惚れ直してよ、黒王子
作者:焼きそばのソース2
私が好きになったのは、
Sっけ強めの黒王子。
君は私のどこが好きで
付き合ったの?
君は私を彼女扱いじゃなく、
からかうだけの
子供扱いしてるよね。
もし、私への好きが
薄まっているのなら、
私頑張るから。
惚れ直させて
見せるから。
だからお願い。
惚れ直してよ、
黒王子。
*○・*○・*○・*○・*○・*
・高1のある日・
ユイト「・・・何」
ニコラ学園の靴箱前。
私は好きな人を
呼び出した。
アム「あ、あのね、
私、ユイト君が
好きなのっ・・・」
ユイト「俺が何?
最後の方
聞こえなかった」
アム「好きなの・・・」
ユイト「え、何?」
アム「す、好きなのっ!!」
大声出しすぎた・・・
私、深尾アムは
赤くなり俯いた。
ちょっと経って、
笑う声が聞こえて
顔を上げた。
ユイト「聞こえないってのは、
うそ。
ほんとは全部聞こえてた」
私は頬を
膨らませた。
ユイト「あれ、
怒った?」
もう何十回目だろうか。
このSっけ強めな
黒王子こと、小原ユイトに
からかわれることは。
私は大事なことを
思い出して言った。
アム「へ、返事は?」
心臓がドクドク痛い。
どんどん緊張が
高まっていく。
ユイト「付き合いたいってこと?」
アム「う、うん!」
ユイト君は「へー、
なかなか積極的じゃん」
と言葉を漏らす。
ユイト「じゃ、
返事はNOで」
私は一瞬固まったが、
やがて我に戻った。
アム「そっか。
そうだよね。
私なんか
好きにならないよね・・・」
そう言って自分を納得させ、
教室に戻ろうとした時だった。
ユイト「うそ」
私はユイト君の方を
勢いよく振り返った。
食い気味の私を見て、
ユイト君は目を細め、
ククッと笑った。
ユイト「付き合お」
1番に思い浮かんだ言葉は、
「また、
からかわれた」
じゃなくて、
「嬉しい」
の一言だった。
*○・*○・*○・*○・*○・*
・クリスマスイブ・
なんやかんやで
付き合い始めた
私達であったが、
手繋ぎもハグもない、
いわゆる進展ゼロのまま、
1ヶ月が経った。
高1の12月が
やってきた。
クリスマスデートを
誘ってくれるのは、
普通男の方だけど・・・
ユイト君からは、
「デートしよう」の
デの字もない。
そのことを友達の
広瀬マノカに聞いてみた。
マノカ「アム、
考えが古すぎる!
デートに誘うってのは、
どちらから誘うなんて
決まりはないの。
自分がデートしたいって
思ったら、自分から言うの!」
アム「・・・そういうものなの?」
マノカ「私だって、
デートしたい時
ちゃんと自分から言ってるよ」
マノカちゃんは
中学生から付き合ってる
彼氏がいる。
遠距離なのに、
ラブラブらしい。
そんなマノカちゃんは
私にとって
「恋愛の先輩」
みたいなもの。
マノカ「アム、分かった?
恋愛に譲り合いはないの。
自分から行動しないと、
進展するはずないじゃん」
さすがマノカちゃんだ。
マノカ「よそよそしくしてると、
ユイト君冷めるよ!
アム、彼女扱い
されてない気がするって
言ってたよね?
クリスマスを使って
ユイト君を惚れ直させるの!」
アム「惚れ直させる・・・
分かった。
ユイト君を
クリスマスデートに
誘ってみる!」
マノカちゃんの
後押しもあって、
ユイト君をデートに
誘うことを決心した。
*○・*○・*○・*○・*○・*
・放課後・
ホームルームが終わると、
ユイト君に声をかけた。
アム「ユ、ユイト君っ」
ユイト「お、アム。
どした?」
アム「・・・あの、ね・・・」
クラスメイトがいる中で
言いにくいなぁ・・・
でもユイト君、
部活行っちゃうし・・・
今しかない!
私が口を開く前に、
ユイト君が言った。
ユイト「場所、変えよ」
ユイト君は、
教室からスタスタ
出て行った。
私は、その後を追った。
ユイト君は、
気遣いができて、
優しいけど、
しょっちゅう
からかってくる。
でも、私は
そんなところに
惚れたんだ。
ユイト君は、私のこと、
本当に好きなのかな・・・
人が通りにくい
階段下まで来た。
ユイト「恥ずかしがり屋の
アムちゃん、
どーしたの?」
ユイト君、
私が言うこと
察してるよー!
私がどんな風に
デートに誘うか、
試してる。
告白の時だって
そうだった。
ここで私がはっきり言えば、
ちょっとは私のこと、
見直してくれる?
