鬼の住む町であなたと

CAST深尾 あむ深尾 あむ

作者:蘭

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2020.12.29

私の名前は深尾あむ!
高校1年生です!





私の住んでる町は
一見普通の町。





でも、実は
鬼が住んでる街なんだ。





でも鬼が出てくるのは
1年に1回、節分の日。





その節分の日に、
まさかこんなことが
あるなんて・・・











・*・―――・*・―――・*・





あむ「おはよー!」





果歩「おはよー!」





私が元気よく挨拶すると、
同じく元気な挨拶が
帰ってきた。





この子は河村果歩!
私の親友なんだ!





光翔「おはよー」





あむ「お、おはよ!」





私は光翔くんからの挨拶を
ぎこちなくかえした。





それもそのはず、
この人は戸部光翔





私の好きな人なんです!





光翔君は文武両道に加えて
顔も良い、完璧男子なんです!





だから女子からも
モテモテ!





でも、絶対に
負けないんだから!





果歩「そういえば
今日豆持ってきた?」





あむ「もちろん!」





今日は節分、
鬼が出る日なんだ、





でも、
鬼の苦手なものは豆!





だから鬼に豆を投げれば
逃げてくれるんだ!





ピー





先生の笛の音が
鳴り響いた。





それと同時に、
数人の生徒が
走り出した。





今は体育の時間。





50メートル走の
練習をしてるんだ!





いよいよ次は私の番!





あードキドキしてきたー。





先生「よーい・・・」





先生の声でみんなは
クラウチングスタートの
準備体制に入った。





ピーと鳴ると思ったが、
その音が鳴ることはなかった。





目の前に
鬼が現れたからだ。





それも、真っピンクの体に
ハートの半分が描かれた鬼・・・





みんなはいっせいに
鬼に向かって
豆を投げ出した。





でも、鬼は
その豆を避けながら
こっちに走ってくる。





よりによって、
私を狙って・・・





私は必死で
鬼に豆を投げた。





私の豆はなくなった。





だが、流石に
鬼も嫌だったのか、
他の子の方に走っていった。





キャー





悲鳴が聞こえた。
林さんの声だ。





石につまずいて
転んでしまったのだ。





やばい!





そう思ったが
遅かった。





もう鬼は林さんの
目の前にいる。





みんな唖然となって
固まってしまった。





その時、





「芽亜里!」





誰かが叫ぶ声がした。





芽亜里「怜音!」





怜音とは、
林さんの彼氏だ。





今の騒ぎを聞きつけて、
体育館からとんできたのだ。





怜音君は林さんを
庇って





怜音「俺の彼女に
手を出すな!」





そう叫んで、
怜音くんは鬼を睨んだ。





でも、その強きの態度とは
裏腹に、怜音くんの体は
小刻みに震えている。





鬼はその光景を見たまま、
動かなくなった。





鬼の体が一瞬
薄くなった気がしたのは、
きっと気のせいじゃないはず。





次の瞬間、
周りにいた人達は
次々に鬼に向かって
豆を投げ始めた。





流石に自分の嫌いなものを
沢山投げられて嫌だったのか、
鬼は走っていってしまった。





怜音「逃げた・・・のか・・・」





怜音くんが
そう呟いた。





みんな少しは待ってみたものの、
いっこうに鬼が現れなかったので
次々に今の出来事について
興奮気味に話し始めた。





そして、続々と
体育館から
男子生徒が集まってきた。





その騒ぎを見兼ねた先生が
男子生徒を体育館に戻し、
体育の授業を再開させた。





そう言えば、
なんであの時
鬼の体が
薄くなったんだろう。





そんな疑問が
頭をよぎったが、
私は体育の授業に
集中することにした。













*・。+ *・。+ *・。+ *・。+ *・。+ *・。+ ・。





今日も疲れたー。





そんなことを思いながら
もうすっかり暗くなった
通学路を歩いていた。





よりによって
鬼も現れたし・・・





あの時、鬼の体が
薄くなったのは
なんだったんだろう。





そんな疑問が再び
私の頭をよぎった。





その時、目の前に
鬼が現れた。





それもさっきと同じ、
真っピンクの体に
ハートが描かれた鬼・・・





私は豆を
取り出そうとした、





しかし、豆はなかった。





さっきの戦いで
全部使ってしまったからだ。





あむ「どうしよ・・・」





私が悩んでいたら、
急に視界が暗くなった。





と思ったら
真っピンクの部屋に
私はいた。





あむ「ここ・・・どこ・・・」





そう思ったのも
つかの間だった。





目の前に鬼・・・
じゃなくて
光翔君が居たのだ!





