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愛は恋より出でて恋より尊し

CAST工藤 唯愛工藤 唯愛

作者:ライラック

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2026.03.09

「愛だの恋だのくだらない」





私は、校庭のベンチで
いちゃつくカップルを見ながら
吐き捨てた。





「なによ、いきなり」





隣でヒヨリが笑った。





私は、ユア。
青春まっただ中のFJK。





今日も、昼休みは
親友のヒヨリとごはんを
食べている。





「恋しなくても
生きていけるもん」





私は、手作りのお弁当を
ほおばった。





「恋がない人生なんて
つまらないでしょ」





ヒヨリは、紙パックの
アップルジュースを飲みながら言った。





ヒヨリにはちゃんと彼氏がいるが、
昼ごはんは私につきあわせている。





「出たよ、ヒヨリの恋愛至上主義」





私は、ため息をついた。





「ユアも彼氏作れば?」





「いや、別にいらないし。
なんかめんどくさい」





「好きな人はいないの?」





「その好きって言うのが
よく分からないのよね」





「別に、ツナのサンドイッチが好きと
意味変わらないわよ」





ヒヨリが好物のツナサンドイッチを
ほおばりながら言った。





「そんなジャンクな恋愛は
したくないの。
私がしたいのは、もっと尊いものよ」





「そもそも、いきなり愛とか無理よ。
恋から始めて、恋が愛に変わるのを
待つことね」





ヒヨリは、のん気に言った。





「いつ恋は、愛に変わるの?」





「この人のためなら
死んでもいいって
思えたらじゃないかしら」





「それ、いつの話?」





「10年後とか?」





「待てない」





私は、ため息をついた。





恋愛ってめんどくさい。





少なくとも、楽しくはない。





つきあったら
色々求められるし、





恋が愛に変わる前に
心身ともに疲弊するのが
目に見えている。





でも、私の中で
愛を求めるような衝動はある。





それが本当は何を
求めているのか
分からないままに。





校庭には、夏の大会が近い野球部が
昼休みにもかかわらず
練習をしていた。





「何かに打ちこめる人って
強いよね」





私はまた、ため息をついた。





勉強でも、部活でも
恋愛でも、なんでもいい。





私にも夢中になれる
何かがあればいいのに。





それだけを見て
まっしぐらに走り出せる
何かがあれば。





「アイドルって
恋愛禁止の人もいるじゃん?」





ヒヨリが言った。





「そうだね」





「あれって、アイドル活動に
熱中できてる人は
恋愛なんかしないと思うわよ。
その人には、それ以外のすべてを
捨ててでも夢中になって
走り出せるものがあるから」





ヒヨリは、空を見上げながら言った。





今日も良い天気だ。





そこそこ勉強はできるし、





そこそこの大学を出て、





そこそこの会社に入り、





そこそこの人と
そこそこの恋愛をして、





結婚して子どもを
育てながら年をとる。





悪くない人生だ。





それはそう、
確かにそうなんだけれど。





「本当にそれでいいのかなぁ」





私はもう、何度目か分からない
ため息をついた。





「なんとなく
毎日が過ぎちゃうんでしょ」





ヒヨリは
私の顔をのぞきこんだ。





「本当に、それ」





「そんな単調な毎日に
スパイスを与えてくれるのが、恋愛よ」





「別に日々に刺激を
求めてるわけじゃないのよね」





私が求めているのは、
もっと絶対的な何か。





他を寄せつけぬ、
圧倒的で支配的な存在。





言うなれば
永遠、宇宙、神のような。





「人間って、みんな
不完全じゃない?」





ヒヨリが言った。





「そうだね」





「だから、その不完全さを補うために
他者を求め合う、と
私は思ってるんだけど」





「それなら私には
ヒヨリがいるから充分」





私は、ヒヨリを抱きしめた。





「そう言ってくれるのはうれしいけど、
私には与えられない何かを
今のユアは求めているんじゃないの?」





そう言いながら
ヒヨリも私を抱きしめてくれた。





分からない。





自分でも、分からない。





貧困や紛争や疫病に
苦しむ人もいる世界で、
平和な国に生まれ、
友達にも恵まれて、





これ以上
何を私は求めてるんだろう。





私は、贅沢なんだろうか。





私の中には常に
「渇き」がある。





何を欲してるか自分でも
分からないままに、
周囲をなぎ倒して
突き進みたくなるような衝動が。





その先に何が待ち構えているかなんて
知る由もないのに。





でも、内なる「渇き」はあるのに、
それを外に表現する手段が、
私には、ない。













・*。・ 1週間後 ・。*・





クラスメイトのダイジ君が
私に告白してきた。





好きって言われて
うれしくないことはない。





でも、違う。
私が求めているものとは。





そう感じた私は
断ってしまった。





「断ったのね」





昼休み、ヒヨリは
今日もツナサンドイッチを
食べていた。





「うん」





「ダイジ君、イケメンだけどね」





「イケメンとか、興味ないの。
容姿なんて年齢とともに
必ず変化するじゃん。
私はそんな一瞬の幻みたいなものに
惑わされたくないの」





私は口をとがらせた。





「好きって
言ってくれたんでしょ?」





「男子高校生の言う『好き』なんて
軽すぎるでしょ。
明日にはまた別の女に
興味を持ってるわよ」





私は、ぐったりとうなだれた。





「ユアは一体
何を求めてるのよ?」





「絶対的で、永久不滅の何か。
この世のすべてを司る定理みたいな」





私は、ぼんやりと言った。





「その対極のものなら」





「一瞬の快楽みたいな?」





「違う。気もち。
心に横たわるような。
私はたぶん10年後に
自分の赤ちゃんをあやしながら、
ふとした瞬間に思い出すのよ。
『あぁあの時に、こんな気もちになったな。
あの人は元気にしてるかな』って」





「それで?」





「そういうやさしい
気もちの積み重ねが
将来の自分を支えてくれるのよ」





「ふーん」





「私の気もちのすべては
私が死んだら消えるから
永久不滅とは、真反対だけどね。
でも、儚いからこそ
なお愛しくなるものなのよ」





ヒヨリはやさしく
微笑んで言った。





私はすっと立ち上がり、
校舎へと向かった。





「どこ行くの?」





「ダイジ君とやっぱり
つきあってみようかなって。
ダメならダメで、その時に考える」





私は、駆け出した。





がんばれ、
ヒヨリがそう言った声が
聞こえたような気がした。





*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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