恋愛探偵の恋模様

CAST吉本麗南

作者：M

2024.09.20

わいわいとにぎやかな
男女の集団。

・・・と、遠目でそれを
じっと見つめる、
メガネの地味子・・私。

「吉本さんっ」

呼ばれて振り返ると、
そこには今回の依頼人、
星名ハルハ。

「・・・で、どう？
その・・・今井くん、
私のこと・・・」

「バッチリ。星名さんを
１日５回のペースで見つめてるし、
その時の視線もいつもより熱っぽい。
男子同士の会話でも
星名さんが好きってことを
匂わせるセリフがあった」

「本当!?　ありがとう！
これ、頼まれてたドーナツ」

メガネの曇りを拭きながら
調査結果を伝えると
彼女は飛んで喜び、
ずいっと、ドーナツの入った袋を
突きつけて走っていった。

ところで、自己紹介が遅れたが
私は、吉本麗南。

特技：人間観察

職業：学生＆・・・・・

恋愛探偵である。

「・・・噂の恋愛探偵様が
わからないはずがないよな？」

休み時間、教室にて
私に言い放ったのは、久野。

彼は、私に
想い人の気持ちを
調査するよう
依頼をしてきたところである。

ただ、肝心の想い人は誰かを
聞いたところの返事がこれだ。

（いや、さすがに
全校生徒の想い人を
把握してるわけがないでしょ）

だが、私とて
恋愛探偵としてのプライドがある。

そこまで言うなら
受けて立とうじゃないか。

「・・・わかった。
１週間後、調査成果を伝える」

「おう。報酬は・・・
そうだな、俺、
勉強は結構できるんだよね。
１日家庭教師ってことでどうだ？」

「交渉成立」

と、厄介そうな依頼を受け、
私は少し頭を冷やすために
廊下に出た。

「吉本さん！」

すると早速、
またも声をかけられた。

今度は、有坂心花。
クラス１のムードメーカー。

「うち、吉本さんに
依頼したいことがあって。
・・・実は最近、
久野くんのこと気になってて。
彼に好きな人がいるのか
調べて欲しいの」

「報酬は？」

「ええっと、
・・・ドーナツでいい？」

「もちろん」

ドーナツは、
大好物である。

有坂さんの依頼もあり、
とりあえず私は
久野を観察するところから始めた。

・・・すると、今まで
気がつかなかったことが
分かり始めたのだった。

（今で５回目・・・）

まず、やたらと
目が合うことに気がついた。

そして、その視線が、
今井くんが星名さんを
見つめる時の瞳に
・・・似ていること。

（・・・まさか）

・＊。・　１週間後図書館　・。＊・

今日は久野からの
報酬である、勉強会だ。

「ここはこうだから
こうして・・・」

意外なことに
とても丁寧で分かりやすい。

そして、もう１つ
予想外な出来事。

（なんで）

私の心臓が、さっきから
うるさいほど鳴っていることだ。

「・・・わかったか？」

そして、久野が
やたらとかっこよく見える。

直視できなくて
思わず目を逸らした。

私は、気をまぎらわせるために
口を開いた。

「・・・調査結果、だけど。
久野の好きな人は、・・・私」

久野の動きが止まった。

「その、依頼内容は
想い人の気持ちを
調べることだから、
その、私は」

なぜか口ごもった。

おかしい。

きっぱり、久野に
気はないって
伝えるつもりだったのに。

心臓が、また少し速くなった。

「吉本ってさ、人のことは
よく見てて、
めっちゃ色々知ってて・・・、
でも、自分のことは意外と
うとくて。
客観的に言わせてもらうと。
・・・吉本、俺に恋してるって
顔してる」

（恋・・・？
この気持ちが、恋？）

私は、口を開いた。

「私、こんな気持ち、
初めてで・・・
これが恋かはわかんないけど。
なんか、今、久野を見ると
心臓がドキドキして」

「それが恋だよ」

翌日、有坂さんに私は伝えた。

「・・・そっか。
久野くんと、
付き合うことに・・・」

「ごめん。でも、さ。
ほら、バレー部の先輩・・・
有坂さんに恋してるよ」

「えっ!?」

「今回は、特別に
報酬なしでいいよ。
ほら、そのドーナツ・・・
先輩と食べてきなよ」

恋愛探偵は
恋を繋ぎ、恋をして、
恋を芽生えさせていく・・・・

＊ｅｎｄ＊