涙と好きをボールにのせて。

CAST佐藤菜月海

作者：りこ

2023.11.02

ナツミ「えっ、彼氏!?」

アンジ「そう!!
できちゃったの、彼氏」

ナツミ「おめでと。アンジ！」

アンジ「ありがと。ってか、
ナツミはそーゆーのないの？」

ナツミ「あはは・・・。まぁね」

アンジ「そっか～。
ナツミ、せっかくモテるのに～」

ウチは佐藤ナツミ、
高校１年生。
初恋はまだ。

・・・・・っていうのは
全くのウソ。

ウチの初恋は２年前。
中２の時。

・＊。・　２年前　・。＊・

この日は、アンジと大ゲンカ。
ウチの方が絶対悪いのに、
意地はって、謝れなかった。

「アンジ、ウチのこと
嫌いになったかな・・・」

泣きながら歩いてた。

―トン、トン、トン、―

「ボールの音・・・？」

顔を上げたら、
ウチと同い年くらいの
１人の男の子が
公園のバスケットコートで
ボールをついてた。

男の子は１度
大きく深呼吸したら、
ゴールに向けて
ボールを放った。

ボールはきれいな弧を描き、
リングに当たることなく
ゴールに入る。

「ナイシュー!!」

思わず声が出た。

「え？」

男の子が振り返る。

「・・・好きなの？　バスケ」

ナツミ「え？　ま、まぁ・・・」

「じゃ、やろうぜ！」

ナツミ「え!?」

ホントはバスケなんて
体育でしかやったことないのに～！

でも男の子は
すごく手加減してくれて、
すごく楽しかった。

時間は
あっという間に過ぎて・・・。

ナツミ「そろそろ帰らなきゃ」

「そっか。
ごめんな、引きとめて」

「・・・でも、
涙止まって良かった」

ナツミ「え・・・？」

バスケに誘ってくれたのは
ウチが泣いてたから？

―ドキッ―

心臓が大きく鳴った。

「俺、バスケくらいしか
できることってないしさ」

ナツミ「ありがとう！
ホントにありがとうっ！」

その日、
ウチは恋を知ったんだ。

次の日、アンジにも
素直に謝れて
仲直りできた。

ナツミ「あの人に
お礼が言いたいな・・・」

そう思ったけど
あの人が公園に来ることはなかった。

アンジ「ナツミ？
どしたの、ボーっとして」

ナツミ「え？　別に」

アンジ「そう？
じゃっ、約束だからね。
日曜、１時にナツミの家集合！」

ナツミ「えっ!?」

―　日曜日　―

ウチとアンジは、
アンジの彼氏さんの
バスケの試合を見に来てた。

１人じゃ恥ずかしいって
アンジが言うから。

試合が始まる。

ナツミ「アンジ・・・、あの人って」

アンジ「あ～、１年唯一のスタメン、
北島岬くん。
ダイジ先輩（アンジの彼氏）が
あいつはすごい奴だって言ってた」

ナツミ「岬くん・・・っていうんだ」

あの日みたいに
心臓がうるさい。

アンジ「どうかしたの？
ナツミ」

ナツミ「ごめん。
ウチ、帰るっ」

アンジ「え!?　ナツミ？」

走って走って、
でも結局、岬くんと出会った
公園に来ちゃった。

「ウチ、何してんだろ・・・」

好きなのに。
逃げて来ちゃった。

「泣いちゃダメ」

泣きそうな気持をおさえて
転がっていたボールを
ゴールに投げる。

「・・・入った・・・」

岬「ナイシュー！」

ナツミ「え？」

後ろから聞こえる声は
岬君の声。

岬「好きだよ。ナツミちゃん」

ナツミ「え？　名前・・・」

岬「先輩に聞いた。
彼女の友達って」

ナツミ「ウチも友達に聞いた。
北島岬君」

岬「そっか」

ナツミ「・・・試合は勝ったの？」

岬「当たり前だろ？
勝たなきゃ気持ち、
伝えられないじゃん」

ナツミ「だね。
・・・でもどうせ
ウチから言ってたよ」

岬「え？」

ナツミ「岬君が好きだよ」

２年越しの初恋は、
こうして叶ったのでした。

☆ＥＮＤ☆

＊ニコ学名作リバイバル＊
この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。