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みんなの一生を生きる私は

CAST橘 侑里橘 侑里

作者:みいお委員長

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2025.12.08

人間じゃない。





それが私、ゆうりの最大の秘密。





いや、見た目は人間だけど、
寿命が人間じゃあない。





私は生きようと思えば
300年だって、1000年だって
生きられる。





愛する人といっしょに
死のうと思えば、死ねる。





でも、私は死なない。





この世界を生きるのが、
面白いから!





みんな、聞いて。





もしさ、自分が死んだ1年後に
ロボットが心を持つようになってたら、
どう思う?





ひひ孫が生まれたら、
どう思う?





長寿の薬が生まれてたら、
どう思う?





魔法が使えるようになってたら、
どう思う?





見てみたいでしょ。





経験したいでしょ。





これが、私の死ねない理由。





そもそも私には家族などいないし、
友達も、ましてや彼氏もいない。





死ぬ理由がないってわけ。





そんな私、ゆうりは
今日から学校に行ってみるんだ!





だって面白そうじゃん?





「初めまして。ゆうりです」





そう自己紹介をしながら、
なんで私には名前があるんだろうなんて
超平凡なことを考える。





だって、名前を覚えたって
みんないずれ死ぬんでしょ?
意味なくない?





休み時間になると、
クラスメイトの女子が
わっと集まってくる。





「あたし、山本いちか!
よろしく、ゆうりちゃん!」





「わたしの名前は、相沢いぶきです。
どこから来たんですか?」





「ゆうりって呼んでいい?
あ、私、野澤しおり!」





「ゆうりちゃん、かわいい~。
制服超似あってて
うらやましいんだけど!」





やってきては、すぐに名前を言う。





そんなの、覚える気なんてない。





だって、あなたたちは死ねば
人の名前も何も忘れるんじゃないの?













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





学校に通いだして、2週間。





私はすっかりクラスに
なじんでる。





男子は私のことを
顔を赤くして見てくるし、





女子は、とにかく
話しかけてくる。





人ってのは、本当に面白い。





でも、1人だけ私のことを
何とも思っていなさそうな人がいた。





名前は“安藤いるま”っていうらしい。





賢そうなやつだ。





ある日、当番がいっしょになった私は、
安藤いるまに言われた。





「お前さ、情がなさそう」





その言葉に、びくっとした。





「なんで、そう思うの?」





安藤いるまは、ちょっと考えた。





「なんとなく。
人間じゃない人みたいだなって」





人間じゃない人。





正直びっくりだ。





こいつは、勘がいい。





気をつけねば。





日がたつにつれ、私は人気になり、
安藤いるまはどんどん
私への警戒心を高めていた。





「明日、オレの誕生日なんだ。
生んでくれた母に感謝~」





たわいない話をふっかけてくる
安藤いるまに、
私は思わず言ってしまった。





「命ってすぐ消えるじゃん。
なんで人は、新しい生命を生み出すの?」





彼の動きが、ぴたりと止まった。





こちらを向く。





その顔は、やさしさを含んで
いなかった。





「お前ってさ」





やばい。





「やっぱり人間じゃないよね。
情がない。
生きるということを
わかってない気がする」





そして、予想外の言葉がきた。





「オレが、教えてやろっか?」





「善と悪は、裏表って言うだろ?
それと同じでさ、
生きることと死ぬことは裏表だ。
生きれば死ぬ。
死ねばまた生きる」





死ねばまた生きるってのは
転生ってことだろうか。





そう聞くと、いるまは
首を横に振った。





「違うよ。
オレが死んだら、
新しい誰かが生まれるから」





なるほど。





「死ぬからこそ、
人生って楽しいと思うんだよなあ。
人はいつか死ぬから、
その分、今を愛そうとする」





彼の人生についての見方は
美しかった。





「お前は、みんなの一生を
生きるんだろ?」





「うん。
私は、君が死んでも
その100憶年あとまで生きられる」





「それって、楽しいの?
大事な人がいなくなるんだよ」





それは、考えたことがあったけど。





「私には、大事な人がいないもん」





瞬間、彼の目が
私の顔をとらえた。





「1人も?」





「うん」





当たり前だ、と私はうなずいた。





いるまの表情が、みるみるしぼむ。





「オレは?」





「へ」





オレは? って?





「オレは、お前のこと大事だよ」





その言葉に、どくんっと
心臓が跳ねた。





いるまは、手を伸ばすと
私の胸を両手でつかむように触った。





「心臓、跳ねてる」





そう言って笑う。





その手は、私の胸を離さない。





「まだ大事な人だと思ってもらえないなら、
大事な人だって思ってもらう」





いるまはそう言うと、
立ち上がった。





私の頬が熱かった。





みんなの一生を生きる私は、





そのぶん世界を愛し、命を愛し、
人を愛す。







*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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