ねぇ、雪だよ。

CAST工藤 唯愛工藤 唯愛

作者:まつおゆうは

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2024.12.23

ねぇ・・・
窓の外はね・・・
雪が降ってるよ。





あなたがずっと
見たがっていた雪が。





ねぇ、目を覚ましてよ。









*。。・*。。・*。。・*。。・*。。・*。





申しおくれました、
私は中3の工藤ユア。





私には、
幼馴染みがいます。





ユア「ユーウナ! おはよっ」





リョウ「おはよ。
あいかわらずユアは
元気だなw」





黒澤リョウ。





物心ついたときから
彼は私の傍にいた。





気が弱くて
大人しい私を、





リョウはいつだって
助けてくれた。





私にとって、リョウは
キラキラしたヒーロー。





どんなスーパースター
だって、





リョウになんか
勝てっこしないの。





毎朝毎朝、こうやって
『おはよ』って、言い合って。





目が合えば、ほほえんで。





私は、彼のえくぼを見るのが
好きなの。





リョウが笑ってると、
幸せな気分になれるから。





そんな日常が、
毎日変わらずに続いて、





そうして私たちは
ずっとあたたかい時間を
すごすんだって、
あたりまえのように思っていた。





あの時までは・・・















*。。・*。。・*。。・*。。・*。。・*。





今でもはっきり
おぼえてるよ。





12月23日。





リョウは私に





『ユアの作ったお菓子が
クリスマスに欲しい』
って、ねだったよね。





寒いけどまだ
雪のふっていない、
澄んだ空気の帰りみち。





私は、うしろから猛スピードで
走ってくる車のことなんて
まったく気づいてなかった。





リョウ「ユア! 危ない!」





ユア「え?」





・・・ガッシャーン!





その瞬間、轟音とともに、
私の視界からリョウが消えた。





リョウは、数m先にいた。





私を守って、傷だらけで。





ユア「・・・リョウゥゥゥゥゥ!!!」





私は泣きさけんだ。





そうするほかなかった。





こんなときまで、
ヒーローになってくれなくたって
いいのに。





リョウがいるから、
私は幸せなのに。





リョウが
いなくなるくらいなら、





私がこの世界から消えたい。





リョウ・・・





なんで、あなたは
こんなときまで
私のことを・・・





あのとき私は、寒空の下で
心をぽっかりと失くした。















*。。・*。。・*。。・*。。・*。。・*。





あのあと、病院で
必死の救命がおこなわれ、





リョウは一命を
取りとめた。





でも今は、
話しかけても
なにも言わない。





なにも食べない。
すこしも動かない。





私のことも、
おぼえていない。





お医者さんによると、
『ほぼ植物状態』との
ことだった。





でもね、リョウ。





あなたは今でも、
私のなかで輝いてる。





キラキラの
ヒーローのままだよ。





かっこいいよ。
世界じゅうの誰よりも。





大好きだよ、
世界で1番。





私のほおに涙が一すじ
落ちたとき、





窓のそとに
粉雪が舞いはじめた。





東京では、初雪。





リョウが、この雪を
どんなに待ち望んでいたことか。





リョウ『ユア・・・
いつになったら雪降るんだよ・・・』





ユア『あははっ、リョウってば
子どもみたい!』





来る日も来る日も、
『ユア、雪はまだかな?』
って・・・





うるさいよ、
いい加減にしてよ。





あんなこと思ってた自分が
はずかしい。





今は、リョウの言葉
ひとつひとつが
恋しくてたまらない。





私は泣きじゃくった。





ユア「リョウぁ・・・っ、
雪だよ・・・起きてよぉっ、
雪が降ってるよ・・・
ずっと待ってたじゃんかぁ!
リョウのバカっ・・・
起きてよ・・・っ、わぁぁぁん・・・っ!」





こんなことしたって、
見ぐるしいだけなのに。





リョウの声が聞きたい。
笑顔が見たい。





叶わないのぞみ。





うしなったはずの希望。





リョウが今にも
むっくりと起き出して、





『ユア? なんで泣いてんだよ』って
言ってくれたら・・・





なんて・・・





想えば想うほど、
せつなくて苦しいのに・・・





『・・・ン・・・?』





ふと、かすかな声が
聞こえた。





はっとして、
リョウを見る。





ほんの少しだけ、
でも確かに、





リョウの薄くあけた瞳には
光がやどっていた。





ユア「リョウ・・・っ!」





飛びついてハグをした。





リョウの体温が
あたたかい。





ユア「そうだ、リョウ。
窓のそとを見て・・・?」





リョウは黒目だけをうごかし、
白くまう雪をみた。





とたんに彼は
しずかに笑って、
小さな小さな声で、





『ユア、ありがとう』
って、言った。





たったひとつの
言葉なのに、





それだけで
胸があつくなった。





――ねぇ、リョウ。





この1年で、わかったの。





――リョウのどんなことも、
私には大切なの。





――だからね、
ずっとそばにいてほしい。





――来年も、10年後も、
ずっと一緒に雪を見たい。





――リョウ・・・、
あなたが好きなの。





彼はおだやかにほほ笑んで、
うなずいた。





私のほおに伝う涙を
指でそっとぬぐう。





東京のとある病院の
とある病室。





初雪の日に、
ひとつの恋が、
走りはじめました。







*End*

この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。また、掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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