アイスクリーム。
作者:♪恋々♪
「あー、今日からニコラ学園に
転入してきた白尾ルナさんだ」
「は、はじめまして。
アメリカから引っ越してきました、
白尾ルナです。
日本のことはあんまり分からないけど、
よろしくお願いします!」
緊張する・・・!
アメリカに住んでたときは
家でも日本語だったから
日本語はしゃべれるけど、
生まれてからずっとアメリカで
育ったからなぁ・・・
「よっ! 俺、
ルナの隣の席の黒澤リョウ!!
俺も小学校に入るまで
アメリカに住んでたんだぜっ。
よろしくな!」
リョウ・・・
──私はこの時、
君の名前を聞いたときから、
どこかなつかしい思いがあったんだ。
──・・・そして、
どこか君に惹かれていた。
** *** *** *** *** **
放課後―――――
「ルナ!
今日、帰りに直接行くからな!」
私に、太陽のような
笑顔を向けるリョウ。
「うん!!」
1日で、すっかり仲良くなった私たちは、
リョウの友達のリリカと
その彼氏のミサキくんの4人で
アイスクリームを食べに行くことになった。
こんなにも、些細なことで・・・
胸が高鳴って、
ドキドキしてしまう――・・・
・・・どうしよう。
今日1日で、
こんなにもリョウのことが
好きになっちゃった・・・
皆で歩いた、アイスクリーム屋さん
までの道のりですら
一瞬に感じてしまうくらい、
幸せな気分に包まれていた。
──・・・私には、
婚約者がいるというのに。
・・・・・・そうだよ、
私にはいるじゃないか。
幼い頃、約束した運命の相手が。
今はもう、これしか覚えてないけど、
“リョーくん”“ルーたん”と呼びあった。
私とお揃いの指輪をもった、
婚約者が──・・・
「・・・ルナ、どうした?
なんか元気ないよ?」
今日仲良くなったばかりだというのに、
私が元気が無いことに
気づいてくれたリリカ。
・・・ダメだな、私。
自分の都合で、
皆との時間を台無しにしちゃうような
態度をとるなんて。
「・・・ううん。
なんでもないよ。大丈夫」
無理矢理、笑顔を貼りつけ、
ネックレスになっている指輪を握りしめる。
「・・・ひょっとして、リョウのこと?
・・・リョウのこと、
好きになっちゃったんでしょ?」
幸いにも、リョウたちは
少し先を歩いていて、
こちらの会話は聞こえないみたい。
「・・・うん。でも・・・」
「でも、どうしたの?」
「でも、私には・・・」
“運命の相手を
捨てる覚悟なんてない”
それに、私は──・・・
白尾ルナじゃない。
ルナ・ルイーズだ。
「・・・アタシには、
ルナの気持ちは分からないけど、
諦めちゃダメだよ?
ダメもとでも、告白してみなよ!」
「・・・うん」
・・・そうだ。
何も今すぐ結婚するわけでも、
恋人同士な訳でもないんだから。
・・・明日、
告白してみようかな・・・?
「・・・明日、頑張ってみる」
「うん。頑張って!」
この日食べたアイスクリームは、
今までで、1番美味しく感じた。
** *** *** *** *** **
次の日─────
「リョウ、好きなの───。
私と、付き合って下さい・・・!」
勇気を振りしぼって、私は告白した。
ドキドキと高鳴る胸。
緊張する・・・!
「───・・・ごめん。
俺、好きな人が、
婚約者がいるんだ───。それでな」
・・・え・・・?
・・・うそ、でしょ・・・・・・?
「・・・そっか。
わかった、ごめんね。
変なこと言っちゃって。
これからは今まで通り
友達として接して・・・?
本当にごめんなさい・・・!」
「え!? ルナ・・・!?」
私は、とにかく、
この場から離れたくて。
昨日行ったアイスクリーム屋さんに
かけこんだ。
1人で食べるアイスクリームは、
冷たい現実を
思い知らされてるようだった───。
・・・やっぱり、現実は甘くない。
私も、婚約者がいるのに、
好きになっちゃったのは
間違ってたのかな──・・・?
私は、リョーくんを
裏切っちゃったのかな──?
「・・・ルナっ・・・!!」
突然、息を切らせて
入ってきたリョウ。
「リョ・・・ウ・・・?」
「まだ、ルナに
話してないことがあるんだ」
何・・・?
話してないことって・・・
「婚約者のことなんだけどさ。
俺が、アメリカにいたとき
ルナ・ルイーズって名前の女の子で。
俺は“ルーたん”って呼んでた。
これ、お互いに約束の印としてもってるんだ」
そういって取り出したのは、
ビロードの袋に入れられた、
私と同じ指輪──。
・・・うそ・・・!
リョーくんって、リョウ・・・?
「──・・・ルナ、
持ってるんだろ・・・? これ。
ルナ・ルイーズって、ルナだろ・・・?」
「・・・うん・・・!!」
リョウは、リョーくんは、
覚えててくれたんだ。
うれしくて、つい、
涙がぽろぽろとあふれ出す。
「「2人とも、おめでとー!!」」
とつじょ店に入ってきた、
リリカとミサキくん。
・・・もしかして。
「リリカ、私の本当の名前、
知ってたの・・・?」
「うん。チアでアメリカに
1回留学したことがあって。
ルナ、現地でも結構有名な家だったから」
・・・マジか・・・
「ルナ。
・・・いや、ルーたん」
「・・・何、リョーくん?」
「・・・俺と、付き合って下さい!」
「・・・っ! もちろん・・・!!」
私の手のなかで溶けてしまった
アイスクリームは
ハートの形に溶けていたとか、
いなかったとか。
☆END☆
この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。また、掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
白尾 留菜
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