初恋トライアングル
作者:あーたん
「ねえ、これって
恋なのかなぁ?」
学校に来て、
席に座ったとたん
親友のユラに言われた言葉に、
私は思わず黙ってしまった。
「へっ?」
「いや、昨日初めて
話した男子なんだけどさー。
すごく楽しくって。
私、恋しちゃったのかなって!」
「いやいや!
昨日、初めて話した
男子でしょう?
そんなすぐに、恋なんて・・・」
「もう、ミアンはまた
そうやって言う!
青春しようよ!
せ・い・し・ゅ・んっ!」
あっけにとられた。
私、川原ミアン。
中学3年生、吹奏楽部。
楽しく学校生活を
おくっている、
平凡な中学生です。
それにしても・・・
ユラは、本当に
「恋」とか「恋愛」が
好きなんだろうなって思う。
いまいち、そういうのは
分からない。
確かに、好きかも!
って思った男子は
いたことがあるし、
告白されたことも
あるけれど・・・
胸がキュンって
苦しくなって、
相手を思うだけで
涙が出るなんて、
経験したことがない。
中学3年生で
それって、
おかしいのかな?
「ミアンは、好きな人とか
いないの?」
ユラに聞かれて、
考え込んでしまう。
「うーん・・・」
「なんかさぁ、
ミアンって真面目じゃん?
そんな真剣に考えなくたって、
恋なんて遊びだしさ!」
「遊びって・・・」
「だから私、告白する」
「えっ!! 誰に!?」
爆弾発言に、
思わず声が大きくなる。
「昨日、話した人」
「ウソでしょ!」
「あっ来た! あの人!」
そう言って、
ユラが指差した方向を
見てみた。
そこにいたのは、
「ナツじゃん!」
声にでてしまった。
「えっ? 知り合い?」
「知り合いもなにも・・・
私の幼なじみだよ」
しばらく見ないうちに
背が伸びたみたい。
また一段と、
大人っぽくなっている。
隣にいるユラに
肩をつつかれた。
「ミアン。
一生のお願いだからさぁ。
ナツくんの恋愛事情を
探ってきてくれない?」
「えっ、そんな!」
「お願いします!」
真剣に頼まれたら、
断れない。
「じゃあ、学校帰りに
聞いてみるよ」
しぶしぶそう言った。
私はナツに、
一緒に帰る約束を取り付けて、
教室の席に座った。
なぜか、
心臓のドキドキが
収まらなくて、
自分でも不思議だった。
*・*・・・*・・・*・*
帰り学活が終わると、
みんながゾロゾロ教室を
出ていく。
それを見届けてから、
私はナツと、待ち合わせの
下駄箱に向かった。
すでにナツが
待っていた。
「ごっ、ごめん!」
「べつに」
返事がそっけないのは
ナツらしい。
昔から、全然
変わっていないじゃん。
「フフッ!」
私が笑うと、ナツは
不機嫌な顔をした。
「なんだよ?」
「べーつにっ! 帰ろ!」
私は笑いながら
ナツの手を引っ張って、
校門を出た。
しばらく無言で歩く。
話を切り出せなかった。
なんて言えばいいのか
わからなかったから。
「なぁ、話って何?」
無愛想に、
ナツがきいてきた。
「あぁ、えっとね。
うーんと、そのー」
「?」
「ナツってさ、好きな人とか
いるのかなって!」
早口で言った。
自分でも
よくわからないけど、
冷や汗が出てくる。
なんでだろ?
「えっ、なんで・・・」
「いや、私が
知りたくなっちゃって」
口がすべっても、
ユラに頼まれたからなんて、
言えるはずがない。
「いるよ」
「えっ?」
「だから、いるよ」
「そっ、そうなんだぁ」
必死に笑顔をつくる。
「でも、多分相手は、
俺の気持ちに
気がついていないと思う。
そいつは、恋とかに鈍感だから」
「なるほどね・・・」
「ずっと好きなのに、
俺は空回りしてばっかりで。
冷たい態度しかとれない。
今も、目の前にいるのに」
「そっかぁ・・・って、え!」
身体全身が、
熱くなるのを感じた。
「なっ、なにいってんの!
勘違いしちゃうから!
