どっちを選ぶ？～友達 or 好きな人～

CAST橘侑里

作者：あかＲ

2025.10.19

私が好きになったのは、
隣のクラスの男子だった。

西ユアン。

過去に転びそうになったとき、
とっさに抱き寄せてくれた。

好きになったのは、そこから。

気がつけば、
目で追うようになっていた。

１か月後は、バレンタイン。

私、橘ユウリは
絶対に告白を成功させる！

私の「告白大作戦」に
かかわっているのは、
友達のリリカ、
同じく友達のテルノスケ。

２人とも小さい時から
ずっと一緒だ。

「最近どうなの、進展は？
２人っきりで話したりは？」

私以上にこの作戦にワクワクし、
ドキドキしているのは、リリカ。

テルノスケは苦笑して
リリカを諫（いさ）める。

「ユウリだって
口出しされたくはないだろ。
ユウリの恋なんだから」

「・・・でもぉ・・・」

がっかりしたような表情になる
リリカに、私は明るく声をかける。

「２人がいつも手伝ってくれて、
すごく助かってる」

とたんにリリカは、
満面の笑みになる。

コロコロ変わる表情、
かわいすぎか。
マイエンジェル。

「どんなお菓子にするとか、
もう決めたの？
買いチョコ？　手作り？
やっぱりベタなのは、手作りだよね！」

テルノスケは、冷静だ。

「おいおい。そんな、たいして
話したことないやつに
チョコなんか急にあげんの？
バレンタインに
『友達になってください～』とか
かわいく言えばよくね？」

「あの人モテるんだから、
早くしないと取られちゃうじゃん！
あ、そーだ、テルノスケは
ユウリが告白するの止めたいんでしょ」

「ち、ちげえよ！」

２人の掛け合いは
なんだか空気が和む。

ニコニコ笑って見ていると、
リリカにつつかれた。

「何ぼーっとしてんの。
ユウリのためだからね、
ユウリのため！」

私のためにここまでしてくれる
彼女たちは、確かに心強い。

私は、こくんとうなずいた。

「なんか最近、おかしいんだよ・・・
誰かに西くんと交際するのを
止められてる気がする」

「何それ！　絶対、気のせいだよ」

リリカは、カラカラと笑った。

でも、やっぱりおかしいのだ。

彼に話しかけようとすると、
必ず誰かが話しかけてきたり、
「係の仕事があるよ！」とか
言ってきたりする。

次第に私は、これは西くんのことが
好きな誰かが
仕向けているんじゃないかと
思うようになった。

ほとんど何も話せないまま、
バレンタインを迎えた。

だけど、今さら予定を
変えるなんてことはしない。

やるしかないのだ。

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

放課後になった。

私は西くんのクラスに行こうと
リュックを持ち上げた。

廊下に出る。

声が聞こえてきた。

「いいの？
とられちゃうじゃん！」

「でも、やっぱり
止められなくて・・・」

「もういいの？
あきらめんの!?」

「ユウリの心を尊重したい」

自分の名前が聞こえてきて、
私はその２人の姿を
しっかりととらえた。

声を聞いた時から、
わかってた。

リリカ。
テルノスケ。

「どういうこと？
ねえ、教えて」

私は、２人に詰め寄る。

２人は目線をおどおどさせる。

「え、えっと・・・委員会の話」

「うんうん。
ユウリには関係ない」

「全部、聞こえてたって」

２人はうなだれた。

「ごめんね。ユウリ。許して」

リリカが哀し気に言う。

「どうしたの？」

テルノスケが話し出した。

「ユウリが告白するの、
止めようとしてた。
あいつに、とられたくなくて」

リリカが続けた。

「ユウリ、鈍感だから・・・
ずっとテルノスケの気もちに
気づかなかったじゃん」

胸が痛い。

「俺、ユウリが好きなんだ」

真剣な顔で彼は言う。

「私・・・」

声がかすれる。

「やっぱりやめる。
今は、私を大事にしてくれる人たちと
一緒にいたい」

２人は、ぱっと顔を輝かせたんだ。

＊ｅｎｄ＊