初恋の味を求めて

CAST梨里花

作者：まるぱん

2024.11.21

ふわり。

リリー「ここが人間界かあ」

私、リリー！
魔法使いだよ！

魔法界に住んでるの！

もちろん、魔法を使えるし、
空も飛べるよ！

魔法界では、１０歳で
１人前とみなされるから、
１４歳の私は、働いてるの。

マジカルワールド
（略して『マジワ』!!）
っていう、お菓子をつくる会社の
社員だよ。

本っ当ー！　に
マジワのつくるお菓子は
おいしいの！

私、マジワのお菓子に惚れて
入社したようなものだもん。

虹色妄想キャンディーでしょ、
常闇チョコレートでしょ、
夢グミでしょ、
オーロララムネとか！

他にもいっぱいあるよ！

魔法界中に
発売予告の広告を
配ってきたんだけどね、

今度の新作は、
感情のフレーバーのアメなんだ！

うれしい、楽しい、
悲しい、寂しい、憤（いきどお）り、
のフレーバーは、試作品が
できたんだけど、

初恋のフレーバーだけ
製作が難航してて・・・

だから、私が
「初恋の味」を求めて
ここ、ニコラ学園に潜入するの！

なんだかスパイみたいで
楽しそー！

魔法界での名前は「リリー」
なんだけど、
人間界では「梨里花」って
名乗ることにするよー！

我ながら「梨里花」って名前、
可愛いじゃん（笑）

気に入った！

ルーナ「あなた、リリー!?
なんで人間界に!?」

リリー「なんでルーナが!?
広告見た!?
マジワは商品開発のために
人間界に来たのに。
なんでミラマまで!?」

「ミラマ」っていうのは、
「ミラクルマジック」っていう
マジワのライバル会社。

悔しいところだけど、
ミラマのお菓子もおいしいの・・・

マジワには
及ばないけどねっ！

ルーナ「内緒ー！
私もニコラ学園に潜入するから、
よろしくね。
偽名は、白尾留菜」

ガララ

ヒナノ「編入生!?」

ナツ「２人もいる!?」

ソノマ「めっちゃ可愛い！」

自己紹介しなきゃ。

ルーナ「白尾留菜です。
よろしくお願いします」

リリー「梨里花です。
よろしくお願いします」

パチパチパチ・・・

ソノマ「ねえ、梨里花ちゃん。
名字って、何？」

リリー「名字・・・？
何、それ・・・」

ヒナノ「えー。
梨里花ちゃんったら、
名字を知らないのー？（笑）
そんな頭で偏差値の高い
ニコラ学園に来ないでくれる？」

魔法界には、「名字」って
ないんだから、
分かるわけないじゃん！

ああ、ルーナはいいなあ。

編入初日に友達ができて。

早速ヒナノちゃんと
ソノマちゃんとしゃべってる。

どうしようもなく、
うつむく。

リリカリピリカラルラ・。・:*・°・

これからが不安で、
不安をまぎらわすために
むかし覚えた魔法の呪文を
心の中で唱える。

ふと、そのとき
腕を引っ張られた。

リリー「痛っ！」

ナツ「ごめん、梨里花！
でも、ちょっとついてきて！」

確か、この子はナツくん。

リリー「どうしたの？」

ナツ「俺、梨里花のことが好き！
一目惚れした！
付き合ってほしい！」

え!?

これが、「一目惚れ」？

顔が沸騰するように
熱を帯びている。

この気持ちは、きっと、・・・！

リリー「私も好き。
だけどね、私、魔法使いなの」

ナツ「そうだったの!?」

リリー「だからね、ナツくんとは
住む世界が違うの」

ナツ「でも、魔法界から
人間界に来れたなら、
人間界から魔法界にだって、
行けるだろ？」

リリー「うん。
だけど、その道は
まだ人間は見つけていないの」

ナツ「俺がさ、いつか、
その道を見つけるから！
俺がその道を見つけて
魔法界に行ったら、
結婚してくれる？」

リリー「もちろん！
あ。私の本当の名前は、リリー。
じゃあ、今回の目的は果たしたから
いったん魔法界に帰るね」

ナツ「えっ!?　もう!?
ちょっと速すぎない!?」

リリー「ごめんね。だけど、
ナツくんのことは絶対に
忘れないから！」

ナツ「うん・・・分かった」

ルーナ「じゃ、私も帰るー！」

リリー「ルーナはどうして!?」

ルーナ「だって、私も
課題の答え見つけたしー。
『友情』のフレーバー、
作れそうかもー」

ルーナの課題は
「友情」のフレーバー
だったのかあ。

ナツ「リリー！
あと、ルーナ！
元気でなー！」

リリー、ルーナ「うん！
バイバーイ！」

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

ナツ「リリー、
今何してるかなあ・・・」

リリー「ナツくん、
今何してるのかなあ・・・」

互いを想い、
空の彼方を見つめるカップル。

住む世界が違っても、
愛の力は無敵だよね！

ルーナ「ナツ・・・
いい男だったじゃない。
まあ、私には『お菓子』っていう
恋人がいるからいいからね！」

編入初日に姿を消した
２人の美少女の話は、
今もなお、ニコラ学園にて
語り継がれている。

＊ｅｎｄ＊