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届け、この思い。

CAST橘 侑里橘 侑里

作者:Marry

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2026.07.10

「ニコラ病院前ー、
ニコラ病院前ー」





アナウンスがかかるとともに、
私は停車ボタンを押す。





そして、バスを降りて
目の前に立ちはだかるのは
「ニコラ病院」と書かれた
大きな病院。





はじめは大きすぎて
いつ見ても緊張していたけど、
もう慣れた。





慣れてしまうぐらいの期間
君は眠り続けている。
・・・私のせいで。





病院に入り、
エレベーターに乗る。





降りて通路に出ると
独特の消毒の匂いがする。





そして私はまっすぐ歩き、
ある病室の前で止まった。





「今井ハルト様」





扉をノックしても
相変わらず返事はない。





中に入り、ベッドへと向かう。
そして、横にあるパイプ椅子に座る。





私は、いつもここで
話しかけている。





ゆうり「ハルト!
今日は、ひまわり持って来たよ。
すっごくきれいに咲いてる。
ハルトの笑顔みたいに元気だよ」





そう言って、ミニテーブルの上に
ひまわりを置く。
そして、今日あったことを話す。





ゆうり「今日ね、数学の時間に先生が
冷房つけるぞーって言ったのに、
間違えて暖房つけてたんだよ!
どうりで暑いわけだよね・・・笑」





少しでも元気になってくれるように
明るい話をたくさんする。





でも、必ず最後にはこう言う。





ゆうり「・・・ごめんね、ハルト。
私のせいで・・・っ!」





言うたびに涙があふれそうになる。
私は必死にこらえる。





あふれてしまったら、悲しい気もちで
いっぱいになってしまうから。





そして私は
「おやすみ」と言って
病室をあとにする。





ハルト、ごめんね・・・













・*。・ ハルトside ・。*・





俺は今、眠り続けている。
どうして眠り続けているかというと。





俺とゆうりは、幼なじみ。





放課後、俺とゆうりは
本屋に行った。





そして、参考書を持って
レジに向かおうとした。
その時。





ひとりの男が
「動くな! 金を出せ!!」
と、怒鳴りこんできた。





すぐに逃げようとした。
・・・でも、遅かった。





男は、ゆうりを人質にとった。
俺は、とっさに助けに走った。





すると、目の前に現れたのは
ナイフ。





男は、俺をにらみつけながら
「動くなと言ったはずだ」
と言った。





本当は、ここで何もせずに
おとなしくしていた方が
よかったのかもしれない。





でも俺は、いてもたっても
いられなかった。





とにかくゆうりを
助けたかった。





俺は、かなうはずもない相手に
立ち向かった。





そして、ナイフが
心臓に向かって一直線。





他に腕や足にも傷をおった。





男はこんなことになると
思っていなかったらしく、
とっさに逃げて行った。





男が逃げて行き
ゆうりが助かったことに安心して
力が抜け、そして意識を失った。





最後にゆうりが
俺の名前を叫んでいるのが
聞こえた。





守れてよかった。
ゆうりの笑顔。





・・・でも、
本当に守れたのだろうか。





俺は動くこともできなければ、
目覚めることもできない。





『ごめんね』
だけど、毎日毎日
聞こえてくるこの声は
絶対にゆうりだと思う。





俺はゆうりを、ゆうりの笑顔を
守りたかった。





でも、本当はゆうりから
笑顔を奪ってしまった
だけなのかもしれない。





ゆうりのせいじゃない。
・・・その言葉は、
未だ届かないまま。













+.. +.. +.. +.. +





私は、今日も
ハルトの病室へと向かう。





そしていつものように扉を開け、
パイプ椅子に座り、話をした。





ゆうり「ハルト、あのね!
今度の合唱コンクール、
私たちのクラス
学年で最後に歌うんだって!
審査員の印象に残るから
がんばらないと!!」





いつものように明るい話をして、
最後にお決まりの言葉を言った。





ゆうり「・・・ごめんね、ハルト。
私のせいで・・・っ!」





そして、「おやすみ」と
言おうとしたその時。
ハルトの口が、動いた。





ハルト「・・・な」





かすかに聞こえたのは、
その言葉。





ゆうり「えっ・・・?
は、ハルト・・・?」





ハルト「ご・・・めん・・・
て・・・い・・・うな・・・」





ゆうり「・・・!」





ハルト「ゆ・・・う・・・の
せ・・・ない・・・」





最後の言葉は
聞き取れなかったけど、
きっと、こう言った。





「ゆうりのせいじゃない」





私は、涙が止まらなかった。





今まで我慢してきた涙が全部、
ほほをつたって
こぼれ落ちていく。





ゆうり「ハルト・・・・・・
ハルト・・・っ!!」





そして、ハルトは
何事もなかったかのように
眠りについた。





何事もなくなかったのは
その後だった。













+.. +.. +.. +.. +





ある日、1本の電話が
かかってきた。





母「はい、橘です。
あっ、ハルトくんのお母・・・
・・・えっ!? 分かりました!
今すぐ伝えます!!」





ハルトに何かあったの・・・!?
考えてはいけない最悪の事態が
頭をよぎった。





そして、お母さんは私に告げた。





ゆうり「・・・えっ!? うそ・・・!!」





母「本当よ!!
ゆうり、行ってきなさい・・・!」





ゆうり「行ってくる!!!」





私は言い終わらないまま
家を飛び出した。





私は必死に走った。
そして、バス停に着いた。





しかし、バスには
発車時刻というものが
あることを忘れていた。





ゆうり「えっと・・・
あと・・・10分もある・・・っ!」





乱れた息をととのえて
私は走り出した。





10分も待っていられない・・・!!





