ブレスレット
作者:まえまえ
「ヒマリ!」
朝。
学校の準備をしていた私は、
自分の部屋の窓から顔を出した。
「今行く!」
そういうと私は、
部屋から出て
階段をドタドタと降りた。
玄関につくと
そこにはあいつがいた。
「おせーよヒマリ!」
「ごめんごめん、ハルト~!」
私は、嘘っぽく
顔の前で手を合わせ、
舌を出す。
ハルトは、
あきれ顔で言う。
「遅刻するから行くぞ!」
「はーい。行ってきまーす!」
私が言う。
私は、国本ヒマリ中1。
ハルトは、同い年の幼馴染。
いつも一緒に登校してるんだ。
「今日、ミニテストだぁ~」
私が言う。
「そうだ!
俺、勉強してない!」
ハルトが言う。
「いつもでしょ~!」
「あははは!」
2人で笑う。
この時間がすごく楽しかった。
いつまでも続くんだって・・・
あの時はそう思っていた。
―☆―☆―☆ 学校 ☆―☆―☆―
ハルトとは、違うクラス。
「ヒマリ~、おはよ!」
「ミユウ! おはよっ♪」
心友のミユウは、天然だけど
相談にはちゃんとのってくれる
優しい子。
「相変わらずだよねぇ~」
ミユウが言う。
「何が?」
私が言う。
「ハルトとだよ!
幼馴染っていっても
仲良すぎだよ!!」
ミユウが言う。
「そうかなぁ~? 普通だよ」
私が言う。
「普通じゃないよ」
ふいに後ろから声がした。
振り返ると、
心友のシャノンがいた。
シャノンは、スポーツ万能のイケ子。
そして、すごく告白されてるとか・・・
「そこまで仲良しで
付き合ってない人なんか
いないと思うけど?」
シャノンが言う。
「え~。そんなことないよ~!」
私があわてて言う。
「確かに」
ミユウが納得する。
「ハルトのこと、
好きじゃないの?」
シャノンが言う。
「好き?
うーん。別に・・・」
私が言う。
好きっていう感覚は無いな。
どちらかというと、
幼馴染っていう感覚・・・
「ま、そのうち
分かるんじゃない?」
ミユウが言う。
そうかなぁ?
仲がいい=好きなの?
―☆―☆―☆ ハルト ☆―☆―☆―
「ハルト~!」
「おっ、ユアン!」
俺の心友、西ユアン。
かっこよくて、もてるヤツ。
「ハルトさぁ、
国本のこと好きなのか?」
「えっ何で?」
「だってさ、
チョー仲良いじゃん。
幼馴染っていっても、
いくらなんでもさぁ。
カレカノっぽくない?」
ユアンが言う。
「別に。
あいつは、幼馴染!
付き合ってるわけじゃねーから」
俺が言う。
あいつは、幼馴染・・・
そのはず・・・
―☆―☆―☆ ヒマリ ☆―☆―☆―
朝。
「ヒマリ~!」
あっ!
もう来た!
「待ってて!」
私は、鏡の前で
制服のチェックをする。
スカートを3回はらって後ろを向く。
「よし、OK」
そう小声で呟いて部屋を出る。
階段をドタドタと降りる。
「ハルト、おまたせ!」
玄関で待ってくれていた
ハルトに言う。
「行くぞ!」
ハルトが言う。
いつもと変わらない日常。
ただ、違うのは・・・
私が少しハルトに
よそよそしくなっていること。
「どうしたんだよ?」
「えっ・・・?」
「なんか・・・
今日のヒマリ、変」
「どういうこと?」
「なんていうんだろう・・・
なんか・・・うーん。変」
「なんか、今日
ハルトも変だよ?」
私がハルトの顔をのぞこうとすると、
ハルトがそっぽを向く。
いつもは、こっちを見てくれたのに・・・
「あ、俺、風邪気味なのかも!
ごめん、先行くわ」
「うん、分かった」
ハルトは、
ダッシュで走って行った。
風邪気味なのに・・・?