いつもの、冗談でしょ!」
「冗談じゃない。
俺、ずっと前から、
ミアンのことが好きなんだけど?」
信じられないし、
状況が理解できないよ・・・
それに、
ユラはどうなるの?
「返事は、今じゃなくていいから!」
ナツは、そう言い残すと
走って帰ってしまった。
私はしばらく、その場に
立ち尽くしていた。
*・*・・・*・・・*・*
次の日の朝、
クラスに入ると
ユラが駆け寄ってきた。
「ねえ、ミアン。
ナツくん、どうだった?」
「えっと・・・」
昨日のことを
思い出すのが恥ずかしくて、
黙ってしまう。
「どうしたの?」
顔を覗きこんでくるユラを
直視できない。
「なんでもないよ!
ナツ、好きな人いないって!」
口から出たのは、
嘘っぱちだった。
「なーんだ!
じゃあ、私も狙えそうだね。
今日、告白する!」
「頑張ってね!」
私は作り笑いでそう言うと、
席に座った。
ユラは正直、
誰が見ても認める
美少女だ。
スラッとしたスタイルに、
くりくりした大きな目。
白い肌。
小鹿みたいな、細い足。
本人は自慢しないけれど、
噂だとモデルに
スカウトされたことも
あるみたい。
そんな人に告白されたら、
みんな嬉しいんだろうな。
OKするんだろうな。
もしも私が男子だったら、
浮かれるはずだし。
私にはないパーツを
全部もっているユラが、
うらやましい。
きっと、ナツだって
OKするだろうな。
私のことを好きだって
言ってはくれたけど、
ユラに告白されたら、
私よりもユラを選ぶはず。
じゃあ、
私はナツとユラが
付き合ってるのを
間近で見るのかな?
恋愛相談にのって、
アドバイスしたり?
プレゼントを買うのに
付き合ってあげたり?
そんなの、無理だ。
ナツの隣にいるのが
他の女の子だったら、
私は嫉妬してしまう。
そっか、私。
ナツが好きなんだ。
気づかなかっただけだ。
そう思った瞬間、
ふと心が
軽くなった気がした。
ユラに打ち明ける
覚悟をして、
私は授業を受けた。
*・*・・・*・・・*・*
「ユラ!」
授業が終わると、
私はユラのもとに走った。
「ミアン?」
「あのね、話があるの」
「?」
不思議そうな
ユラを引っ張って、
廊下に連れ出した。
「私ね、
ナツのことがね、
すっ、す」
「好きなのね?」
さすがユラだ。
勘が鋭い。
「うん・・・」
どんな反応が
かえってくるか
こっそり顔色を伺うと。
ユラは、にらむ様子もなく
笑顔だった。
「やっぱりね」
「へっ!」
予想外の言葉に、
私は驚いてしまった。
「てってれーん!
種明かしをします!」
「??」
頭の中に
ハテナが浮かぶ。
「実は、私とナツくんは
もともと知り合いでした」
「そうだったの!?」
「うん。それで、
相談を受けたの。
ミアンのことが好きだけど、
相手が全然気づいてくれないって」
「じ、じゃあ、ユラが
ナツを好きっていうのは」
「うっそぴょんぴょん!」
聞いたこともない
セリフを言いながら、
ユラはぴょんぴょん
跳ねまくる。
「だいたい私が、ナツくんを
好きになるはずないじゃん!
ミアンしか見てない男をさ!」
「私しか、見てない?」
「そうだよ! いつも
うちのクラスの前を通るとき、
ミアンのことチラチラ見てて。
なのに、誰かさんは
全然気づかないし!」
「うっそ!!」
初めてきいた事実。
信じられない!
「ミアンは、
恋愛とか鈍いからさ。
ナツくんを意識させるのが
大変だったんだよ?」
「ごめんなさい・・・」
「大丈夫だから、
ナツくんに向き合ってあげて。
あ、そこにいるじゃん!」
「どこ?」
私の真後ろから、
ナツが出てきた。
「ナツ・・・」
「返事、今きかせて?」
「うん!
私、ナツのことが
大好きっ!」
「ありがとう! 俺も!」
久々にナツが
笑顔を見せてくれて、
胸がいっぱいになる。
ねえ神様。
今日から、
キラキラした日々が
始まりそうです。
☆END☆
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この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。
川原 美杏
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