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叶わない恋は、遠くて重い

CAST橘 侑里橘 侑里

作者:てんふ

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2025.10.10

叶わない恋をした。





誰のことも好きにならないあなたは





空に好きな人がいた。





空は遠いのに。





果てしなく遠いのに。





あなたに触れられるほど近い私の恋は、
遠くて重い。







私・・・橘ユウリが恋した相手は、
1つ上の先輩。





安藤イルマ。





彼は男女関係なく
接することができる人で、





いつも色々な男子に話しかけられ、
いつも違う女子を連れまわしている。





私は彼と、図書室で会った。





「君、いつもそこにいるよね。
本、好きなの?」





いつもなぜか図書室にやってきては
つるんでくる彼が、私には面倒だった。





「図書室ではお静かに」





ポーカーフェイスで注意するけど、
心の中では頬を染めていた。





彼はいつも10人ほどの女子を
巻いてくる。





しかし、どうしても
彼から離れない人がいた。





クラスメイト。
松田ミユウ。





彼女は図書室に来る
タイプなんかじゃない、
根っからのギャル。





だけど、彼女は安藤先輩が大好き。





だからついてくるけど、
ニコラ学園の図書室は広い。





結局巻かれてしまう。





「先輩って、いつもなんで
何人もの女子とつるんでるんですか。
誰か1人にしてとか、
言われないんですか」





彼は私の問いかけに、
笑って答えた。





「みんな友達だからね。
でも、みんなは僕のことが好き。
でも、僕は誰のことも好きにならない」





その通りだ。





みんな、先輩のことが好き。





先輩だって、そのことはわかっている。





それでもいっしょにいるのだ。





さも、ただの友達みたいに。





「先輩って、忘れられない人が
いますよね」





「・・・?
いないよ、そんなの」





この笑顔が取りつくろった笑みだって、
私はわかる。





「先輩って、ときどき空を見上げて
切ない顔をする。
誰のこと、想ってるんですか」





先輩は答えない。





いつも通りの穏やかな笑顔を
張りつけて。





「私のこと、好きなんかじゃないのに、
そんな顔しないでください。
なんで、先輩って・・・」





私は泣いていた。





「そんなに、笑顔なんですか」





それから1週間、
私は図書室には行かなかった。





「なんか、気に食わないんだよね」





私の隣で腕を組むのは、
松田先輩。





「うち、前から気づいてたよ。
イルマには忘れられない誰かがいるって。
でも、あんたはたぶん2番目なんだ。
誰も1番にはなれないのは知ってたから、
私は2番目になりたかった。
でも、なれない」





私は、黙っていた。





「私はうそみたいなイルマの笑顔、
好きじゃない。
心から笑顔でいさせてよ、
イルマのこと」





「あいつを、助けてよ」





私は松田先輩に
哀しい笑顔を向けた。





そして、図書室に入っていった。





「安藤先輩」





いつも私たちが話す場所。





安藤先輩は単行本を読んでいた。





「あれから毎日、ここで待ってたのに。
君は来ないから」





彼は顔を上げた。





その顔に、うそくさい笑顔なんてなかった。
仏頂面だった。





「俺、忘れられない人がいて」





1人称は「俺」。





これは、素の彼なのだろう。





「幼なじみ。
でも、逝っちゃった・・・
好きだったのに、あんなに」





私は、黙ってうなずく。





「君を見たとき、
彼女にそっくりだって、思った。
それでなんとなく、彼女と重ね合わせて」





安藤先輩は笑った。





うそくさくない笑顔。
哀しい哀しい笑顔。





「いくら叶わない恋でも、
忘れられない恋なんだ。
俺はたぶん、一生忘れない」





叶わない恋は、遠くて重い。







*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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