アム「・・・クリスマス、
私と出かけて
くれませんかっ?」
ユイト「何、めっちゃ必死じゃん。
そんなに俺と出かけたい?」
アム「つ、付き合ってるし、
カレカノなら、
クリスマス一緒に
いたいなって・・・」
ユイト君は
とぼけた表情をする。
ユイト「付き合ってる?
誰と誰が」
アム「え・・・
私と、ゆユイト君」
ユイト「そうだっけ?」
アム「え・・・えっ!?」
付き合お、
とは言われたけど、
本気にしてたの私だけ?
どうしよう・・・
私の思い込みだったんだ。
ユイト「ごめん、
またからかった」
私はユイト君から
目線をそらして呟く。
アム「ひどい・・・」
ユイト「ごめんって。
俺、こうゆうやつでしょ?
そろそろ慣れてよ」
アム「ひどすぎるよ・・・」
私は目の端に
涙を浮かべた。
さすがに今回の
からかいは傷ついた。
見かねたユイト君は、
私を引き寄せ、
自分の胸の前に私を入れ、
私の背中で手を組み、
耳元で囁いた。
ユイト「明日のデート
楽しみだね。
明日の放課後、
靴箱集合な」
私は恥ずかしくなって
俯いた。
だけどその顔は
笑顔だった。
アム「分かった。
待ってるね」
ユイト「ん。
俺、明日の放課後
先生に呼ばれてるから、
その用事済んでからに
なるけどいい?」
アム「大丈夫だよ」
ユイト「ありがと。
じゃ、俺部活行くから。
またな」
アム「うん!」
*○・*○・*○・*○・*○・*
・その日の夜・
私は肌のケアを
徹底した。
乾燥するから
化粧水と乳液を
顔と体にしっかりと塗って、
カッサやパックもした。
アム「ユイト君は、
ちゃんと私のこと
好きで付き合ってるのかな」
・・・それとも、
からかい半分で
付き合っているのかな。
ユイト君を
ドキッとさせたい。
惚れ直してほしいよ。
私は近くに置いてあった
ラッピングされた
プレゼントを手にする。
アム「喜んでくれるかな」
君のために選んだもの。
きっと喜んでくれるよ!
私は自分に
勇気づけた。
アム「大丈夫、
うまくいく!」
これは全部全部、
君のため。
*○・*○・*○・*○・*○・*
・クリスマス当日・
マノカ「アムー!
おはよ!」
学校に着くと、
マノカちゃんが
1番に声をかけた。
アム「マノカちゃん!」
マノカ「デート誘えたの?」
私が大きく頷くと、
マノカちゃんは
ニコッと笑った。
アム「マノカちゃんは
デートするの?」
マノカちゃんは
照れながら答える。
マノカ「うん!」
マノカちゃん
嬉しそう!
マノカ「放課後、
お互い頑張ろうね!」
アム「うん!」
*○・*○・*○・*○・*○・*
・放課後・
アム「ユイト君、
もうすぐ来るかな」
ユイト君は
先生に呼ばれて、
荷物運びの
手伝いをしている。
10分くらいで
終わるって言ってたから、
もう少しだよね。
だけど、約束の
10分が過ぎても、
20分が過ぎても、
ユイト君は現れなかった。
ユイト君が来たのは、
約束から35分が過ぎた、
17時35分だった。
私はその時、
沸々と怒りと悲しみが、
こみ上げて来た。
アム「また私を
からかってるの?
約束の時間過ぎたら、
アムはどんな顔して
焦るかなって」
ユイト「違う。
アム、聞いて」
アム「私は本当に
ユイト君が好きなのに、
ユイト君は私のこと
好きじゃないんだね・・・?」
私は涙を流しながら、
震える声で続ける。
アム「私・・・
ユイト君のこと、
分かんなくなっちゃった」
惚れ直させようって
決めたのに、
ダメだった。
アム「ごめん、
今日は帰るね」
ユイト君は、
素早く私を捕まえる。
ユイト「ダメ、
帰らせない」
私は涙で歪む視界で
ユイト君を見つめた。
ユイト「今はからかいなし。
ちょっと聞いて」
アム「・・・うん」
ユイト「アムは俺のこと
好きだけど、
俺はアムのこと
好きじゃないって
言ったよな」
ユイト君は、じっと
私を見つめていた。
ユイト「俺はちゃんと
アムのこと好きだよ。
俺はアムに惚れて
付き合ってる」
そこまで言って、
言葉を詰まらせた。
そして少し照れながら
続ける。
ユイト「たまにからかうのは・・・
ほら・・・あれだよ。
好きな子には、
ちょっかいかけるっていう、
ガキな男子がやるやつ・・・」
アム「そうなの?」
ユイト「そうだよ。
言わせんな・・・」
ユイト君は、じっと
私を見据えていた。
その真剣さが
ひしひしと
伝わって来た。
ユイト君は、
私をちゃんと
好きでいてくれた。
