予測不能な恋
作者:氷雪気候
「ウソ!
学校に推しがいるなんて
夢みたいや~!」
誰かの黄色い叫び声があがった。
ヒヨリ「ん? どしたんやろ」
親友のヒヨリが
あたりを見回した。
わたしことユウリは、
「芸能人?」と聞き返す。
「ねえっ!」
誰かが駆け寄ってくる。
かんかんだ。
かんかん「ねえ、あの今大人気のー、
リヒトくんがいるのぅ!」
その言葉に、私とヒヨリは
顔を見合わせた。
ヒヨリ「え、カンナ、、、、
マジすか」
かんかん「マジっすよ!」
その横で、わたしは首を傾げた。
わたし「リヒトくんって、、、、誰」
ヒヨリ&かんかん「マジ!?
ユウリ、リヒトくん知らんの!?」
わたし「え、知らんよ」
2人は困ったように
首を横に振った。
カンナ「ちょーイケメンだから!
アタシ推しなんやよね!
ねえ、見に行こ! お願いやから!」
かんかんは、わたしたちの返事を
聞くこともなく、
強引に引っ張っていく。
その横で、ヒヨリは
「行きたい見たい!」
と、顔を輝かせている。
2人とも強め美人で、
雑誌に載っていてもおかしくないくらい
綺麗な顔立ちだ。
口を開かなければ
可憐な少女なのに、強引。
まあ、根はやさしくて
大好きだけども。
けれど、この強気な性格のせいで
男子から一切モテないのは
かわいそうな話だ。
かんかん「あれが、リヒトくん!」
遠くからかんかんが
指をさした。
良く見えない。
まあ、仕方ない。
リヒトくんとかいう人の周りには、
ものすごい人だかりができている。
かんかん「まさに、白貴公子って感じでね、
それはそれはかっこいいんよ!
アタシ存在アピールしてくっわ!
芸能人が彼氏とか、ヤバすぎやろ!」
見た目だけは可憐な強気少女には、
芸能人を彼氏にするとか言えるほどの
妄想力がある。
さすがのヒヨリも苦笑いしている。
ヒヨリ「んー、ユウリは
リヒトくん知らんのかー。
これやよ、これ」
そう言って、ヒヨリが
ケータイを差し出してくる。
わたし「って、ヒヨリ!
なんでケータイ持っとんの、
校則違反やんけ」
ヒヨリ「静かにし」
わたしは黙って
リヒトくんの画像を眺めた。
うむ、これは
超絶イケメンだな。
わたし「顔はタイプやけど
性格どうなんけ」
ヒヨリ「さっき、かんかん
言っとったやん、白貴公子やって。
性格も美人なんやな」
わたし「ふえー」
それは確かに
ちょっと気になる。
だけど、わたしは別に
かんかんみたいに根っからの
ファンなわけでもない。
余裕で200人を超えるであろう
ミーハーな女子生徒の中に
加わるつもりはない。
ヒヨリ「やっぱユウリは冷めてんね。
そこがいいところなんやけどね」
わたし「ああ、ありがと?
わたし、ほめられてんの」
どうでもいい会話をしながら、
ヒヨリと教室に戻った。
それから1か月間は
そのやかましさが
ましになることはなかった。
女子から男子まで、
同学年から先輩まで、
みんながリヒトくんの隣に
いたがったからだ。
おかげで学校はいつも
ライブ会場のようだった。
先生までもが
サインをくれとせがむ。
わたしは今までに
こんな光景は見たことがなかった。
同じ階にいるというのに、
わたしはリヒトくんを
見たことがない。
いつもたくさんの人で
埋め尽くされているせいで
見えないからだ。
1か月間もつきまとわれたら
あっちとしては迷惑だろうに、
リヒトくんは芸能人スマイルで
大変人当たりがよいらしい。
かんかんも
「今日かんかんって呼んでもらえた!」
と、興奮気味に騒いでいた。
わたしは陰キャって
わけじゃないけど、
人混みは好きじゃない。
いつも休み時間は
図書室にいるのが定番だった。
リヒトくんも本が好きなのか、
いつも図書室にやってくる。
しかも、その時
あいつの連れはいないのである。
驚いたことに。
どっかでまいてんのかなあ。
前にヒヨリが、
「芸能人ってファンをまく
訓練するらしい」
って、言ってたことがある。
まあ、うそに決まってるけど。
「おい」
これは例のあの人の声だ。
マジか、と思いながら
振り返る。、、、、
にしても、この人
白貴公子じゃなかったん?
呼びかけ、
「ねえ、君」とかじゃないんだ。
リヒト「その本、借りたいんだけど。
先週からずっと読んでるだろ」
明らかに不機嫌そうな顔に、
不機嫌そうな声。
え、何こいつ。
白貴公子じゃなかったんか、と
また同じことを思う。
口悪いし、全然
芸能スマイルじゃないし。
こういうやつには
絶対逆らうってのが
ユウリお決まりのルール。
ってことで、強く言い返す。
わたし「ここ、あなただけの
場所じゃないんで。
わたしにだって読む権利はある」
リヒト「だーかーらー、
ずっと読んでるから言ってんだ。
俺も読みたいの」
俺?
やっぱ予想と違う、、、、。
これ、ただの自分が偉いと
思いこんでるお坊ちゃまじゃないか。
呆れながらも
ちょっと冷静になって、
てか、これ自分が悪いじゃないかと
思い直す。
でも、やっぱり逆らわなければ
気が済まない。
こいつ、気に食わない。
「芸能人だからって
調子のんじゃねーよ」
思わず口が悪くなる。
リヒトの影響か。
リヒトは顔をちょっと
こわばらせた。
リヒト「女子のくせに
超口悪いじゃんかよ」
わたし「あ、ジェンダー差別」
わたしたちは、にらみ合った。
てか、何バカなことで
ケンカしてんだ。
わたし「はい、どうぞ」
ぱっと本を譲った。
ばかばかしい。
急にひいたわたしに
びっくりしたのか、
リヒトはしばらく止まっていた。
リヒト「、、、、うん、ありがとう」
大してありがとうと
思ってなさそうな顔で言う。
わたしは図書室をあとにした。
わたし「何あれえ!
マジで感じ悪かった!」
かんかん「絶対ウソ。
あの貴公子がそんなこと
するわけない!」
かんかんは、そう言い張って
聞いてくれない。
ヒヨリ「まあ、裏ありそうだよね」
かんかん「ヒヨリったら、ひどい!」
なんであんな傲慢芸能人が
この学校に来ちゃったんだよ!
よりにもよって
わたしの大事な図書室にっ!?
それからというもの、リヒトは
いろいろと絡んできた。
いつもみんなに
あの自然な笑顔を
振りまいている貴公子が、
わたしだけには冷たい。
いらつくことったらない。
わたし「もう、そんなにわたしが
気になんの!?」
リヒト「うん」
わたし「えっ、、、、照」
リヒト「俺に全く興味ないとこが
おもしろいなって。
絡んでみたらもっと
お前のこと知りたくなった」
そうやって、わたしと
リヒトはつきあった。
*end*
※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
橘 侑里

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