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水辺の片想い ~すれ違いの春~

CAST星乃あんな星乃あんな

作者:りっちゃん

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2025.05.20

私、星乃あんな。
超普通の高校1年生・・・でした。





あの春の終わり頃、
あなたに会うまでは───







*・゜゜・*:・ 。・・・:*・・*:・
 。・ ・ 。・:*・゜゜・*





川沿いの風が、スカートのすそを
そっと揺らした。





青空が少しだけ
オレンジに染まりかけていた。





学校帰りの私は、
いつものように川沿いの道を
歩いていた。





家まで少し遠回りになるけど、
この静かな景色と、
少し冷たい風が心地よくて
好きだった。





そのとき。





前から歩いてくる男の子が、
ふと目に入った。





ゆっくり歩くその人は、
背が高くて、
くしゃっとした前髪が
風に揺れていた。





あんな「・・・え?」





すれ違いざま、
彼と目が合った。





透き通るような瞳。





一瞬で時間が止まった気がした。





彼も、私を見ていた。





けれど、次の瞬間には
すっと視線を逸らして、
またゆっくりと歩き出した。





まるで夢の中にいたような、
不思議な感覚だけが残る。





その日から、私は毎日、
同じ時間に
その川沿いを歩くようになった。





もしかしたら、
また彼に会えるかもしれない───





そんな淡い期待を胸に。











* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





そして、数日後。





また彼と、すれ違った。





だけど今度は───





彼の方から、
少しだけ微笑んだ。





私の心臓は、
ばくん、と跳ねた。





それだけで、
今日はすごく
特別な日になった。





数日ぶりの晴れ間。





私はまた、川沿いの
道を歩いていた。





少しだけ早く帰れた日だった。





風が気もちよくて、
空もきれいで、





なんだか
胸がそわそわしていた。





そんなとき───





?「あの・・・」





後ろから、声がした。





振り返ると、
あの彼が立っていた。





白いTシャツに、
風に揺れる黒髪。





あのときと同じ、
でも、今度は
話しかけてくれている。





?「いつも、
ここ歩いてるよね?」





あんな「・・・うん。
よく通る道で」





?「俺も。
なんか・・・気になってた」





視線が合ったまま、
笑った彼の顔は、
ほんの少し照れていた。





でもその笑顔が、
夕陽に照らされて
すごくきれいだった。





リョウスケ「俺、八神リョウスケ。
リョウスケでいいよ。
名前、教えてくれない?」





あんな「えっ・・・
あ、あんなっていいます」





リョウスケ「あんなちゃんか。
・・・いい名前」





名前を呼ばれただけで、
心臓が跳ね上がった。





なんでもない
会話のはずなのに、
こんなにドキドキするなんて。





リョウスケ「じゃあさ。
次は、すれ違うんじゃなくて───
一緒に歩いてもいい?」





そう言って、
彼が隣に並んでくる。





私がうなずくと、
自然と歩幅が合った。





並んで歩く足音が、
川のせせらぎと混ざって、





少しだけ世界が
やさしくなった気がした。





リョウスケ「じゃあね、また明日」





その日、彼と
川沿いを歩いた帰り道。





少し照れくさそうに
笑った彼が、
手をふったのが最後だった。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





翌日。





私は、いつもの時間に、
いつもの場所に行った。





だけど───
彼は来なかった。





あんな「たまたま・・・
用事があるのかも」





そう思って、
翌日も来た。





その次の日も。





さらにその次も。





でも、彼は
姿を見せなかった。





スマホも、SNSも、
なにも知らない。





連絡先も知らない。





知ってるのは、
あの川沿いでの笑顔と、
歩幅だけ。





来ない理由も、聞けない。





でも、なぜか
不安だけが
胸に広がっていった。





もしかして、





あんな「私がなにかしたのかな。
もう、会いたくなくなったのかな」





勝手に想像して、
勝手に傷ついて。





でも、どうすることも
できなかった。





川沿いの風は、
あの日と同じように
心地よかったけど、





隣に彼がいないだけで、
世界は少しだけ冷たかった。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





あれから、季節が一度、
変わった。





夕方の川沿いを歩くと、
あの日と同じ風が吹いていた。





でももう、彼は
現れないんだって、
心のどこかであきらめかけていた。





そんなときだった。





リョウスケ「・・・あんなちゃん?」





振り返ると、
息をのむほど懐かしい声。





そこには、前より少し痩せた
彼が立っていた。





髪も少し伸びて、
目の下には
うっすらと影。





あんな「・・・なんで・・・」





声が震えた。





問い詰めたい気もちと、
ただ会えた喜びが
ごちゃまぜになって、
涙が出そうだった。





リョウスケ「ごめん・・・
ほんとは、ずっと来たかった」





彼はゆっくり、
私の前まで歩いてきた。





リョウスケ「家族が急に
引っ越すことになって・・・
しかも、俺だけ
先に行くことになって・・・」





あんな「言えなかったの?」





「言いたかった。
・・・でも、名前と
“また明日”しか言ってないのに、
俺、どの立場で“さよなら”って
言えるんだよって・・・
怖かったんだ」





彼の声がかすれた。





苦しかったんだ。





言えなかったんじゃなくて、
言う勇気がなかったんだ。





リョウスケ「それに・・・また、
こうして会えるって信じてた」





彼が、ふっと笑った。





リョウスケ「今日ここに来たのは、
偶然じゃなくて───
ずっと、約束の場所だって
思ってたから」





その言葉だけで、
胸がいっぱいになった。





私の目に、
ぽろっと涙がこぼれた瞬間。





リョウスケ「泣かせたくなかったのに・・・」





そう言って、
彼がそっと私の頭を
抱き寄せた。





あんな「・・・もう、
来ないかと思ってた」





彼の腕の中でそうつぶやくと、





「俺もだよ」





って、彼が小さく返した。





しばらくそのまま、
夕方の川沿いに沈黙が流れた。





でも、その沈黙が
不思議とあたたかかった。





やがて彼が私の前に立ち、
しっかりと目を見つめて言った。





リョウスケ「あの日、
“また明日”って言ってから・・・
ずっと、言えなかったことがあるんだ」





私の心臓が、トクンと跳ねた。





「俺───
あんなのこと、好きだった。
いや、今もずっと・・・好きなんだ」





風が吹いた。





夕陽の光が
水面に反射して、
きらきらと揺れた。





リョウスケ「最初にすれ違った日から、
何かが違った。
ただ通り過ぎただけなのに、
心が止まってた。
また会えるかもって思って、
何度も歩いた。
本当は、“偶然”じゃなくて、
“会いたくて”だったんだ」





彼の声は震えていたけど、
まっすぐだった。





私は、言葉がうまく出なかった。





でも、自然とうなずいていた。





あんな「・・・私も、
ずっと・・・好きだった」





その瞬間、彼の表情が
やわらかくほころんだ。





そっと私の手を取って、
ぎゅっと握る。





リョウスケ「じゃあ、
もうすれ違わないよ。
今度は───隣、歩いてく?」





そう言って
差し出された手。





私は、迷わずに
その手を取った。





夕暮れの川沿いに、
ふたつの影が
並んで歩いていく。





あの日、すれ違っただけの恋は───





やっと、同じ未来に向かって
動き始めた。





*The END*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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