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普通志望のあたし

CAST十文字 陽菜十文字 陽菜

作者:ゆず故障

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2026.06.12

普通に高校生活を過ごすこと、
それが今のあたしの夢
ってゆーか目標。





あたしは、中学を卒業と同時に
普通の人生を送ることを決意している。





普通に勉強して。
普通に就職して。





恋愛はあまりしたくない。





【普通】って、平凡で
退屈なのかもしれないけど、
1番幸せなんじゃないかな、って
あたしは思う。













**********





高校の入学式はちょっと・・・
ううん、かなりワクワクするのは
あたしだけかな?





ワクワクするのと同時に
不安も高まる。





普通に友達出来るかな。





普通に高校生活過ごせるかな。





―――あ、あたし、3組だ。













**********





「3組の担任になった、久野だ。
これから1年間―――・・・」





ぼーっと担任の話を聞いていると、
隣の人がツンツンッと
あたしの腕をつつく。





『な、に?』





あたしは、明らかに迷惑そうな
表情を浮かべて、口パクで
何とか会話しようとする。





『なんでもねー』





じゃあつつくなっ!





心でツッコミを入れ、
前に向き直す。





するとまた腕に
つつかれている感触が。





『だーから、な、に!?』





『だーから、なんでもねーって』





フフッと、まるでいたずらっ子のような
笑みを浮かべるその人は、
明らかにあたしを馬鹿にしてるって
ゆーか遊ばれてる。





「十文字ー」





会話という名の
口パクケンカをしていると、
不意に担任があたしの名前を呼んだ。





「隣の男子が気になるのは分かるが、
ちゃんと前向けー」





なっ・・・!





