ツンデレくんとかまってちゃん
作者:メーダー@
あたし、中学2年生の
橘ユウリですっ!
あたしの恋のタイプは、
もちろんツンデレ!
猫タイプ。
今までお子ちゃまな男子しか
周りにいなくって、
やれやれと思ってたら!
この春のクラス替えで
見事タイプの男子と同じクラスに
なったというわけ。
絶対・この恋
成就させるからね!
「ミサキくんっ!
おーはーよ!」
ぴょんっと飛び跳ねて、
思い切りかわいく(見えるように)
ちょこんと首を傾げた。
彼・北島ミサキは
嫌そうに私を見ると、
何事もなかったように
週末課題のドリルを進めた。
「あのねっ、昨日ニコラショップでー、
国本先生見たんだけど。
それがなんとね、
小さな子どもを連れてて!
国本先生に似て、かわいかったあ~」
1人で話し続ける私を、
クラスのみんなは
やれやれというふうに見る。
ミサキくんは
超イケメン・ツンデレで
私のタイプど真ん中だけど、
そう思わない人の方が多い。
みんな冷たい人だと思って
彼を避ける。
彼は、1人ぼっちになった。
あたしはどうしても
ミサキくんと仲よくなりたくて、
頻繁に話しかけるようになった。
最初はみんないぶかしげに
見てたけど、そのうち
「やれやれ」って顔を
するようになった。
みんなにどんな目で見られようと、
タイプなんだから
しょうがないでしょっ!?
「だーかーらあ、
北島はやめろって」
親友の相沢イブキが
困ったように首を振った。
彼女は、口は悪いけど
超いい奴だ。
「ツンデレがタイプなんだよ!
顔も私のタイプ・ど真ん中」
「ユウリは、メンクイだね。
性格考えろよ」
性格だって、悪くはないと思う。
前、学校を休んだ時に
1日分のノートを
無言で差し出してきたときには
キュンとした。
「あれだけ反応ないんだよ。
脈ナシだぜそれは」
「うう、ひどいよぉ、イブキぃー」
イブキは、いたって辛辣だ。
まあ私もちょっと
思ってるけど。
「そのうち、あたしだけに
笑顔を見せてくれるのを
楽しみにしてるよ」
「期待しすぎ」
まあ、それはそうかもしれない。
でも、あんなイケメンと毎日
話せるなんて(一方的だけど)、
まじで恵まれたあー。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
「じゃあー、今から
学習発表会について
話し合いましょう」
あたしたちが通うニコラ中学校では
年に一度の学習発表会がある。
それぞれクラスで合唱やクイズ、
演劇などの出し物をするのだ。
「私はやっぱり演劇が
準備も楽しいし、
1番いいと思う!」
クラスメイトの
大月ミクが言った。
彼女は、きゃぴきゃぴ軍団
カースト1位って感じの子だ。
「ほう、どういう?」
「かわいい衣装が着れるやつが
いいでーす」
演劇かあ。
ミサキくんと仲よくなる
きっかけになったりするかな。
2人で同じ係をして、
距離が、、、、
なーんてねっ。
カースト上位の大月ミクが
発言すれば、
物事は必ずそっちの方へ
進んでいく。
それは、彼女が演劇の
案を出した時から
決まっていたことだ。
「私は、やっぱり役者がいいですっ。
儚げな主人公なんかがいい!
あっ、そうだヒナノも
一緒にやろーよー」
まず、役者じゃなくて
物語を決めるべきでは?
と思うものの、
カースト真ん中のあたしに
そんなことが言えるはずもなく。
「北島くん、
クラス紹介頼めるかな?」
彼の肩が、びくっと震えた。
クラス紹介は、発表が始まる前に
どのようなクラスなのか
説明するものだ。
ミサキくんは、嫌そうに
視線を泳がせた。
断る言葉を探している。
でも、ここで断ったら
絶対クラスの雰囲気が悪くなる。
もしかしたらミサキくんは
相方と、クラス紹介の内容を
決めるのが嫌なのかな。
もしそうだったら、
あたしがなれば、ちょっとは
安心してもらえるかな?
「じゃあ、あたし相方やります」
みんなが、えっと
驚いた顔をした。
「ほんとに、こいつとやるの?」
って、顔だ。
あたしは全然かまわない。
むしろハッピー、超ハッピー。
にっこり笑って
ミサキくんを見た。
彼は、露骨に嫌そうに
あたしを見た。
その目は、今までにないくらい
憎悪、怒りを含んでいた。
なんで?
そんな、怒るようなことした?
あたしは怖くなった。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
「なんであんなこと
言ったんだよ」
放課後、彼は低い声で言った。
「俺、やりたくなかったんだけど。
前からなんなの?
哀れみ? そんなのいらねーし。
これ以上構うなよ。
話したくねーんだよ」
話したくない。
そっか。
彼は、話すのが苦手なんだ。
なのに、あたしときたら、
みんなの前で話すような仕事を
強制させる方に持って行った。
「ごめん」
あたしの言葉は、1人きりの教室に
深く響いた。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
クラス紹介の言葉は
全部自分でつくった。
恐る恐るミサキくんに
話しかける。
「これ、見といて、、、、」
彼は、顔をあげた。
長い前髪で隠れていて
よく見えないけど、
彼が悲しそうにしてるのは
わかった。
なんで?
「、、、ごめん」
彼は、謝った。
なんで? なんで謝るの?
「俺、自分の声が嫌いなんだ。
それであんなひどいこと言って、
ごめん」
あたしは、大きく
首を横に振った。
「でも、橘さんは
嫌いな俺の声も全部、
認めてくれるんだと思う」
前髪で隠れたその瞳は
まっすぐにあたしをとらえる。
「橘さんだけなら、いいかな」
初めてあたしを見てくれた。
あたしならいいって
言ってくれた。
ツンデレだからじゃない。
イケメンだからじゃない。
あたしも、初めて
ほんとうの意味で
彼を好きになれた気がした。
*end*
※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
橘 侑里

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