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兄妹アイドル

CAST工藤 唯愛工藤 唯愛

作者:M

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2025.03.01

・*。・ 工藤ユア ・。*・





「アイドルになりたいです」





私、工藤ユアが
大真面目に答えた瞬間、
嘲笑が巻きおこった。





「いつまでもそんな
夢うつつぬかしてないで、
もっと現実を見たらどうだ?」





兄のリョウスケは
いつものごとく言い放った。





「現実見てるし!
アイドルになる!
以上!」





「そんなの
叶うと思って・・・」





「叶う!
いや、叶えるし!」





「まーまー2人とも
落ち着いて・・・」





親友のハナが
割って入る。





「ハナも言ってよ!
私が本気なの、
知ってるでしょ!?」





私は、運命の時を
思い出す。





「ワァァァァァァァァァァァッ」





響く歓声。





ステージに立つのは
1人の少年。





歌って、踊って、
みんなを笑顔にする・・・!





「私もアイドルになって、
たくさんの人を
笑顔にさせたい」





あの少年を見たときの
私のように。





「将来の夢を
発表しましょう」





先生の指示で、
順にみんなが発表していく。





「次、工藤さん」





「アイドルになりたいです」





大真面目に答えた瞬間、
嘲笑が巻きおこった。





「無理でしょ~」





「・・・・・・(笑笑)」





「ユア、気にすんな」





ハナの励ましに、
大きくうなずく。





「無理とか
わかんないじゃん!
ヒトの夢をさんざん笑って・・・!」





「私もそう思う。
ユアなら絶対・・・
ってあれ、
リョウスケさんじゃない?」





「本当だ、
お兄ちゃんじゃん」





兄は、何やら名刺を
受けとっていた。





「ぜひ、ニコラカンパニー
芸能事務所に・・・」





「いや、俺そういうのは・・・」





そんな会話に、
あっと驚く。





「えっ、お兄ちゃん
スカウトされてる!?」





「!
・・・なんだ、ユアか。
いや、今断ろうと・・・」





「あの・・・
ニコラカンパニー
芸能事務所の方ですか?
私、アイドル目指してて」





「あの、兄妹アイドルなんて
どうですか?」





「あーいいね!
2人とも美形だし、
兄妹でアイドルというのも
新しい!」





「あ、僕、ニコラカンパニー
芸能事務所の
スカウトマンやってます、
小澤テルノスケと申します」





「お願いします!」





「ちょっ、ちょっと・・・!」





めでたく、私とお兄ちゃんは
ニコラカンパニー芸能事務所に
所属することが決まり、
兄妹アイドルとしての
レッスン漬けの日々が始まった。





そして、散々渋っていた
お兄ちゃんには
意外な才能が発覚した。





「リョウスケくん、
君すごいね」





「ダンスやってたりした?
もう十分プロデビューできる
レベルだよ!」





「そうすか?
俺、レッスンで初めて
ダンス始めたんですけど・・・」





「本当だったら
才能だぞ、才能!」





「あの、私はどうですか?」





「ユアちゃんは・・・
そうだね、上達はしているよ。
ただ、もう少し
キレを出した方がよくなるな」





小澤テルノスケさんは、
私たちのマネージャーに
就任していた。





「そうですか・・・
がんばります」





私は、アイドルを
夢見た小学生のときから、
ダンスを習っていた。





だけど、わかってしまう。





兄の方が、私より
上手なことが。





(・・・悔しい。
悔しい、悔しい・・・!)





「前に言っていた
公開オーディションの書類、
通過した!」





「本当ですか!?」





それは、かなり
大規模なオーデションで、
最終審査からは
全世界に中継される。





「二次審査は・・・
ダンスを重点的に
審査するようだね」





(! ダンス・・・!)











・*。・ オーデション審査室 ・。*・





「お兄さん? だよね、
リョウスケくんは
すごくよかった」





「ただ、妹がね・・・
悪くはないけど、やっぱり
並ぶと比べちゃってね・・・」





審査員の講評は、
私に対しては
さんざんだった。





結果は、
二次審査敗退・・・





「ヒック、ヒック、
うぅぅぅぅ・・・」





涙が止まらない。





あふれかえった滴で
ぼやけた世界で声がした。





「・・・チャンスはまだある。
このオーディションは、
敗者復活戦があるんだ」





「リョウスケくんは、天才だ。
だが、ユアちゃん・・・
君の上達の速さにも、
目を見はるところがある」





「その涙は・・
ユアちゃんの努力だ」





「君には、努力できる
才能がある。
だから、僕は、君たち2人が
やり遂げられると信じられる」





ぼやける世界。





そこには、
テルノスケマネージャー。





(努力できる、才能・・・)





「・・・ありがとう、ございます」





ずっと周りから反対されて
相手にもされず、
笑われていたこの夢を
つかむ一歩は
この人がくれた。





今があるのは、あの日、
テルノスケマネージャーと
出会ったからだ。





未だ止まらまい涙で
顔を濡らしながらも・・・
私は笑った。





「がんばりますっ!」













* 敗者復活戦当日 *





「よしっ、最終確認。
リョウスケくんはいつも通り、
練習の通りがんばって」





「ユアちゃんは・・・
自信をもって臨むこと。
2人とも、応援してるからな!」





「「はいっ」」





(もし・・・
このオーディションで
受かったら)





「エントリーナンバー
409番の方。
こちらで待機お願いします」





「よしっ、
気合い入れて!」





「「おー!」」





(もし・・・
このオーディションで
受かったら)





笑顔でガッツポーズをする
テルノスケマネージャーに
目をやる。





(この気もち、
伝えても、いいですか・・・?)





