叶わない恋、そのおかげで強くなれた

CAST稲垣来泉

作者：/////HART/////

2025.08.05

私は稲垣来泉、
中学生です！

「おはよ～」

「クルミちゃん、
おはよ～」

この子は梨里花ちゃん。

小学校６年間一緒の友達で、
今も同じクラスです。

なんでも話してます！

でも、１つだけ話せてない、
誰にも言えない秘密があります。

「先生、おはようございま～す」

「クルミ、リリカ、おはよう」

この先生が松瀬だいじ先生、

担任、技術担当の先生です。

実は私、
この人に恋してます！

やさしいとことか、
面白いとことか、、、

ホントに好きなんです。

変ですよね・・・

私も先生に出会う前までは、
生徒と先生の間の恋なんて
ないと思ってたのに。

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

ある日の
技術の授業中のこと。

「やばい、お腹超痛い・・・
今日に限ってリリカちゃん休みだし・・・
先生黒板の前だし、
言えない・・・やばい・・・」

経験したことのない
お腹の痛みが私をおそった。

（チャイムの音）

「休み時間だ、
次の授業の準備したら
保健室行こう」

そう思った瞬間、
松瀬先生が私の横に来た。

「だいじょうぶか？
授業中、ずっと変だったけど」

「お腹痛くて・・・
今から保健室行くんで、
だいじょうぶです」

そう言って立つと、
私は座りこんでしまった。

「本当にだいじょうぶか？」

答えられずに
うずくまっていると
先生はおんぶの姿勢になって、

「保健室まで連れて行くから、乗れ！」

と言ってくれた。

運んでくれた。

先生の背中はやさしく、
温かかった。

そして、
しっかりしていた。

そう感じたとたん、
胸が締めつけられた。

この恋は、
叶わないのだから。

保健室につくと、
先生は思い出したように、

「養護の先生休みやったな、
女性の先生おらんのやけど、
手当、先生がやってもいいか？」

といった。

「はい、お願いします・・・」

（やばい、これ以上
やさしくされるとダメだ・・・）

そう思った私は、

「先生、カイロみたいな温かい物
ありますか？」

と聞いた。

保健室にはないだろうから、
職員室に取りに行くはずだ。

その間にどこかに行こう。

「職員室にあるから、
取ってくるな。
安静にしとけよ」

先生はそう言って
職員室に向かった。

今だ、今しかない！

私は保健室から出て、
ひとけのない廊下へ向かった。

でも、お腹が痛い私は
ゆっくりとしか行けない。

先生に見つかった。

「安静にしとけって言ったやん、
なにしとるんや!!」

先生のやさしさが苦しい。

いつのまにか、
涙と言葉があふれていた。

「松瀬先生のことが好きなんです。
でも、ダメだって分かってる！
今日みたいに、
先生のやさしさに触れるたび、
苦しくなっちゃう。
だから、忘れようとしてるのに、
忘れられない。
どうしたらいいですか？」

先生は驚いたが、
冷静に答えた。

「僕らは教師という立場がある。
それを守らなくちゃいけない。
それに、クルミを傷つけることにも
なってしまう。
それは絶対に嫌だ。
だから、クルミの気もちには答えられない。
これからは僕を中学校の教師という目で
見てくれないか？
その好きという気もちを、
尊敬という気もちにしてくれないか？
僕は、一生クルミの先生だ」

私は松瀬先生が、
私たちのために言ってくれている、
そう納得して、

「はい、がんばります！」

そう答えた。

それから卒業して、
高校で初彼氏ができた。

中学の卒業式の日、
松瀬先生とは連絡先を交換して、
たくさん、相談に乗ってもらった。

人間関係、
進路のことなどたくさん。

そのおかげで、今は２５歳。

中学校教師として、
母校で働いています。

今でもあのことは
忘れていない。

でも、あのことで私は
強くなれた。

今でも
松瀬先生のことは好き。

でもその好きは、
尊敬の好きだ。

新たなことに
気づかせてくれてありがとう。

松瀬先生のおかげで、
たくさんの幸せを感じられてるよ！

本当にありがとう、
松瀬だいじ先生!!

＊ｅｎｄ＊