猫と人間の恋はオーケー？

CAST橘侑里

作者：いちごーれ

2025.10.12

今、人間に化けている私、
ユーリの秘密は・・・

私は実は、猫だってこと。

私は、魔法の首輪をつけると、
人間に化けることができるんだ。

「ユーリ、一緒に映画、観ない？」

ニコニコしながら
リモコンを構えるのは、
私の飼い主・久野ナツ。

彼はクラスでは
かっこいい系のキャラらしい。

だけど、猫の私の前では
素直でいられるみたい。

「もちろんっ。
ナツ、何観たい？」

「じゃあ、最近人気の
動物の映画かなあ～」

うちは親が仕事で忙しくて、
いつもナツが寝てから帰ってくる。

私は、やさしいナツの両親が
親戚から引き取ったもの。

いつも１人で寂しいだろうから、
という理由で。

こんなことナツには
言えやしないけど・・・
私はナツが好き。

でも、そんなこと
言えるわけないじゃない？

だって猫だもん。

ピンポーン。

チャイムがなった。

ナツは私に
首輪をとるように言う。

クラスメートの女子を
家に入れていると思われると
面倒くさいからだ。

「ナツー！　今、ヒマ？」

ああ、またあの子かにゃん。

私はそんなことを思う。

「あの子」というのは
ナツの幼なじみの、
伊藤シャノンとかいう子だ。

いつも、わけもなく
うちに上がってきては、
私とナツの時間を邪魔する。

「え？　あ、ユーリと映画観てた」

シャノンは唯一
私の秘密を知る人だ。

彼女はかわいい。

まあ、認めてやろう、
悪い子じゃない。

だけど、私とシャノンは
恋のライバルだ。

シャノンは
ナツがだーいすきだって、
私にはわかる。

まあ、ナツは
気づいてないだろうけどにゃん。

「えー、私も観るっ！」

私たちは３人で映画を観た。

・＊。・　ナツside　・。＊・

一昨日、幼なじみのシャノンから
告られた。

「ずーっと好きで・・・
その、つきあってほしくて・・・」

大半の男子なら
迷わずＯＫと言ったはずだ。

シャノンはかわいい。明るい。
＝超モテる。

でも俺は、気がついたら
首を横に振っていた。

「ごめん、シャノン。俺・・・」

シャノンは傷ついて
顔をくしゃっとゆがめたあと、
ダッシュで走り出した。

「あーあ、ユーリ。
俺やっちゃったよ。
どうしよっかな・・・」

ソファでユーリの隣で愚痴る。

ちなみに、人間のユーリは
超かわいい。超美人。

自分的にはシャノンを上回る。

でも、猫に恋するなんて、
俺、おかしいのかなあ・・・

「シャノンはナツにとって
兄妹みたいな存在なんでしょ？
大切なことに変わりないじゃない」

凛としていて、キレイな声だ。

あー、俺やっぱユーリが好きだ。

・　・　・　・　・　・　・

シャノンがナツに告白して
フラれたらしい。

とりあえず、シャノンが
喜びそうな言葉を考え、
伝えてあげる。

「シャノンはがっかりするかもしれない。
でも、俺にとってシャノンは
１番大事な存在であることに
変わりはないよ。
シャノンは、永遠に俺の妹だから」

これは全部、私が考えたものである。

シャノンは気を取り直した。

そしてまた、いつも通り
私とナツの時間を
潰しにくるようになった。

「ねえ、ユーリ・・・」

ナツが切り出した。

これはお悩みを
相談するときの声だ。

彼はいつも私に悩みを相談する。

「猫が好きって、変かなあ・・・
恋愛的に好きって、変かなあ」

え？　私のことを、
好きってことだよね。

「ねーナ、ツ。
猫が人間を好きって、変かなあ。
恋愛的に好きって、変かなあ」

そう言うと、ナツは
私の大好きな笑顔になったんだ。

＊ｅｎｄ＊