高校デビュー！

CAST国本姫万里

作者：botor

2025.10.11

うち、国本姫万里！
ヒマリって呼んでねっ！

うちは、いわゆるぎゃる。

１年前までは地味で
ぱっとしない女子だった私は、
「ニコラ」のおかげで
生まれ変われた！

私には、好きな人がいる。
幼なじみの、西優行。

ユアンは幼い時からずっと
私のそばにいて、
私を助けてくれる。

私、変わりたい。

地味な私は卒業したい。

ユアンの隣にいられる人になりたい。

そう思って読み始めたのが、
雑誌「ニコラ」。

ギャルの松田美優ちゃんの
メイクを見た瞬間、
「これだっ！」って、ピンときた。

そして、中学を卒業するタイミングで、
私は自分を変えた。

もともと苦手なタイプの
チャラい子たちとばかりつるんで、
バカみたいなことばかり話して、

規則違反のメイクをして、
好きでもないバスケ部に入って。

こんな私でいいの？　って思う。

だけど、私はユアンに
好きになってもらいたい。

ユアンだって、地味な女子なんか
好きじゃないはず。

「ねーユアン、
いっしょにかーえろっ！」

ユアンは「ああ、うん・・・」

と、少し引いたような声を出し、
うちと少し距離をとる。

「なんで離れるの？
うちのこと嫌い？」

ちょっと甘えた声で言う。

ときどきギャルとの
ギャップを見せるのが、
ヒマリ流恋愛テク。

「ああ、うん。嫌いだよ」

思ってもみない返事を返され、
うちはひどい顔をしてたと思う。

「今なんて・・・」

「今のお前はヒマリじゃない。
バカみたいだ」

そう言って彼は去っていった。

「え・・・」

呆然とする私の背後から、
凛とした声がかかる。

「へー、西くんは国本さんのこと、
好きじゃないんだね」

ちょっと意地悪そうな声だ。

振り返ると、佐々木花奈が
立っていた。

「げっ・・・」

彼女とは中学も同じだった。

あの中学校から
この高校に来た生徒は、３人。

うち、ユアン、佐々木花奈。

彼女はいわゆる
陰キャというものである。

一日中勉強ばかりして、
いっつも下を向いてる。

「国本さんは、彼に振り向いてもらいたくて
自分を変えたのに、
西くんは、今の国本さんが好きじゃないとか？
くっだらなー」

彼女は吐き捨てるように言う。

「ほんとの自分から逃げるの？
それって弱いよ、
いくら濃いメイクして、
強い顔面してても。じゃ」

そっか。

私、ほんとの自分に
背を向けてたんだ。

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

「ヒ、ヒマリ・・・？」

「なんかあった・・・？」

友達が心配するような目を
向けてくる。

でも、その目の奥にあるのは
私を小馬鹿にしてる光。

「ううん」

私は、柔らかく笑う。

驚いて当然だ。

今の私はノーメイク、ノーセット、
スカートの丈もいつも通り、
制服ピアスもしてない、
スクバのじゃらづけキーホも全部はずした。

ユアン。

ユアンに、私を見せたい。

前の私の方が
キレイだったはずだ。

メイクに守られてたから。

でも、今の私は今の自分の方が好き。

「変わったね、一晩で」

佐々木花奈が
ささやきかけてくる。

その声もうれしかった。

「ユアン！」

ユアンの姿を見つけ、
私は声をかける。

「ヒ、ヒマリ？」

ユアンは驚いて固まる。

「私、今までほんとの自分に背を向けてた。
かわいくなれば、ユアンも
振り向いてくれると思って。
今の私、好き？」

ユアンはふっと笑った。

「・・・俺は、ヒマリが
ギャルっぽくなったのは嫌だったけど、
ヒマリの好きなものを
否定するつもりはないよ。
ただ、俺以外の男のために
変わろうとしていたら嫌だなって」

それって、嫉妬？

「もちろん、好きだよ」

＊ｅｎｄ＊