その瞬間、ドッとクラスに
笑いが起こる。





パッと隣を見ると、
さっきまでこっちを向いていたのに
反対の方を向いている。





・・・





その後ろ姿はよーく見ると
微かに上下に揺れている。





「わっ、笑うなあああ!」





思わず隣に向かって
叫んだあたし。





「いやいやー笑えるって」





隣の人ではなく、
担任が答える。





その瞬間、またしても
ドッとクラスに笑いが起こる。





「あっ、いや、その、
すみません・・・」





チラッと横目で隣を見ると、
さっきより激しく上下に揺れていた。





・・・最悪。





普通に過ごす予定だったのに。











**********





「いやーお見事!
初日から笑い取りっぱなしだね、
十文字サン」





HRが終わり、すかさず
隣の人が話しかけてくる。





「笑いなんて取りたくないし・・・
ってゆーか、なんで名前知ってるの?」





「さっき怒られてた時に?」





「~っ!」





「あ、俺、八神リョウスケです」





「あ、十文字ひなのです」





これはこれは、どうもどうも、と
改めて頭を下げるふたりは
他人から見ると
かなりおかしかったらしい。





あたしたちを見ていた数人の人が
クスクスと笑っている。





「いやー好調ですね!
十文字サン」





こんなに目立つことは初めてで、
・・・思わず逃走。





「えっ!?」





後ろから八神くんの焦った声が
聞こえたような気がするけど
もう知らない。











**********





「はあ・・・っ」





辿り着いたのは屋上。





なんでこうなったんだろう。





あたしは目立たず普通に
静かに過ごしたかったのに。





両足を抱え、小さくうずくまる。





「はあっ・・・十文字さん、足はえー」





「!」





声のする方を見ると、
息を切らした八神くんが
そこにはいた。





「十文字さん、いきなり
走り出すんだもん。
びっくりしたわー」





全然びっくりしたようには
聞こえないけど、そこはスルー。





「逃げる十文字さん、
追いかける俺。
・・・また笑われてたよ」





さっきと同じで
いたずらっ子のような笑みを浮かべて、
楽しそうに話す八神くん。





でも、普通に過ごすを
モットーにしている
あたしは笑えない。





「明日にはうわさに
なってるかも~」





「・・・なんであたしに構うの?」





放っておいて欲しい。





あたしが普通に過ごすためにも。





「なんで? 面白いから」





「おもっ・・・、
あたしは面白くないよ」





「他人から見てると
相当面白いよ?」





「面白くない!」





「面白い!」





「面白くない!」





「面白い!」





「面白くない!
・・・って、もういいよ」





無駄な言い争いだと
気づくまでに
時間がかかってしまった。





「あたしはね、
普通に過ごしたいの」





「・・・普通って?」





「そこそこ友達もいて、
楽しく静かに過ごしたいの。
目とかつけられていじめられるのは
もう論外でしょ」





「・・・いじめられてたの?」





そう。





あたしは中学のとき、
いじめられていた。





いじめられる前までは
いわゆる女子のリーダー的な
存在だった。





でも、あたしを嫌って
ねたんでた女子も
少なからずいた。





そんな時、人気の教育実習の先生と
いい感じになったあたしは・・・





友達に裏切られ、教育実習の先生にも
裏切られた。





嫉妬って怖い。





人間って怖い。





友達って怖い。





昨日まで仲よくしてても
いきなり手の平ひっくり返すんだもん。





そのときのことを思い出すと
自然と涙があふれ、気がつけば
何もかも八神くんに話していた。





「―――だからあたしは!
普通に過ごしたいの!」





その刹那。





ぎゅうっと八神くんに
抱き締められる。





おまけに頭をポンポンと
叩かれる。





「十文字は何も悪くないよ。
だから自分の感情を殺すの、やめなよ」





頬を伝う涙が止まらない。





「十文字は、裏切られんのが怖いんだろ?
だからって、表面だけの関係も良くない」





分かってる、そんなこと。





八神くんはあたしを
ますます強く抱き締めて、
耳元でそっと囁いた。





「俺は裏切らないよ、十文字のこと」





「そんなことっ、分かんないじゃん・・・!
八神くんだって、いつかあたしを・・・」





「信じてよ、俺のこと」





・・・不思議。





今日初めて知り合ったのに。





それなのに、八神くんを
信じてしまうあたしがいる。





「俺ね、十文字さんが好きなんだわ。
一目惚れってやつね」





「っ!?」





「もうちょい経ってから
告ろうと思ったけど・・・
十文字さんがあまりにも
かわいいから」





ニカッと笑う八神くんは
見たことないぐらいに輝いていて。





あたしはいつの間にか
惚れていたんだ。





「・・・うれし・・・っ」





八神くんの笑顔は
どんな言葉よりも
信じられる気がした。





だからもっと
八神くんの笑顔が見たくて
あたしは・・・





「あたしも八神くんのことが・・・」





見つめ合い、絡み合う視線。





・・・あれ?





「俺のことが?」





八神くんが先を促してくるけど、
あたしはちょっと気になることが。





「ふ、十文字さーん?」





そしてツカツカと
屋上の入り口に歩み寄って
扉を開けると―――――。





「・・・やっぱり」





あたしが背中に感じた視線の通り、
そこにはクラス全員がいた。





あ、あと担任も。





タチの悪いことに担任は
カメラを片手に持っていた。





「いつから、撮ってたんですか?」





「えー最初っから?」





テヘッと笑う先生は
最高にかわいくない。





「先生ー、あれだけ
バレないようにしろって
言ったのに!」





「ごめんごめん」





「八神くん、これは、何?」





どうやら主犯である
八神くんに歩みより、
問い詰める。





「ん? いやー、十文字さんと
俺との貴重なラブシーンを
記念に残してもらおうかと」





酔狂な人だな、本当に。





もしあたしが断っていたら
皆の前で振られた上に
ビデオカメラで撮られる羽目に
なるかもしれないのに。





「で、続きは?」





「え?」





「あたしも八神くんのことが?」





八神くんではなく
何故か担任が答える。





もちろん片手にはビデオカメラ。





「い、言えるかあああ!」





もちろん、このあとの
あたしの高校生活は
百歩譲っても
普通だとは言えなかった。





「普通じゃなくても幸せでしょ?」





「う、うるさい!」









*fin*

この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。また、掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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