嬉しくて、
笑顔がこぼれた。
ユイト「先生、俺に
どんどん運ばせるから・・・
ってごめん。
言い訳し過ぎだよな」
アム「もういいよ。
あのね、私、
ユイト君がちゃんと
私を好きでいてくれたことが
すごく嬉しかったよ。
ありがとね」
ユイト「・・・アムは、
すぐ俺を惚れさせる」
アム「ユイト君?」
ユイト「なんでもないよ。
じゃ、行こっか」
ユイト君は
私の手を引いた。
アム「どこ行くの?」
ユイト「着くまで内緒」
ユイト君は、
軽く笑った。
白い息が出て
寒いはずなのに、
繋がれたら手から
ユイト君の温もりが伝わって、
心があったかかった。
ユイト「着いた」
私はユイト君の横に並び、
見上げる。
目の先には、色とりどりの
イルミネーションが輝く
大きなクリスマスツリーがあった。
アム「わあっ・・・
綺麗・・・!」
ユイト「気に入った?」
アム「うんっ! すごく!」
ユイト君は、
ツリーを見上げて
微笑む。
ユイト「よかった」
アム「こんなところに
ツリーがあるなんて
知らなかった。
ユイト君、
よく知ってたね」
ユイト「調べたよ。
何度も」
アム「そこまでしてくれて、
ありがとう」
ユイト「・・・アムと出かけるなら、
やっぱり喜んでほしいし」
ユイと君が
全然からかわない・・・!
私は、顔を赤く染めて、
勇気を振り絞った。
ユイト「アム?」
私はユイト君の手を
ぎゅっと握っていた。
アム「ユイト君と一緒なら、
いつでも楽しいよ」
ユイト君は、
じっと私を見つめ、
「あー参った」と嘆き
私に被さるように
抱きしめた。
アム「わっ・・・」
ユイト「これ以上
惚れさせるなよ。
心持たんわ」
そ、そんなつもり
なかったけど。
私はふふっと笑って、
ユイト君の背中に
手を回した。
クリスマスの黒王子は
Sっけがなくて、
とろけるくらい甘かった。
アム「プレゼント
あるんだけど、
今渡してもいい?」
ユイト君は、ぱっと
顔を輝かせる。
アム「はい」
ユイト君は
シュッとリボンをほどき、
中身を取り出した。
ユイト「マフラー?」
アム「うん!」
ユイト君は
「かっけー」と言い、
早速首に巻きつけた。
ユイト「どう?」
黒王子には、
黒のマフラーが
よく似合っている。
アム「うん、
いい感じ!」
ユイト君は満足そうに笑い、
バックから黄色の箱を
取り出した。
ユイト「実は俺からもある」
うそっ・・・!
ユイト君からの
プレゼント!?
アム「開けていい?」
ユイト「どーぞ」
パカっと
フタを開けた瞬間!
「ビロロローン!」
アム「うあっ!」
黄色の箱からは、
音声付きのカエルの顔が
描かれたお面が飛び出て来た。
私は呆然としてると、
隣でユイト君は
声を殺して笑っていた。
ユイト「ごめ・・・ははっ!
今日は、からかわないでいようと
思ってけど、
やっぱからかいなしじゃ
俺じゃねーから、
ドッキリプレゼント
あげてみた!」
アム「ユイト君、
こりてない!」
ユイト「ごめんって・・・
あ、本当は
もう1つあるから、
怒んないで」
ユイト君は、
白とピンクの水玉模様の
可愛らしい袋を取り出した。
アム「またドッキリとか
じゃないよね・・・?」
ユイト「どーだろ」
ユイト君は私から
目をそらして笑っていた。
袋を開けてみると、
中にはモコモコした
雪だるまの
ぬいぐるみが入っていた。
アム「可愛い!」
ユイト「アム、こーゆうの
好きそうだったから」
アム「ありがとう!
大事にするね」
ユイト「・・・もう1個
あるはずなんだけど・・・」
アム「そうなの?」
袋の奥に、
小さなものが見えた。
紫の花がついた
イヤリングだった。
ユイト「どんなアクセサリーが
好きか分かんなかったから、
一応イヤリングにしておいた」
アム「つけていい?」
ユイト「おう」
イヤリングの
冷たい感触が
心をくすぐった。
ユイト「ん、いい!
すごく似合ってる」
ユイト君は
私を見つめて
微笑んだ。
あぁダメだ、
もう我慢できない。
アム「ユイト君、
大好きっ!」
そう言って、
私はユイト君に
抱きついた。
ユイト君は
「それは反則」と呟き
私をぎゅっと抱きしめた。
惚れ直してくれた
黒王子と私。
これからもきっと、
お互いドキッと
心をときめかすことが
たくさん起きるんだろう。
*END*
深尾 あむ
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