―☆―☆―☆ 学校 ☆―☆―☆―
私は、さっきの出来事を
ミユウとシャノンに話した。
「ヒマリ、鈍感~」
ミユウが言う。
「そ・れ・は♪
2人とも幼馴染じゃなくて、
両想いなんだよ!」
シャノンが言う。
「そ、そうなの?」
私が聞く。
「うん」
ミユウが答える。
「ヒマリ、好きっていいなよ」
シャノンが言う。
好き・・・
「えー! ムリムリムリ!」
私は、手を顔の前で振る。
「がんばれ!」
2人が言う。
え、え~・・・
でも、いうしかないよね。
よし、明日言おう!
「これ、告白のお守り!」
ミユウが差し出した手のひらには、
可愛いブレスレットがあった。
「可愛い・・・」
私が言う。
「これ、絶対に
告白が成功するんだよ! あげる!
そのかわり、ちゃんと言ってね♪」
ミユウが私の手のひらに
ブレスレットをのせる。
「ありがとう!」
私は、笑顔で言った。
―☆―☆―☆ 家 ☆―☆―☆―
「ただいま~!」
いつもだったら、お母さんが、
「おかえり、今日はどうだった?」
ってきいてくるのに、
今日はだれも「おかえり」
と言ってくれなかった。
聞こえたのは、
お父さんとお母さんが
奥の部屋で喧嘩をする声・・・
「なんでそうなんだ!!」
お父さんの声。
「あの子は
私が引き取ります!」
お母さんの声。
バリーン!!
食器が割れる音・・・
どうしよう。
あの部屋に入るべきかな・・・
私は、急いでローファーを脱いで、
部屋のまえに立った。
ドアノブに手を置く。
ゆっくりとドアを開ける。
「ねぇ・・・」
部屋に入った私が
1番初めに言った言葉はこれだった。
不安と悲しみで声が出ない。
「ヒマリ・・・」
お母さんが言う。
「離婚するんだよね・・・?
家族じゃなくなるんだよね・・・?
ねぇ!!」
私は、叫んだ。
泣きながら・・・・・・
―☆―☆―☆ 次の日 ☆―☆―☆―
「ヒーマーリー!」
今日もハルトが来た。
私は、いつも通り
鏡のまえに立つ。
そして、隅々まで
チェックしながら思った。
昨日思っていた今日、
好きっていうことは忘れていた。
結局、離婚することになって
私はお母さんのほうに
引き取られるようになったから。
そうしたら、
遠い鹿児島のおばあちゃん家で
暮らすことになるから、
今好きって言ったって、
どうせ意味なんてないだろう。
今日の夜、鹿児島に行く。
「この制服を着るのも最後か・・・」
独り言をつぶやく。
ブレスレットを
カバンの中にしまう。
そして、部屋から出て、
階段を静かに降りる。
今さら、昨日の事が
夢だったらって思う。
そうすれば、
いつものように
ハルトやミユウやシャノンと
笑っていられるから。
でも、昨日、
両親が喧嘩した部屋を見ると、
私の甘い考えが壊される。
部屋には、
割れた食器が散乱していて、
椅子さえ横に倒れている。
「おせーじゃん」
ハルトが言う。
「ごめん・・・」
私は、静かに言った。
「行くぞ」
私たちは、家を出た。
「どうしたんだ、元気ないじゃん」
ハルトが言う。
「別に・・・」
私から、感情というものが
なくなってしまった。
―☆―☆―☆ 学校 ☆―☆―☆―
「おはよ、ヒマリ!」
「ミユウ・・・」
「どうしたの、ヒマリ?」
ミユウが言う。
「あ、あのね・・・」
「ヒマリ!」
「シャノン・・・」
シャノンも来た。
「あのね・・・私、引越しするの」
私は、懸命の力を
振り絞って言った。
「ええぇぇ!!」
2人が驚く。
「だから、
ブレスレット返すね・・・」
私は、ミユウの手のひらに
ブレスレットをのせる。
「まさか・・・
告白してないの?」
ミユウが聞く。
「・・・うん」
私が答える。
「なんで!」
シャノンが言う。
「だって・・・意味ないじゃん。
私、鹿児島までいくんだよ?
