ガラスの檻と3つの心

CAST白水ひより白水ひより

作者:~ルミネ~

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2024.09.04

はじめまして。
私は、白水ひより。





ニコラ学園に通っている
中学3年生。





私には、幼なじみであり、
同じクラスの星乃あんなと
今井暖大がいる。





私たちは、小学校の頃から
いつも一緒にいて、
笑ったり、泣いたり、
たくさんの時間を共に過ごしてきた。





けれど最近、心のどこかで
感じている違和感が
私たちの関係に影を落としている。





ある日、放課後に
3人で図書館に集まって
勉強をしていた。





いつものように
勉強しているはずだったけど、
私は集中できないでいた。





頭の中をぐるぐると回るのは、
最近暖大に対して抱いている、
言葉にできない複雑な感情だった。





「ねーねー!
あんな、ひより、こっち来てみて。
すごい面白い本見つけた」





いつの間にか
本棚を見ていた暖大の声で
我に返った。





「あ、、うん。すぐ行く」





私は慌てて返事をしたが、
心は落ち着かないままだった。





あんなと並んで暖大のところに行くと、
彼が持っていたのは、
見たこともないガラスでできた本だった。





ページをめくると、
美しいガラスに描かれた絵が
次々と現れる。





(何この本? 見たことない、、、し、
ガラスって、危ないじゃん)





「このガラスの本、
俺たちみたいだと思わない?」





暖大が突然言った。





「どういう意味?」





あんなが首をかしげた。





私も意味がわからなかった。





「ガラスって、すごく
繊細で壊れやすいだろ?
でも、その透明さや輝きがきれいじゃん。
俺たちの関係も、
そんな気がするんだよね」





暖大の言葉に、
私は息をのんだ。





私は感じた。





暖大も、私たちの関係が
微妙なバランスの上に
成り立っていることに
気づいているんだ。





そして、ガラスのように、
ひとたびヒビが入ると
修復できないかもしれないと。





日が経つにつれて、私の心は
ますます揺れ動いていた。





暖大への想いが
日に日に大きくなっていく一方で、





あんなも暖大に対して
特別な感情を抱いていることを
知っていた。





あんなは決して
それを口にしなかったが、
私には分かってしまった。





あんなが暖大を見つめるその目に、
言葉にできない感情が
宿っていることを。





一方、暖大は
あんなと私の間で、
どちらにも特別な感情を
抱いているように見える。





彼の態度は、どちらか一方を
選ぶことができず、
3人の関係を守ろうとしているように
感じられた。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





とある日、学校の帰り道、
私は勇気を出して
暖大に問いかけた。





「暖大、私たちの関係って・・・
変わっちゃうかな?」





暖大は驚いたように
私を見つめたが、
すぐに優しい笑顔を浮かべた。





「ひより、俺は2人を大切に思ってる。
でも、正直に言うと、
俺自身がどうすべきか
分からないんだよな」





その発言に、
私は何も言えなかった。





暖大も、心の中で
葛藤しているのだと気づいたから。





私たち3人の関係は、
まさにガラスの檻の中に
閉じ込められた
繊細な心のようだった。





壊れやすく、だけど、美しい。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





ある週末、あんなに会うため、
彼女の家を訪れた。





自分の気持ちを隠し続けるのが
辛くなっていた私は、
意を決して話を切り出した。





「あんな、私、暖大のことが
好きかもしれない」





あんなは目を見開いたけど、
すぐに笑って、





「ひより、私も同じだよ。
でも、私はひよりのことも
大好きだから、傷つけたくないよ」
と答えた。





私は、涙がこぼれた。





私たちはお互いに
同じ気持ちを抱えながら、
それをどうすることもできないでいる。





それでも、友情を壊したくないと願う
あんなの優しさに、
私は胸が締めつけられた。





あんなも泣いていた。
私と同じことを思っているから。





その日は2人で
しばらく泣いていた。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





月日は流れ、私たちの関係は
微妙なバランスを保ちながら
続いていた。





暖大は時々、あのガラスの本を
思い出させるような言葉を口にした。





「俺たちの関係は、壊れやすいけど、
その中で1番大切なのは
お互いを思いやる心だと思う」





「「、、、、、、、、」」





翌日、私たちは3人で
カフェに集まり、
これからどうするべきか
話し合うことにした。





暖大は、もう決断を出すべきだと
感じていたらしい。





「俺は、2人とも大切に思ってる。
でも、気づいたんだ。
俺の好きな人は、ひよりだ」





あんなは静かに
その言葉を受け入れた。





「暖大、私は暖大がひよりを
選んだことをうれしく思ってる。
ひよりが幸せなら、それでいい」





私は、あんなの優しさと強さに
心から感謝した。





私たちの関係は
確かにガラスのように
繊細だったが、





そこにはお互いを尊重し、
思いやる心が確かにあったのだ。





「暖大、、、、
私も好きです。
付き合ってください」





「もちろん」





「お幸せに、じゃあ先帰るね」





「あ、、!
あんな、、、、、」











「、、、、はあ。
改めて失恋って辛いな。
でも、2人には泣いてるの
気づかれなくてよかった」





あんなはで静かに、静かに、
泣きながら帰った。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





後日、私はあの図書館を訪れた。





あのガラスの本を
もう一度見たかったから。





だけど、探しても探しても
その本は見つからなかった。





あの本は、私達が変わるきっかけを
作ってくれたのだろうか。





そして、私達は
お互いの気持を伝え合えたから、
あの本は消えたのだろうか、、、





そう考えることにしよう。





「ひより~~!!」





「あれ? あんな?」





「へへ。
たまたま近く通ってたら
ひより見つけて入ってきちゃった!
暖大も偶然いたから連れてきた~」





「おーす!
たまたま会えてラッキー」





「ほんと、ラッキーだね!」





「ねーね!
そこのカップルさーん、
一緒にスタバいかなーい?」





「「行く行く~!」」





私達の関係は、新たな形で
続いていくことになった。





友情と恋愛、その二つの間で
揺れ動く感情が、
私たちをより深い絆で結びつけた。





「ひより、、、、、
俺達って繊細だけど、最強だよな」





「うん」





これからも、
この関係は壊さないし、
壊れない。





ガラスは、とてもとても繊細。





だけど、美しく、強い。







*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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