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誠実な君

CAST橘 侑里橘 侑里

作者:いちごーれ

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2025.10.29

「責任をとる」





あの人はそう言った。





「今まで君を好きだった、
責任をとるんだ」





君はどこまでも誠実で、
どこまでもやさしい人だった。





「別れてほしい」





そう言われた時、
私、、、橘ユウリの顔は
真っ青だったと思う。





「、、、なんで?
もう、嫌いになっちゃった?」





私は本当に彼氏のイブキのことが
好きだったから





もう私を嫌いになってしまったのなら、
笑顔で別れるつもりだった。





「俺、今はサッカーで忙しくて。
なかなかユウリといっしょに
いられないから。
そんな彼氏、ユウリだって嫌だろ。
だから別れよう」





「わ、私、嫌じゃない!」





私は、思わず叫んだ。





イブキは困ったように笑った。





「ユウリ、わかってくれ」





その言葉には
彼の悲しみとか怒りとか、、、





私にはわからなかったけれど、
いろいろな感情が
こもっているかのように聞こえた。





「、、、ひどいよ」





彼の重荷には、なりたくない。





フラれてくれないヤバイやつだと
思われたいわけでもない。





でも、これはあんまりだ。
別れは急すぎた。





「ごめん。ほんとうにごめん。
でも、ちゃんと責任はとるから」





「責任って、、、」





何をするのか
わからなかったけれど、
イブキが私のことを
嫌っているわけじゃないことに
ほっとした。





「お誕生日おめでとう、橘さん」





彼はさも、友達かのように私に接し、
今日は大きな花束をわたしてきた。





「、、、何、これ」





「責任とるって言ったから」





「誠実だね」





「いいや。僕の罪を償ってる」





彼の罪。





私を悲しませたこと?





そんなの、
罪でもなんでもないのに。





「メリークリスマス、橘さん」





彼はクリスマスツリーが描かれた
小さなケーキを差し出してきた。





「、、、何、これ」





「責任とるって言ったから」





「誠実だね」





「いいや。
僕の罪を償ってる」





彼の罪。





私を悲しませたこと?





そんなの、
罪でもなんでもないのに。





「初詣行く?」





「、、、なんで?」





「責任とるって言ったから」





「誠実だね」





「いいや。
僕の罪を償ってる」





彼の罪。





私を悲しませたこと?





そんなの、
罪でもなんでもないのに。





別れると言っても、デートの頻度が減り
彼が少しよそよそしくなっただけの
ように思えた。





この時間が幸せでもあった。





私はまだ彼が好き。





彼は、どうなんだろう。





その次の年も、彼は
誕生日プレゼントをくれたし、
クリスマスプレゼントもくれたし、
いっしょに初詣にも行った。





それは幸せな時間だったけど。





やっぱり私は彼の重荷には
なりたくない。





「もう、責任とらなくていいよ。
イブキは私にそれだけのものをくれた」





イブキは顔をあげた。





そして、ふっと笑う。





「君もだ。
僕にたくさんのものをくれた。
本当にありがとう」





彼は、歩き出す。





私は目を細めて、その後姿を見送る。





彼が立ち止まった。





そして振り返った。





「、、、大好きだったよ、
ユウリ」





久しぶりに聞く彼の「ユウリ」。





「私もだよ」





過去形が寂しかった。







*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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