あむ「光翔君・・・」





光翔「なんで居るんだ・・・」





あむ「そっちこそ、
なんで居るの?」





光翔「俺は目の前に
鬼が現れたと思って
豆を投げようとしたら
この部屋にいて・・・」





あむ「私は豆を取り出そうとしたら
豆がなくて、気づいたら
この部屋にいて・・・」





光翔「とりあえずここから
抜け出せる方法を探そう!
あの鬼の行方も
気になるしな・・・」





あむ「そうだね」





手がかりを
探そうとした時、
壁に細い隙間が
空いていることに気づいた。





あむ「ここ・・・」





光翔「もしかして
扉になってるんじゃないか」





そう言って光翔君は
扉らしきものを押した。





そしたら、扉が開いた。





あむ「開いた・・・!」





そう思ったのも一瞬、
その扉の先には
迷路みたいな
真っピンクな道が
広がっていた。





あむ「どうしよ・・・」





こんなに沢山道があったら、
一歩間違えたら
永遠に帰れなくなるかも・・・





そんな私の考えが
分かったのか、





光翔「俺がいるから
大丈夫だ」





そう言って
励ましてくれた。





でも、私
知ってるよ・・・





光翔君の体が
震えていたことを・・・





私達は話し合った結果、
とりあえず前に進んでみる
ことにした。





あむ「この道
どっちに行く?」





光翔「とりあえず
こっちに行ってみるか」





そんなこんなで
進んでいくこと数時間、





あむ「あれ、これなんだろ」





光翔「なんだ?」





あむ「見てこれ、
交換日記かな」





光翔「大倉空人って
書いてあるな」





私は少しページを
めくってみた。





そしたら、私は
あるものを見つけた。





告白だ。





それ以外にも
その子の好きなところが
沢山書いてある。





交換相手かな。





すごい好きなんだな。





私は次のページを
めくってみた。





そこに書いてあった文字は





*・。+ *・。+ *・。+ *・
  ごめんなさい
*・。+ *・。+ *・。+ *・





その一言だけだった。





私はその先のページも
めくってみたが、
何も書いてなかった。





その先も、
またその先も・・・





これで
終わっちゃったんだ。





私が落ち込んでいると





光翔「これ見ろよ」





と私にノートを
差し出してきた。





あむ「なにこれ」





日記かな。





あ、また大倉空人って
書いてある。





私はページを
めくってみた。





日記、というか
恋愛日記かな。





好きな人のことばっか
書いてある。





熱愛だったんだな。





でも、





告った結果はふられた





そう書いてあった。





そこから先はもう
何も書いてなかった・・・





気づけば、私達の周りには
沢山のノートや交換日記、
ラブレターまで落ちていた。





それを2人で手分けして
全部見て見たけど、
名前は全て大倉空人、
相手は全部違う女の子、
そして全部ふられたことが
書いてあった。





それを見て、
私は気がついた。





あむ「鬼の体が
真っピンクなのは
恋っていう意味で、
ハートが半分だったのは
片思いって意味なのかも」





光翔「そうだとしたら
全部の辻褄が合うな、
でもそうだとしたら
あの鬼の元は
大倉空人ってことか?
なんで鬼になったんだ?」





あむ「そういえば私、
聞いたことあるかも!
大倉空人って人が自殺した事件、
遺書にはふられすぎて
辛かったから自殺したって
書いてあったらしいけど・・・」





光翔「だとしても
なんで鬼になんか
なったりしたんだ?」





あむ「なにか
心残りがあるのかも」





光翔「だとしたら
その鬼の心残りをなくせば
鬼は成仏してくれるかもな」





あむ「そうだね!
とりあえず鬼を探そう!」





私達は必死で
鬼を探した。





何時間だっただろうか。





私達はある1つの扉を
見つけた。





半分ハートが
描かれた扉・・・





光翔「おそらくこの中に
鬼がいるはずだ、
でもむやみに入っても
殺されるだけ、
俺もそんなに豆を
