ネッ友！

CAST橘侑里

作者：フーイ

2025.10.22

私、橘ユウリには
最近ハマっているものがあるんだ。

それは、『ニコ・友！』っていう
アプリ。

知らない人と繋がるSNSのアプリ。

ニックネームで参加できて、
絶対に個人情報が
ばれることはないから、
安心して楽しめる。

私はそこで、顔も名前も
知らない友達と話をする。

私のニックネームは、
『ゆーり』。

私にはネット界の
大事なお友達がいるんだ。

その友達の名前は、ミサキ。

今日も私は
ミサキさんとお話をする。

ゆーり「ニコレンジャーの新刊、
発売されたの知ってる？」

ミサキ「まじ!?
それは知らないけど
アニメ化されるらしいよ」

ゆーり「えー、うれしすぎ！
あ、ところで今日
学校で嫌なことがあってさ・・・」

ミサキ「なんでも聞くよー」

彼女は、やさしい。
明るくて、朗らかな感じがする。

学校で嫌なことがあっても、
ニコ・友の世界に入れば
救われる。

私は今日も『ミサキ』さんと
趣味の話や、愚痴などに
花を咲かせるのだった。

＊．．．・・・＊．．．・・・＊

「それ、持つよ」

今日は、日直の日。

後ろから声が聞こえ、
振り返るとそこには
クラスメイトの、
名前は何だっけ・・・
北島くんがいる。

「え？」

「その書類。職員室まで
持ってくんだろ？」

「あ、うん。・・・ありがとう」

ぎこちなくお礼を言って、
彼に手伝ってもらう。

こういうとこ、
彼はすごくさわやかだ。

結構人気がある。

途中で書類の束を
落としそうになった時も、
彼はとっさに受け止めてくれた。

「橘さんは、真面目だね。
最近こういう仕事、
忘れちゃう人多いんだ」

彼は学級委員長だから、
やっていない人の仕事まで
しっかり成し遂げている。

そんなの、彼の仕事ではないのに。

責任を感じすぎているのではないか、
と思うときがある。

「それを全部、
北島くんがやってるんだよね。
それってよくない。
やらせるべきだと思う」

ストレートに意見を言うと、
彼は驚いたように目を見開いた後、
大声で笑った。

「へえ、しっかりしてるんだね。
自分の意見をしっかり言える人って、
尊敬するよ」

私はちょっと恥ずかしくなった。

彼のそばにいると落ち着くな、と
心なしか思う。

どこか聞いたことのある
口調だった。

ニコ・友を開くと、
ミサキからメッセージが
届いていた。

ミサキ「ちょっと好きな人できた。
ゆーりさんにはいるの？」

ゆーり「え、おめでと！
私は・・・クラスに
親切だなって思う男子がいて。
今日も日直の仕事、
手伝ってくれたんだ」

ミサキ「えー、めっちゃ奇遇。
俺も今日、日直の人、手伝ったんだよ。
その人、自分があってかっこよくてさ。
惹かれた」

ゆーり「？　お、俺？」

ミサキ「うん。・・・どうかした？」

ゆーり「ミサキのこと、
ずっと女子だと思ってた！」

ミサキ「あははは！」

ミサキが男子だったなんて、
びっくりだ。

文面を見ながら
奇遇だなあと思いつつ、
頭に浮かび上がった
１つの考えがある。

北島くんの下の名前って
なんだっけ？

あれ、ミサキ、だったような・・・
ってなると、北島くんは・・・？

ないない！

私はその考えを
自分で全否定することで、
気もちを落ち着かせた。

「あのさ、橘さん」

北島ミサキに話しかけられ、
私は後ろを向いた。

「ん？」

「えっと・・・」

北島くんは言いにくそうに
切り出した。

耳が赤い。

「ゆーりさんだよね。
ニコ・友の」

思考が追いつかない。

「えっと、まあ・・・」

「やば！　はっず！」

彼は、頭を抱えこんだ。

その反応で予想がついた。

私も真っ赤になる。

「うっそぉ・・・」

私たちはネッ友を卒業し、
リアルカレカノになったのであった。

＊ｅｎｄ＊