夜空ニ願いヲ

CAST榎本 月海榎本 月海

作者:はれるや

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2023.07.07

暑い夏の日。
照りつける太陽のした、
本のページをめくる。







私は、ルミ。
なんの取り柄もない、
地味子です。







家には、水を1人で
飲むことさえできない
おじいちゃんしかいません。







お母さんは、仕事。
暇なんで、
公園で本を読んでます。







「危ない!」







ルミ「きゃ」







ボールが、一直線に
飛んできた。







ギリギリ横を
ボールが突き抜けた。







ルミ「なんなの・・・」







小声で言いつつ、
顔をあげる。







「大丈夫か?」







ルミ「うん」







反省してそうだし、
いいや、と思い立ち上がる。







「あのさ。その本、
菊谷書店で買った?」







ルミ「え? ・・・うん。
なんで?」







「いや、そのカバーでわかった。
菊谷書店、うちの家だからさ」







まさかの発言。
菊谷書店の息子さん、







確か・・・ユアンは、
だいぶ前に、交通事故で
亡くなってるはず。
何故嘘を?







ルミ「ウソ、だよね?
ウソは駄目だよ」







「ウソじゃないんだけどな、
ま、いいか。
ちょっと来てよ」







え?







その子に手を引かれて
ついてった。







私、あなたのこと
何も知らないのに。

















*...・・・*...・・・*







連れてかれたのは
菊谷書店。







ルミ「もう、何?
ウソって
知ってるんだから」







「何をすれば信じる?」







そう言われて、考えた。







菊谷書店は、
めいろのような形をしてる。







適当に本の題名を言って、
探して来てもらうのは
どうだろうか?







書店の息子なら
それくらいできて
当然よね!







ルミ「じゃあー・・・
もうすぐ七夕だから、
七夕物語がいいな・・・
探して来て!」







七夕物語とは、
もちろん皆知っている、
彦星さまと、織姫さまの話。







ルミ「ちゃんと
探してこれんのー?」







ちょっと
小馬鹿にしながら笑うと







「そんなことでいいのか?」







ルミ「えっ?」







「わかった。とってくる」







男の子は駆け出した。







めいろのような店内に
足音が響き渡る。







にしても、お客さんも
誰もいないんだ。







ていうか、ユアンって人、
生きてたら
どれくらいなんだろう。







どんな、人だったんだろう。







「はい!」







ルミ「うぁ」







「何その驚き方ー笑
これくらい余裕だし」







え? 本当だ。
なんで知ってんのよ。
本当に持ってきやがった。







ルミ「名前・・・は?」







「ユアン」







こくっと息を飲んだ。







ルミ「死んだはず・・・よね」







思わす持ってた本を落とした。
ユアンが拾って私に押し付けた。







ユアン「なんだ、知ってるんだ」







ユアンはため息ついた。







ルミ「どういうこと?
何が起きてんの?
死んだはずの・・・
あなたが・・・
え? なんでよ」







ユアン「落ち着いて。
ま、幽霊だって、
未練あるっつの」







ユアンが
私に触れようとしたら、
ユアンの手が
私の体を突き抜けた。







ルミ「きゃっ・・・
へんたいぃ!」







私が、顔を真っ赤にしても
ユアンはニヤッとしただけ。







ルミ「変態幽霊が!」







私が叫ぶと
ユアンは顔色を変えた。







ユアン「言ったな?」







ルミ「な、何よ」







ユアンは
私にキスをした。







暖かい感触が
くちびるに広がる。







会って1時間程度なのに・・・
何やってんのよ!