持ってないからな」





あむ「多分鬼の心残りを
なくせばいいんだけど、
大事な心残りが
分からないからな・・・」





光翔「あのノートや
交換日記がヒントだと
思うんだけどな・・・」





あむ「もしかしたら
誰かに好きになって
もらいたいんじゃないかな?
ほら、好きになったことは
あっても、好かれたことは
1度もなかったから」





光翔「それはあるかもな、
でも俺は男、
相手も男だろうから
あむ、鬼を好きなふりできるか?」





私は迷った。





だって、私が好きなのは
光翔君だもん・・・





でも、言い出しっぺは
私だしね。





私が黙ったからか、
あむ? と光翔君が
呼んでくれた。





私がこれを断ったら、
もう2度と
帰れないかもしれない。





光翔君に好きって
言えないまま
死んでしまうかもしれない。





あむ「・・・私、やる!」





光翔「ほんとか!?
あむ、ありがとな!」





私はドキッとした。





私だけに向けられた
その笑顔が、あまりにも
眩しかったから・・・





多分私の顔は
茹でダコみたいに
赤くなってると思う。





その時、光翔くんの顔も
少し赤くなってるように
見えたのは
気のせいだよね?





でも、この感情も
なくさなきゃいけない。





鬼に演技だってバレたら、
私達はどうなるか
分からない。





あむ「行こう!」





私は気合を入れた。





あむ「空人君!
あの、ちょっと
話してもいいかな?」





そのふりむいた形相に
ドキッとする。





だって、元々人だったとは
思えないような
怖い顔なんだもん。





失礼だけど。





鬼はなんだ?
というような
顔をしている。





あむ「実は私、
言いたいことがあって・・・」





私は勇気を振り絞って、
怖いという感情を
なるべく出さないようにして
言葉を続けた。





あむ「どんなにふられても
前に向かって歩いて、
いつも輝いている
空人君のことが、す、」





私は全身に力を入れて
次の言葉を言おうとした。





その時だった。





光翔「あむ!」





あむ「光翔君!」





光翔「俺が頼んだのに悪いが、
やっぱり見ていられない、
俺はあむのことが」





時が止まった気がした。





光翔「好きだ、
付き合ってくれ」





本当はダメなのに、
空人君を好きな設定なのに、
気づいたら私は
光翔君の元に走っていた。





次の瞬間、私は光翔君の
腕の中におさまっていた。





そして私は、





あむ「もちろん!」





と言った。





次の瞬間、視界が
暗くなった気がした。





でも、またその次の瞬間には
元いた場所に戻っていた。





抱き合ったまま・・・





私達は弾かれたように
離れた。





そして見つめ合う・・・





見つめ合うことも
恥ずかしくなって
私達は目を逸らした。





2人とも顔は真っ赤。





気まずい沈黙がながれた。





その沈黙の中、
先に口を開いたのは
光翔君だった。





光翔「俺達が帰って
こられたのって、
鬼、いや、空人君の心残りを
なくせたからかもな」





あむ「うん、空人君は
自分が好かれるんじゃなくて、
両思いの幸せなカップルを
見たかったのかもね、
考えてみれば空人君が
学校に現れた時に狙ってたのって
恋をしてる人ばっかだったし、
林さんと怜音君のカップルを見た時に
空人君が一瞬薄くなった気がしたしね、
まぁみんなが豆を沢山投げたから
逃げたけど」





光翔「もしかしたら俺達が
両思いなのを知って、
自分の心残りをなくすために
さっきの場所に
連れ込んだのかもな」





あむ「今頃空人君、
成仏できたかな」





光翔「きっと出来たよ」





私達は見つめあって、
そして笑いあった。





そして、光翔君が
再び口を開いた。





光翔「改めてもう1回言います、
好きです、
付き合ってください!」





私は光翔君に
抱きついて
「はい!」と言った。





それからこの町で
鬼が出ることはなかった。







*end*

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