いつか、ね。

CAST橘侑里

作者：ｗｗｗｗ

2025.11.23

わたし、ゆうり。
ニコラ学園２－４。

好きな人ができるって
幸せなんだなあって、
わたしいつも思うんだ。

わたしの好きな人は、
だいじくん。

あのやさしい雰囲気が
ほっとする。

でも、正直、だいじくんって
つかみどころのない人だ。

あまり話さないから、
タイプも謎。

いちか「あーあ。
控えめな性格が
裏目に出たね」

親友のいちかが
大して残念そうでもなく言う。

それは、だいじくんが
クラスメートの明るくてやさしい
まうみちゃんと
仲よさげに話しているから。

ゆうり「わたしも話しかけたいけど、
できないの」

いちか「なら、しょうがないね」

そう言って、
すたすたと歩いてく。

がーん。
冷たいんだから。

そこに腐れ縁で
なぜかクラスがずっといっしょの
なつがやってくる。

なつ「へー、
また失恋する流れ？」

ゆうり「うるさい！」

いちかもなつも、
バカにしてくる。

それは、わたしが
恋しても恋しても
毎回失恋しちゃうから。

またか、そうやって
冷たくしてくる。

ゆうり「もういいもん、
どうせ叶わないもんね」

はると「え、あ、ごめんて」

ゆうり「ふん」

わたしは、はるとを置いて
歩き出した。

あとからはるとの
慌てる声がした。

いちか「やっぱりゆうりって
鈍感だよね」

ゆうり「え？　何が」

いちか「ほら、わかんないんだ」

ちょっと意味ありげに
言ういちか。

何？

いちか「傷つけること言うけどさあ、
まうみちゃん、告るらしいね」

ゆうり「へ？　誰に」

いちか「決まってんじゃん」

がーん。

まあ、もう慣れてるから
大してショックでもないけど。

いちか「あのさ、
はるとのことどう思う？」

ゆうり「どうって？
面倒くさいやつだよ」

いちか「ふーん」

いちかは、いたずらっぽく笑った。

いちか「じゃあさ、はるとが
彼女つくったら？」

わたしはちょっと
フリーズした。

ゆうり「カ、カノジョ？」

いちか「なに戸惑ってんの」

愉快そうだ。

いちか「やっぱ、ショック？」

はるとが彼女つくったら、
どうなるんだろう。

どんな気もちになるんだろう。

ゆうり「わかんないよ」

いちか「そっか」

今日のいちか、
なんか考えてそう。

ちょっと嫌な予感だ。

いちかのウワサ話は
マジだった。

だって、この目で
見たんだもんね。

まうみ「だいじくん、つきあって」

だいじくん「うん。いいよ。
まうみのことが好きだ」

まうみ「うれしい」

まうみちゃんは
かわいい笑顔で笑った。

だいじくんがあんなに
しゃべるとは。

しかも、名前呼びとは。

ちょっとショックを受けながらも
大したダメージもない。

わたしはやれやれと思いながら
その場をあとにした。

はると「よっ」

よりにもよって
このタイミングか。

ゆうり「よう」

はると「失恋か」

ゆうり「よくわかったね」

わたしはため息をついた。

はると「お前、失恋してばっかじゃん。
それ、もうやめない？」

わたしは目を瞬いた。

ゆうり「やめるって。
どうやって」

はると「俺とつきあってほしい」

確かに、はるとのことを好きになれば、
もう失恋しなくていいのかもしれない。

でも、わたしは。

ゆうり「わたし、
恋をするのが楽しいんだ。
失恋しても。だから」

はるとは、ちょっと
泣きそうな顔になった。

それでも笑う。

はると「じゃあ、
俺と恋するのが楽しいって
思ってもらえるような人になる」

ドキン。

まっすぐさがかっこいい。

初めて思った。

ゆうり「わたしも、はるとに
もう一度告白してもらえるような人に
なりたい」

はると「楽しみにしてる」

ゆうり「いつか、ね」

はると「いつか、な」

はるとをふった。

はるとはフラれた。

でも気分は重くない。

＊ｅｎｄ＊