ルミ「馬鹿!」







私が、ユアンに
暴言を吐いたら、
頭がズキンとした。







ユアン「俺がキスすると
魔法かかるんだよね。
これから俺に暴言吐いたら、
頭痛が、襲うぞー笑」







ルミ「何その魔法!」







ユアン「解いて欲しかったら条件だ」







私は嫌々耳を傾けた。







ユアン「夏祭りを
一緒に、見てくれ」







ルミ「は?」







ユアン「生きてる間に、
1回でも女と
お祭り行きたかったんだよなー。
浴衣っていう条件ね」







ルミ「何それ・・・?
そんなんでいいの?」







ユアン「あぁ。
七夕の夜マルバツ公園な」







ルミ「明日じゃん!
もう。わかったわかった」







ユアン「じゃー帰ろー」







ルミ「は?」







ユアン「お前んちだよ」







ルミ「馬鹿!」







ユアン「冗談だっつの」







ユアンが、私の頭に、
手を乗せた。







ドキッ







ふいに胸が高鳴る。







ルミ「じゃ、明日ね」







ユアン「ん、バイバイ」







頭に乗せてあった手に、
温もりを感じた。







幽霊なのに、人間みたい。







ていうか、
人間でしょってくらい、
違和感ない。

















*...・・・*...・・・*







パジャマのまま、鏡を覗く。







まだ、夢だったんじゃ
ないかって思う。







なんであの時
公園にいたの?







なんであの時
ボールを蹴ったの?







なんで私を書店に
連れてったの?







なんで・・・
私を誘ったの?







もう、馬鹿みたい。







その日は1日中
ぽかーんとしてて、
たまご落として割っちゃったり
シャーペン握り過ぎてこわれたり
ついてない。







おじいちゃんに
ご飯を食べさせてあげて、
やっと仕事が終わる。







浴衣をタンスの奥から
引っ張り出した。







ルミ「げほっ、臭い」







浴衣をなれない手つきで
着てみた。







ルミ「・・・結構
似合ってんじゃん」







ちょっと自信ある・・・
と、思いつつ、ゲタを履いた。







「行って来ます」
と、かるく言って
マルバツ公園へ向かった。

















*...・・・*...・・・*







「可愛いね」







「ほんとほんと。
俺たちと遊ばない?」







手首を掴まれて
ヒヤリとし、震える。







振り返ると
少し大きい男の人たち。







「すいません。急いでます」







下を向いてはっきり言った。







「こっち、来て」







男の人に引っ張られる。







嫌だ。
嫌だ嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ。







「すいません、
ルミちゃーん、大丈夫ー?
ほら、行くよー」







ん?
うえを見ると。







「ユアン!」







ユアンが強く
私の手を握ってた。







目は合わせろと言ってる。







ルミ「わ、わかった、お兄ちゃん」







半分泣きながら
ユアンに抱きついた。







男の人は、
すぐにどっか行った。







ユアン「ちょっ、
恥ずかしいからやめろ!」







ルミ「なんで私、
妹扱いなのよー泣」







ユアン「それは・・・」







ルミ「助けるなら
かっこ良く助けろー泣
馬鹿っ!」







気付いた時は遅かった。
ズキン。
頭が痛くなる。







ルミ「痛いよー泣」







ユアンは、クスッと笑った。
ドキ。







ルミ「何よ、何よ、」







ユアンのえがおを見て
また泣けてくる。







好き。
会って1日なのに
信じられない。







ユアン「我慢できない」







小声で聞こえて
パッと顔をあげると
くちびるが重なった。







最初やられた時とは
全然ちがう。







ドキドキして
心臓が張り裂けそう。







お祭りの太鼓のおと
花火のおとが







胸を熱くした。











もう、これ以上
好きになったら、







幽霊との恋なんて
叶わないって、







現実を見るたび
悲しくなる気がする。







ルミ「もう、夢叶ったでしょ」







泣きながら、できるだけ
声を振り絞った。







ユアン「・・・・・」







ルミ「なんか言ってよ」







ユアン「またな」







ルミ「え、」







ユアン「未練終了だ。
もう、この世にいれない」







ルミ「そう、だよね」







ユアン「本当の未練は、
愛する人ができること」







ルミ「愛する人・・・?」







ユアン「そ。
つまり、ルミ、お前な」







もう、酷い。







別れ際に、そんな、
悔しいよ。







ユアンが消えかける。







さいごに強く抱きしめた。







七夕のよる、
貴方に会えてよかった。







もちろん短冊には







《あなたがいつまでも
笑ってられますように》











☆END☆
*ニコ学名作リバイバル*
この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。

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