カステラとキャンディー

CAST足川 結珠足川 結珠

作者:アロエジェル

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2022.04.01

(なんで土曜日なのに
塾なんて行かなきゃ
いけないの!)





不満が
爆発しそう。





隣にいるルワが
苦笑する。





「お前、
『なんで土曜日なのに
塾なんて行かなきゃ
いけないんだ』って
思ってるだろ。
顔に出し過ぎ。
教室でもそれだったら
先生に怒られるぞー。
第一、お前もうちょっと
真面目にやれよな。
馬鹿なんだから」





「ひどいっ!
でもさー、ルワだって
行くの嫌でしょ?
もし塾に行かなくても
いいんだったら
なんでもするのにーー!」





「じゃあ、
俺の彼女になってよ」





訳が分からず、
沈黙する。





5秒くらいして、
やっと言葉に出てくる。





「はぁ?」





自分でもまぬけな
声だなと思った。





「先生には俺がなんとか
言っとくから、
その代わりに
俺の彼女になってよ」





「なんでそうなるわけ?」





「今、『なんでもする』って
言ったろ」





「それはそうだけど、
なんでルワの彼女なの?
私とこうやって
一緒にいるから、
ルワも馬鹿に
なったんじゃない?」





「そうかもなー」





ルワは大きな声で笑う。





「お前、カステラ
みたいだな」





「は? やっぱり
頭おかしくなった?」





「カステラって、
ふわふわしてる
低脳なやつのことを
言うんだってさ」





「ほんっとひどい!」





と言いながら、
2人で笑い合った。





結局、塾には
ちゃんと行ってきた。





いつも通り、
ルワと一緒に
しゃべりながら
帰った。













*。・----。・----・。*





9月1日、
2学期の初日。





久しぶりに
友達と会うのを
楽しみにしていた私は、
勢いよく教室のドアを
開けて
「おはよーー!」
とみんなに言った。





友達とわいわい
おしゃべりして、
朝休み終了のチャイムが
鳴った。





急いで
自分の席につく。





しばらくして
号令をして、
退屈な先生の話が
始まる。





私の席は1番後ろだから、
ちゃんと話を聞いて
なくてもバレない。





なんの気もなしに
教室を見渡していたら、
あることに気がついた。





ルワがいない。





1限目が終わった後、
私はすぐさま
親友のルキに聞いた。





「ルワは?」





「あー、ルワなら
入院したって」





「入院・・・?」





「なんか体調
崩したんだって。
隣のクラスの子が
言ってた」





少し体調を崩したくらいで
入院なんてするはずがない。





きっと、
何かあったんだ・・・





私は心配で
たまらなくなった。





そこから先の授業は、
ほとんど頭に
入ってこなかった。





そして冬休みに
はいっても、
ルワはまだ
学校に来なかった。





3学期にはいったある日、
学校から帰ったら
お母さんが黒いスーツを
着ていた。





「何その格好?」





「あのね、ルワくんが
亡くなったんですって」





「・・・え?」





「今さっき
電話があったの。
今日お葬式開くんですって。
あなたも呼ばれているから
着替えなさい」





事態を飲み込めないまま、
私はお母さんが用意した
黒いワンピースを着て、
葬儀場に向かった。





お葬式が終わり、
ルワの家族が
話をしにきてくれた。





ルワは一昨年の春に
がんが発見された。





発見された頃には
もうあらゆる所に
広がっていて、
余命2年と
宣告された。





そしておとといの夕方、
亡くなったらしい。





ルワのお母さんが
言った。





「これ、ルワが
ユズちゃんにって」





そう言って、
私にひとつの
封筒を渡してくれた。





帰って封筒を
開けてみた。





中に手紙が入っていた。





『ユズへ

この手紙を読んでるってことは
もう知っていると思うけど、
実は俺、がんだったんだ。
今まで黙っててごめん。
ユズとは、今までどおり
冗談言い合って
笑い合う仲がよかった。
本当にごめん。
お前は病気なんかなるなよ。
いや、馬鹿だから大丈夫か。

今までありがとう。

       ルワより』





もう1つ、紙切れが
入っていた。





広げてみると、
そこには
こう書いてあった。





『カステラは
俺の1番好きな食べ物。
ユズは俺の1番好きな人。
だから、ユズはカステラ』





涙がどんどん溢れてきた。





そうだ。





あなたはキャンディー。
私が1番好きなお菓子。





ネットで
意味を調べてみる。





“あなたが好き”





ほら、ぴったりじゃん。





食べるたびに思い出す。





私はカステラ。
ルワはキャンディー。







*end*

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