とにかく必死で走った。
病院まで自分の足で、必死に走った。





ゆうり「はぁっ・・・、はぁっ・・・、
っハルト・・・!!」





そして、やっと・・・





ゆうり「つっ、着いた・・・!!」





急いで病院に入り
エレベーターに乗って
病室へ向かった。





病室の前には、先生がいた。





息切れしたものすごい姿の
私を見て、先生は
「落ち着いて下さいね」
と、にっこり微笑んだ。





そして、
「どうぞ、お入り下さい」
と言い、去ってしまった。





扉が開けっぱなしになっていて、
私はノックもせず
ベッドへ向かった。





いつもは眠っていて
まぶたを閉じてじっとしている
ハルトの姿が目に入る。





でも、今日は違った。





まぶたはしっかりと開かれ、
私の大好きなあの笑顔で
こちらを見つめていた姿だった。





ハルト「ゆうり・・・!
来てくれてありがとな」





・・・何日ぶりだろう。
ハルトのやさしい声を聞くのは。





この間とは違い、
しっかりとした口調で、
私をしっかり見つめて
話してくれた。





ハルト「毎日見舞いありがとな!
今日、看護師さんが
ゆうりが持って来てくれた花
全部見せてくれてさ。
すっごいきれいだった!
ありがとな!」





私はハルトに抱きついた。





ハルト「ちょっ、ゆうり!?笑
急に何して」





ゆうり「ハルト・・・!!
よかった・・・っ!!
ずっとずっと、怖かった・・・
ハルトがいなくなっちゃうんじゃ
ないかって・・・」





ハルト「心配かけてごめんな。
もう、だいじょうぶだからな!」





そう言って
抱きしめてくれた。





ハルト「そうだ、
俺、毎日4文字だけ
聞こえてた言葉があって」





ゆうり「4文字だけ・・・?」





ハルト「うん、『ごめんね』って」





ゆうり「あっ・・・」





私が、毎日必ず言ってた言葉だ。
届いてたんだ、私の思い・・・





ゆうり「聞こえてたんだ・・・
ほんとにごめんね、ハルト」





ハルト「だから、
ゆうりのせいじゃないって!」





・・・ん?
今の言葉、どこかで・・・





ゆうり「あっ・・・!」





ハルト「どうした?」





ゆうり「私も聞いたよ、
ハルトの言葉!
『ゆうりのせいじゃない』って!
正しくは、
『ゆうのせない』だけどね!笑」





ハルト「そっか・・・!」





(届いてたんだ、俺の思い・・・)





ゆうり「あと、『ごめんって言うな』って」





ハルト「そっか! 届いてよかった!
俺の思い」





ゆうり「・・・うん、届いたよ。
ちゃんと!」





そして、もう一度
ハルトを抱きしめた。





すると、ハルトも
抱きしめてくれた。





ハルト「・・・あのさ」





ゆうり「何?」





ハルト「・・・ひとつ、あるんだけど・・・
届いてない思い」





ゆうり「えっ? 何?」





するとハルトは、耳まで
真っ赤にしてこう言った。





ハルト「・・・ゆうりが、好きだ」





ゆうり「・・・えっ?
えと・・・、えっ!?」





ハルト「ずっと好きだった。
小さい頃から」





ゆうり「わっ、私も、届いてないの、
1個ある!」





ハルト「・・・何?」





ゆうり「私も、ハルトが好きです!
大っ好きです!!」





ハルト「えっ!? え、ちょ、え!?」





ゆうり「驚きすぎ・・・! 照」





ハルト「じゃっ! じゃあ、
これからは幼なじみとして、
・・・彼氏として、よろしくな!」





ゆうり「はい・・・!」





私は最近、ずっと『ごめんね』
って思いを届けてきた。





でも、ほんとに
届けなきゃいけない思いは
そうじゃなかった。





『好き』って、思いだったんだ。





恐怖と不安に押しつぶされそうで、
気づかなかった。





ハルトがいなくなるのが
怖かったのは、





涙があふれて
止まらなかったのは、





『好き』だったからなんだ。





ハルトが、私を命がけで
守ってくれたその意味に。
私は今、やっと気づいた。





これからは
もっともっと届けよう。
『好き』って。





『大好き』だって。





最悪な事態を考えてしまったけど、
その真反対だった。





すごくすごく素敵な時間だった。













+.. +.. +.. +.. +





あれからハルトの体調は回復し、
無事に退院することができた。





そして、今日は
久しぶりにふたりで
学校へ行った。





その帰り道。





ハルト「楽しかったぁー!
すっごい久しぶりだったなーっ」





ハルトの笑顔が
また戻ってきて
すごくうれしい。





(ゆうりの笑顔を守れて、
よかった)





すると急に、





ハルト「ゆうり」





ハルトが真剣な眼差しで
私を見つめた。





ゆうり「なっ、何?」





ハルト「これからも、ずっと、
俺と一緒にいてくれるか?」





ゆうり「えっ・・・!?
それって・・・」





ハルト「そう、そのまんま」





プ、プロポーズ!?





私は恥ずかしかったけど、
すごくうれしかった。





そしてもちろん、
こう答えた。





ゆうり「はい!」





ハルト「よっしゃあーっ!!
約束な!」





ゆうり「うん!」





・・・実は、私もちょっと
思ってたんだよね!照





ゆうり「・・・私も、それ、思ってた!」





ハルト「まじで!? 同じだな!笑」





ゆうり「だねっ!笑」





未来の私たちに
この思いが届きますように。













+.. +.. +.. +.. +





神父「汝 今井ハルトは橘ゆうりを妻とし、
健やかなる時も 病める時も
富める時も 貧しき時も
死がふたりを分かつ時まで
愛し合うと誓いますか?」





ハルト、ゆうり「「誓います!」」





未来の私たちに
思いは届いたようです。







-END-

この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。また、掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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