nicola

キーワード検索

百発百中ラブレター

CAST工藤 唯愛工藤 唯愛

作者:とも

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2025.09.02

「このペンでラブレターを書くと
百発百中で、告白が成功します」





私の目の前のスーツを着た男が
真っ赤な万年筆を、私に差し出した。





私はユア、
高校1年生。





今日は登校中に
怪しい男に
近くにトイレはないかと
声をかけられ、
公園まで案内した。





男は夏なのに
真っ黒なスーツを着て、
絶望的に似合わない
カラフルな色の
ネクタイをしていた。





私は、これ以上は
関わりたくなくて、
立ち去ろうとした
その時だった。





「ありがとう!
異世界の地で
こんなに人に親切にして
もらえるなんて!
これは、ささやかなお礼です」





男はわけのわからないことを
口走り、カバンから
取り出した万年筆を
私に押しつけたのだ。





私に万年筆を渡すと
男はトイレに
入ってしまったので、
返すヒマもなく、





私は仕方なく
万年筆をポケットに入れて
学校に向かった。





「告白が絶対成功するって
本当かな~」





私は、学校の休み時間に
万年筆をジロジロと見た。





色は派手だが、
それ以外は
普通の万年筆に見える。





「なにそれ?
万年筆なんて持ってたの?」





クラスメイトで、親友の
ヒマリが私に声をかけた。





「これでラブレターを書くと
告白が成功するんだって」





「おもしろそうじゃん。
ためしに書いてみようよ」





「あれ?
何も書けない」





私はノートに
何か書いてみようと
思ったがダメだった。





「インクを入れないと
ダメなんじゃない?」





「インクなんて
持ってないなぁ」





なんだ、がっかり。





ちょっとでも
夢みたいな話に期待した
自分がバカだった。





私はクラスメイトのミサキに
恋していて、
なんとか告白を
成功させたいと思っていたのに。





私は、それからしばらく
万年筆のことは筆箱に入れたまま
忘れていた。





それでも私の
ミサキへの恋心は
どんどん大きくなっていった。





ミサキは勉強も
スポーツもできるし、
何より人にやさしい。





顔もカッコいいので
当然モテるし、





私は、自分が彼女に
選んでもらえる自信がなかった。





ずっと片思いをしてるのが
しんどくなってきていて、
最近は、少し心境に
変化がでてきた。





ミサキの幸せを1番に願おう、
と思った。





自分が選ばれなくても、
ミサキが幸せになれるなら
ちゃんと祝福しよう、
そう思った。





「あ、ミサキくん」





ある雨の日、私は下駄箱で
ミサキを見つけた。





「どうしたの?」





私はドキドキしながら
話しかけた。





「傘がなくてさ」





ミサキは、困ったように
笑った。





「じゃあ、私の傘に
入りますか?」





「いいの? 助かる!」





私はミサキと
学校の最寄り駅まで
一緒に帰った。





5分くらいの道のりだけど
私はとても幸せだった。





その日は、何気ない話をして
別れた。





ミサキは何度も
お礼を言ってくれた。





家に帰ってから、私は
思い切ってラブレターを
書くことにした。





どんな結果になっても、
私は自分の気もちを
ちゃんと伝えようと思った。





思いをこめてラブレターを
書き終えた私は
ふと気がついた。





あの、赤い万年筆で
ラブレターを書いていたのだ。





インクを入れた
覚えはない。





どうして
書けたんだろう。





次の日、
完成したラブレターを
私はミサキに渡した。





「ユアの気もちがうれしい。
人に親切なユアのことが
大好きだ。つきあおう!」





ミサキは、白い歯を
見せて笑った。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





それからしばらく経ったある日、
私は登校中に
あの万年筆をくれた
黒いスーツの男を見かけた。





「こんにちは」





私は、近づいて声をかけた。





「あら、お久しぶり。
あの時は、ありがとうございました。
申し遅れましたが
私の名前は、イルマです」





男は、ニッコリと微笑んだ。





「もらった万年筆で
ラブレターを書いたら
本当に告白が成功しました、
今めっちゃ幸せです」





「それは、あなたに
魅力があるからです。
万年筆のおかげではありません」





「でも・・・」





「私は、地球とは別の世界から
来たんですが、
あの万年筆は、私の世界で
発明されたものです。
両思いになれば
特殊な波動が出るので
それを感知して
インクが満たされます。
片思いの時は、そもそも
インクがなくて書けないので
あの万年筆で書いたラブレターは
百発百中で、告白が成功するというわけです」





*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

Like

この物語に投票する

工藤 唯愛が主人公の物語が主人公の物語

NEWS!NEWS!

nicola TVnicola TV

物語募集

「ニコラ学園恋物語」では、ニコ読の
みんなが書いたニコモを主人公にした
オリジナルラブストーリーを大募集中!

応募する

主人公別 BACK NUMBER主人公別 BACK NUMBER

  • nicola TV
  • 新二コラ恋物語 恋愛小説を大募集!