「行って来ます!」





胸は、トクトクと
鳴っていた・・・











・*。・ 佐々木ハナ ・。*・





「うん! テレビ見てたよ!
グランプリ&デビューおめでとう!」





「うん・・・うん。
えっ、レッスン合宿?
───そっか」





「もしもし? 久しぶり。
もう合宿終わる頃だよね。
うん、そっか。
合宿の後もレッスン場が
近いところに引っ越すんだ」





「じゃあ・・・」





「じゃあね」





(じゃあ・・・
もう会えないね)





親友のユアと、その兄である
リョウスケさんが
みごと兄妹アイドルとして
デビューを飾って、はや2ヶ月。





2人はもう、この学校には
通っていない。





レッスン場に近い物件を
事務所が手配してくれたらしく、
転校したのだ。





(もう、遠いところに
いるんだな・・・)





(寂しいけど・・・
アイドル活動は
がんばってほしいし・・・
複雑な気分)





「崎浜リコです。
これからよろしく
お願いします!」





転校生が来た。





学級委員の私は、
学校案内をしている。





「佐々木ハナです、よろし・・・」





「ハナちゃん!? あの!?」





「ええっ!?」





急な食いつきに驚くと、
リコちゃんは
目をキラキラさせていた。





「私、ユアリョウの
大ファンでっ!
あのユアちゃんの
親友だよね!?」





「あっうん、そうです」





「本物・・・・!
この学校も、リョウスケ様が
通ってたところとか
おそれ多くて歩けない・・・!」





「あっやっぱ、リョウスケ様と
会ったこともあるよね?
ぜったい生もイケメンでしょ!?」





「あ、ははははは・・・」





乾いた笑みを浮かべながら、
思った。





(ファンもいて・・・
本当に、もう私とは
違う世界にいるんだ・・・)





(なんだろう・・・
なんか・・・モヤモヤする・・・)





「あそこの階段で
よく3人でしゃべってて、
私が体操服忘れたとき、
リョウスケさんが
貸してくれたこととかも・・・」





「えーっ!
リョウスケ様
中身もイケメンじゃん!」





(何してるんだ、私!?)





最近の私は
少しおかしい。





リコちゃんが
ユアリョウについて
語っていると、
胸のモヤモヤが
止まらないのだ。





特に、リョウスケさんについて
話されていると、
無性にイライラして、





(私の方が、
くわしいんだから!)





と、なんだか
張りあいたくなるのだ。





(リコちゃんが2人を
応援してくれているのは
うれしいけど・・・)





この気もちの名前は、
知っていた。





嫉妬。





私は、小学生のころから、
リョウスケさんに
片想いしていた。





「佐々木、先生が
このプリント整理しとけって」





「りょーかい」





「・・・だいじょうぶか?
最近なんか元気なくね?」





私と一緒に
学級委員であるのは
黒澤リョウ。





彼からの質問に、
整理していた手が止まる。





「え、何
心配してくれてんの?」





「だって、佐々木、
リョウスケ先輩のこと
好きだったから・・・」





「なんか、寂しいよな。
リョウスケ先輩が
いなくなってから
バスケ部もちょっと
覇気(はき)なくてさ」





リョウスケさんは、
バスケ部の部長をしていた。





(私と同じで・・・
寂しく感じてる人も
いたんだ)





なんだか仲間を
見つけたような気分で
うなずきかけたとき、





「でも、今はもう
違うもんな」





「え?」





「今はもう、
リョウスケ先輩
じゃなくて・・・」





「ユアリョウの
リョウスケ、だもんな」





(・・・・・っ!)





「俺・・・今まで
黙ってたけど、
佐々木のこと好きだ」





「え・・・」





「佐々木が
リョウスケ先輩のこと
好きなのは知ってる」





「だけど・・・先輩、
もう俺らにとっちゃ
遠い・・・雲の上のような
存在だから・・・」





ハッとリコちゃんの
顔が浮かぶ。





(あんなにかわいい子にも・・・
たくさんに人に
リョウスケさんは
推されてる・・・)





(もう・・・
私の出る幕は
ないのかな・・・)





