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瞳の中の空

CAST橘 侑里橘 侑里

作者:ごん

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2025.10.16

「・・・・えっ?」





学校の屋上への階段を上ってきた私は、
すっとんきょうな声をあげた。





いや、何してるのこの人。





・・・・普通、屋上で寝ないよね?





なぜなら、そこには
人が寝ていたからである。





クラスメイトの松瀬ダイジだろうと
思われる人物は、顔をあげた。





「・・・・橘さん」





私は、橘ユウリ。
ニコラ学園に通ってる。





「こんなとこで寝てるの?」





「空がよく見えるからね」





彼は、つかみどころのない人だ。





クラスでも、ひとり本を読んでいる。





でも冷たい雰囲気は一切なく、
「不思議ちゃん」
というのが正しいだろう。





「私も、ここ、好きなんだ。
心が洗われる感じがする」





「僕も同じ」





彼は、空を見上げる。
尊いものを見つめるみたいに。





私は、彼を見る。





私は、初めて知った。
彼の瞳が美しいこと。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





次の日も、
そのまた次の日も、
そのまたまた次の日も、
彼はいた。





彼はいつも、空の話をする。





私も空が好き。





不思議な繊細さを持つ彼に、
私は惹かれていった。





いつも、彼はいた。





また寝てる。





彼が何かをつぶやく。





寝言だろう。





「・・・・美空。美空」





みく、みく。
彼はつぶやく。





尊い者の名前を呼ぶみたいに。





みくさん。彼の友人?





恋人? 兄妹?





彼が目を覚ます。





「・・・・ああ、橘さん」





私は、微笑んだ。





「松瀬くん、誰かの名前を呼んでたね。
『みく、みく』って・・・・」





そう言いながら、
どこか切ないと思う自分がいる。





松瀬くんは、今まで見たことが
ないくらい哀しい顔をして
空を見た。





切ない瞳だ。





彼のブラウンの瞳に、
空が映る。





快晴の空。





「引っ越しして
遠くに行ってしまった幼なじみ。
最後、ケンカしたまま
引っ越してっちゃった」





私は、松瀬くんを見つめる。





「・・・・会いたいな」





代わりになりたいって思う。





なれたらって思う。





たぶん、松瀬くんは
好きだったんだ。





その、みくって人のこと。





「明るくて、はつらつで、
でもどこか繊細な人だった」





松瀬くんは、顔をこちらに向ける。





私を見て笑う。





でも、その瞳はきっと、
私を見てるんじゃない。





みくさんを見てるんだなって思う。





「橘さんって、美空に似てる。
空が好きなところとか、
繊細なところとか、明るいところとか」





私は、息を吸った。
言わなきゃだめだと思った。





「私、みくさんの代わりになりたい。
みくさんと松瀬くんが
また会えるその日まで」





松瀬くんは笑った。





その瞳は、
初めて私を見た。







*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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