もう・・・
2度と会えないじゃん・・・」
私が言う。
「・・・・・・」
2人は、黙ったまま。
「いままで、ありがとう」
私が言う。
―☆―☆―☆ 放課後 ☆―☆―☆―
私は、荷造りをしていた。
窓の外を見ると、
夕日が輝いていた。
「ヒマリ!」
ハルトの声が
聞こえるような気がした。
荷物を持ち、部屋を出て、
階段を降りる。
玄関には、たくさんの荷物が。
その荷物も持って、家を出る。
私とお母さんは、
夕焼けの道を歩いて行った。
―☆―☆―☆ ハルト ☆―☆―☆―
ユアンと話しているところへ
隣のクラスの伊藤と松田が
話しかけてきた。
「ヒマリ、引越しするの
知ってるよね?」
伊藤が言った。
えっ?
ヒマリが・・・?
「な、なんで!?」
俺が言った。
「離婚だって・・・
鹿児島にいくらしいよ・・・
フライトは、今日の夜・・・」
伊藤が言った。
「行かなきゃ」
俺が走ろうとしたとき。
「待って!」
松田が言った。
松田が差し出した手のひらに
ブレスレットがあった。
「ヒマリに会いに行くなら、
渡してほしいの」
俺は、そのブレスレットを
受け取って、走って行った。
―☆―☆―☆ ヒマリ ☆―☆―☆―
人が多い空港を
お母さんと歩いて行った。
《8時45分フライトの
鹿児島便に乗る方は、
A便にお急ぎください》
アナウンスが聞こえた。
「さ、急ぐわよ」
お母さんが言う。
「ヒマリ!」
後ろから、声がした。
振り向くと、
会いたくて、会いたかった
ハルトがいた。
「ハルト!」
私は、荷物を投げ捨て
ハルトに向かって走った。
そして、抱きついた。
「なんで言わなかったんだよ。
つらかっただろ?」
「ごめん・・・」
私の目から
たまっていた涙がこぼれた。
「俺、ヒマリの事、好きだから。
幼馴染じゃなくて、彼女として」
「私も、大好き」
伝わった・・・
やっと伝わった・・・
好きって・・・
「あっそうだ」
そういうとハルトは、
ポケットから
ブレスレットを出した。
「はい」
ハルトが私の手のひらに
ブレスレットをのせた。
私の手のひらで、
ブレスレットが輝いている。
「さぁ、行け」
ハルトが言う。
「うん」
私は、ブレスレットをつけて、
荷物をもって
A便のほうへ歩いて行った。
ブレスレットをつけた、
右手を振りながら・・・・・・
―☆―☆―☆ 7年後 ☆―☆―☆―
私は、今年で20歳。
短大を卒業して、会社へ就職した。
「ねぇ、知ってる?
今日から新しい人が
入社してくるんだって!」
足川さんが言う。
「そうなんですか?」
私が言う。
足川さんは、2こ年上の先輩。
もう、結婚してるとか。
「はい!
これから、新社員を紹介します」
部長の青山さんが言う。
ガチャ。
「はじめまして、今井です」
今井・・・
ハ、ハルト!?
―☆―☆―☆ 夕方 ☆―☆―☆―
「お疲れさまでーす」
挨拶をして、会社を出る。
もちろん、ハルトと。
「もう、びっくりしたよ!」
私が言う。
「あはは。就職するなら、
ヒマリがいるとこにしようと思って」
そういうハルトを見て
私も笑った。
そういえば、
こうやって話すの
懐かしいな・・・
あの時は、
こんなことになるなんて
思ってもいなかった。
「あのさ」
ハルトが言う。
「うん」
「結婚しない?」
「いいよ!」
そして・・・・・・
私は、今井ヒマリに
なりました♪
奇跡のような恋愛が
叶いました。
☆☆☆end☆☆☆
国本 姫万里
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