「・・・ごめん、
返事、考えさせて」





私はうつむき
答えた・・・











・*。・ 数日後 ・。*・





「久しぶり」





「リョウスケさん・・・!?」





久しぶりの再会は
突然だった。





彼は、サングラスと
黒キャップで
顔を隠していた。





「ユアは・・・」





「レッスン中。
俺だけお忍びで
ちょっと抜けて来た」





「相談があってさ・・・
今だいじょうぶ?」





「は、はい」





「俺さ、アイドル辞めようと
思ってるんだ」





「えっ」





「もともと、ユアが
目指したんだし・・・」





「楽しかったけど、
一般人としての日常の中で
大切だったものに気がついたんだ」





「ユアは・・・
どうなるんですか?」





「独立する。
ソロアイドルとしても
やっていけるくらいには、
ユアリョウで
名前を売ってあるから」





「そ、そうですか・・・」





ユアには悪いけど・・・
リョウスケさんが
戻って来てくれることを
喜んでしまう私がいた。





「また同じ学校、通えるな」





そういう彼も
うれしそうに見えて、
目をこする。





「俺・・・
好きな人できたんだ。
いや、気づいたと
いうべきか・・・」





そのとき、あまりにも
信じられなくて、
全てがスローモーションに見えた。





「ハナ」





「・・・」





「好きです」













*...・・・*...・・・*





事は、次々進んだ。





「ユアリョウ、解散」





「ユア、ソロアイドルとして独立」





「リョウスケ、芸能界引退」





そして────。





「おはよ」





「おはようございます!」





リョウスケさんと
交わすあいさつ。





握られた、手。









────2人の背後





なにやら、
コソコソしている
人影が2つ。





「リョウスケ様ー!(泣)
引退しただけでも
ショックなのに・・・
彼女まで
できちゃうなんて(泣泣)」





「やっぱり・・・
リョウスケ先輩には
かなわねーな・・・」





リコと、リョウであった────。













* 崎浜リコ *





「失恋者同盟、
組みませんか?」





ヒラリ、と風に吹かれて
やって来たチラシの内容に
私、崎浜リコは足を止める。





「2階、家庭科室、
恋愛同好会まで・・・って
なんだこれ」





少し考え、
「行ってみよ。面白そう」





私はつい最近、
推しに失恋したばかりだった。













・*。・ 家庭科室 ・。*・





「いらっしゃーい!
私、恋愛同好会会長の
松田ミユウでーす」





「崎浜リコです・・・
あの、失恋者同盟って・・・?」





「あ、加盟希望者?」





「実はさ、最近うちの会員が
昨日大失恋してさ・・・」





指差した先には、
ズーンと机に突っ伏し、
暗い雰囲気をかもしだす
少女がいた。





「中瀬リリっていうんだけど・・・
ものすごい
落ちこんじゃっててさ・・・」





「リリの気もちに共感し合える
失恋した人を集めて、
元気づけたくて
募集してたんだ」





「なるほど」





「・・・崎浜さんは
誰に失恋したの?」





「私は、推しに
彼女ができて・・・」





「はああああ!?
推しっ!?」





「そんな軽いもんで
失恋なんて
言わないでくれる!?」





「私なんか
3年つきあってた彼氏が
浮気して・・・(泣)」





「別に軽くなんかない!
本気で推しに恋してたし・・・!」





「まーまー落ち着いて!
リリも八つ当たりしない!」





「でも2人気が合うね。
なんか顔も似てない?
・・・前世双子だったりして・・・」





「「絶対違います!」」





ハモった。





なんだかんだ、私たちは
仲良くなっていった。





松田先輩が言ってた通り、
前世双子だったのではないかレベルで
共通点が多かったのだ。





「ねー、失恋者同盟の人数、
増やしたくない?」





「たしかに。
誰かいたっけ、
失恋した人・・・」





「あ。私、
心当たりあるかも」





「ってことで! 黒澤くん!」





「ええっ?
なんで俺が・・・」





「私、知ってるんだよ。
長年片想いしてた子に
失恋したばかりだって・・・」





「落ちこんでいてもだいじょうぶ!
失恋者同盟に加盟すれば、
元気が出るよ!」





「・・・はぁー俺、忙しいの」





「来週の学年球技大会のために
頼まれた原稿、作成しないと・・・」





「学級委員は、大変なんだねぇ」





「じゃ、また気が向いたら来て」













・*。・ 翌週 学年球技大会 ・。*・





「ひいいいいっ」





種目、ドッチボール。





「これ、当たったら
ぜったい痛いやつだよね!?」





「わっ」





必死でボールを避けていると、
足をグネった。





「・・・! 痛っ」





座りこんだ私をめがけ、
ボールが飛んでくる。





(ひいいいいいっ
当たる・・・!)





パシンッ





誰かが受け止めた。





(・・・! 黒澤くん!)













* 家庭科室 恋愛同好会 *





「えー!
それでどうなったの!?」





「だいじょうぶ?
って言われて・・・」





「えーっかっこいい!
それで?」





リリとミユウ先輩は
大盛り上がりで催促する。





私は、満面の笑みで答えた。





「推しになりました!」





「・・・・・・・」





「・・・推し?」





「うん、推し!」





「いや、それは恋でしょ」





ミユウ先輩がそう
つぶやいたことに、





大はしゃぎの私は
気がつかなかった。





「見て~
黒澤くんのうちわ
作ったんだ!」





両手に手作りグッズを
手にする私が、
この気もちの本当の名前を
知るのは、もう少し後のお話・・・







*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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