2年前のいじめが原因で
わざわざ去年、
東京にまで引っ越してきた。





こっちでは誰にも
話してなかったはずだ。





「非公開アカウントで
ネットにグチってたよね。
今でも時々主犯の奴らから
うざいDMきてたんでしょ?
材料化した全世界のスマホの情報は
今、私の知識になってるの」





「・・・でも、おかしくない?」





半ばボーゼンとするコハナの横で
ヒメノが口を狭む。





「もし本当にソノマが人工知能だとして、
スマホを消滅させて材料にするとか
その情報を握ってるとか・・・
きいたことないよ」





「作ったのはリョウ。
でも、協力者がいる」





ソノマは淡々と答える。





コハナはヒメノの瞳が
いつもよりするどく見えて驚く。





「協力者?」





「それについては
ロックがかかっている」





「・・・そう」





静かにヒメノが答え、
何かをつぶやく。





次の瞬間、ソノマの両手首には
手錠がかかっていた。





「ヒメノ!?」





ヒメノは制服の胸ポケットから
手帳を取り出し、
ソノマにつきつけた。





「時空警察潜入第b班、
青山ヒメノ。
あなたにお話を聞かせてもらうために
連行します」





その言葉と共に、
ヒメノの頭上の空間がゆがむ。





そして2人、
そのゆがみの向こうに
消えていった─────。





何が何だか分からないまま、
気がつけばコハナは
いつもの帰り道を歩いていた。





「コハナ!
あれ、ソノマ達は?」





バッタリと遭遇したリョウに
たずねられ、
コハナはさっきのことを話した。





「そんな・・・
時空警察ってことは、未来人!?」





「リョウ!
協力者って誰!」





思わず荒い口調で問い詰めると
リョウはガックリとうつむいた。





「憶えてないんだ・・・
彼女がソノマの核をくれたのは
おぼえているけど───
顔だけもやがかかってる」





「なんで───
スマホを消したの?」





「コハナが、いじめにあったって、
まだそいつらのことで
困ってるって聞いて・・・
完成間近だったソノマに
核をうめこんだんだ」





(それだけで、
世界中のスマホを?)





コハナは
うつむくリョウに向き直り、
口を開く。





「・・・私、スマホが
消えたからってうれしくないし、
消してほしいとも思ってないよ。
もし、本当にスマホで
つらいと思うことがあれば
自分で対処する。
勝手に関係ない人をまきこむのは
よくないよ」





黙りこんだリョウは、
やっとの思いで顔を上げた。





「俺、コハナを守らなきゃと思って・・・
でも、必要なかったんだな」





コハナがうなずくと、
リョウはそっと目を伏せた。





「・・・そっか」





何かを自分に飲みこませようと
するような、
深く重たい声だった。













*・.*・.*・.*・.*・.*





翌日。
スマホが戻っていた。





「スマホ消失事件で消滅したスマホが
全世界で今朝突如再び現れ・・・」





テレビのアナウンサーを背に、
家を出る。





「コハナ」





家を出たすぐのところに、
リョウがいた。





手には、スマホ。





「俺、スマホ買ったんだ。
・・・ライン交換しない?」





昨日のことがあったからか、
少し気まずそうに言われ、
コハナも自らのスマホを
バッグから出す。





「あのさ」





「ん?」





不意にリョウが、
あらたまったように声をだした。





「俺、やっぱりコハナを
俺が守りたいんだ。
だから・・・俺で良ければ、
何かあれば相談とか力になりたい」





コハナがうなづくと、
リョウはほっとしたように
力を抜いた。





「ところで・・・
約束って何だったの?」





2人で歩きながら
コハナはふと問う。





「え?
おぼえてなかったの!?」





「ゴメン、嘘ついてた」





白伏すると、リョウは
少しショックをうけたように
頬が引きつったが、すぐに
気をとりなおしたように言った。





「俺が一生コハナを守る」





学校に着くと、皆のヒメノと
ソノマの記憶が消えていた。





――――でも。





───────────
 未来でまってます。
───────────





机の中に入っていた、
小さなメモ。





コハナはそっとほほ笑んだ。







*end*

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