これからも、ずっと。

CAST白水ひより白水ひより

作者:まいまい。

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2023.09.02

私、白水ヒヨリ、2年生。





今は図書委員長の仕事中。





ニコラ中学の4階にある
この図書室は、
それほど広くないけど
綺麗だって有名で。





なのに、
図書室を使う生徒は、
年々減ってきている。





でも図書委員って
仕事が地味なんだよねっ。





利用者が少ないから
余計にね。





他の図書委員は
仕事サボりがちだし、





全部1人でやらないと
いけない。





あーなんで、
2年生の私が
委員長なんて・・・





ガラガラ・・・





急に図書室の扉が開く。





「どーもっ」





現れたのは
顔の知らない男子。





多分・・・2年生。





「どうも」





軽く返事を返す。





初めて見る人なのに、
何故か親近感があった。





彼は1人でぶらぶらと
自分より背の高い本棚を
見上げながら歩いた。





でも、何か
本を探しているようには
見えないけど。





不思議に思った私は、





「あの?」





と、彼に言った。





「はい?」





彼が私を見つめる。





「何か、お探し・・・ですか?」





私が尋ねると、
彼は一瞬考えて、





「いや、特に。
オススメの本、教えて」





と、逆に質問してきた。





「あっ、はい。
じゃあ、そこの椅子に
座ってて下さい!」





私はそう告げると
早足に本棚へ。





自分の好きな本を探す。





あっ、そういえば。





どういう本がいいか。
なんて、聞いてなかったな・・・





まぁ、いっか。





私のオススメの本を
教えればいいんだもんね!





本棚から1つ本を取ると、
彼のところへ向かった。





彼は言ったとおり、
椅子に腰掛けて待っていた。





図書室には大きな机に、
椅子が取り囲むように
たくさん置いてある。





彼に近づくよ。





「はいっ、これ!」





と、本を渡しながら
言った。





「ありがとう!
これは、どんな本?」





彼は笑いながら
言った。





その笑顔に少し
キュンとしてしまった。





「・・・あっ。
この本はね・・・」





やばい、
ぼーっとしてた!





「ごく普通の男子が、
転校生の女の子に
一目惚れするお話なんだっ」





簡単にあらすじを
説明。





「へぇ? 面白そう!」





彼はそう言うと、本を取り
図書室から出て行った。





帰り際に「ありがとう」
と告げて・・・





あっ、そういえば
名前・・・





本を返してもらう時に
聞けばいっか。





彼が図書室にいることが
一瞬の出来事のように感じた。



















・*。・ 教室 ・。*・





「ヒヨリ?!」





「あっ、アンナ!」





アンナは親友。





「毎日昼休みに
図書委員の仕事なんて、
ヒヨリ大変だね?」





アンナが
悲しそうに言う。





「まぁ、なっちゃったもんは
仕方ないっしょ!
昼休みにアンナと遊べなくて
辛いよ」





前向きなこと言いつつ、
ホントはめんどくさいなぁ。
なんて。





でも、今日彼が
図書室に来てくれて。





なんか少し
楽しくなったんだよね。



















・*。・ 次の日 ・。*・





ガラガラ・・・





「こんにちはっ」





今日も彼がやってきた。





「こんにちはっ。
本、どうだった?」





「すっごい面白かった!!
はい、返すね」





あんまり彼が
笑顔で言うものだから、
思わず照れてしまう。





「うんっ」





本を受け取ると、





「あっ、そうだ名前・・・」





「オススメの本、教えてっ!」





私の言葉が
打ち消されてしまった。





まぁ、聞くタイミングなんて
いっぱいあるよねっ!





「オススメの本ね、了解!」





私は本棚へ向かうと
本を見つけて取ってくる。





彼のところへ向かうと、
彼は椅子に座っていた。





でも、頬杖ついて
少し辛そう・・・?





風邪でもひいてるのかな?





「大丈夫?」





私が聞くと、





「うんっ、大丈夫!」





笑顔を見せて答えた。





元気そうだったので、
私はあまり気にせず、





「これ!」





本を差し出した。





「おー!
これはどんな本?」





「これは、
ファンタジー小説なんだけど、
主人公がひょんな事で
魔国に行ってしまうの」





「へぇ?! なるほどっ」





彼は本を取ると、
「ありがとっ」と言って
出て行った。





あっ、名前
また聞くの忘れた・・・





同じ学年なのに、
知らない人いるんだな。





それから毎日、
彼は図書室にやってきては
オススメの本を持ち出て行った。





しかし、まだ名前は
聞き出せぬまま。





毎日会っていくうちに、
私は彼のことが
気になってきた。

















*・*・・・*・・・*・*





ガラガラ・・・





いつものように
彼が図書室へ。





「昨日借りた本も
面白かった! はいっ」





「うん!」





私は本を受け取る。





「あっ、そういえば
名前は・・・?」





「名前? えーと・・・
久野ハル」





少し戸惑っているように
見えた。





ハル・・・くん。





知らない名前。





「ハルくんって言うんだ!
私、白水ヒヨリ」





「ヒヨリね!」





よっ、呼び捨て?!!!!





そんなことに
照れてしまう。





「ヒヨリ、オススメの本
教えてっ!」





「了解!」





すっかり仲良くなった
私たち。





私はいつものように
本を持ってくる。





・・・・・・あれ?





椅子に座っているハルが
苦しそう・・・?





調子悪いのかな?





辛そうだった日から、
たまにこうなっていたけど
ホントに心配だ。





「ハルくん、大丈夫?」





顔をのぞき込む。





「あっ、うん・・・」





ホントに辛そう・・・





「ほ、保健室
行ったほうが・・・!」





「大丈夫っ!」





ハルは、
私をなだめるように
そう言った。





「ごめん・・・」





自分の行動に少し反省。





「平気だよ。
ところで、その本は?」





「あっ、これね。
これは、恋愛青春小説。
主人公の女の子の好きな人は、
実は重い病を抱えている人だったの」





この小説、
1番好きなんだ。





感動しちゃって、
涙が止まらなかったっけ。





「・・・なるほどぉ。
読んでみるね」





そう言うと彼は
図書室から出て行った。















・*。・ 教室 ・。*・





体調が悪そうな彼を思い出す度、
焦りが止まらなかった。





辛そうだったな・・・





ほ、ホントに大丈夫・・・
かな?





でも、アンナには言えず。



















・*。・ 次の日 ・。*・





今日、彼は図書室に
現れなかった。





体調不良でお休みかな。





なんて考えつつも、
心配で心配でたまらなかった。





なんで、こんなに
不安になるんだろ・・・





ただの、友達・・・
なのに・・・





不安が爆発して、放課後、
ついに先生に問い詰めた。





「先生っ!!
久野ハルくんって
今日お休みですかっ!?」





焦りが止まらない。





先生はきょとんとした顔を
している。





ドキドキ・・・・・・





先生が口を開く。





「久野ハルくん、なんて生徒は
ニコラ学園にはいませんよ」





えっ?
いない?





先生の言葉に
焦りが加速する。





なんで、いないの?





どういうこと?





「じゃっ、じゃあ
今日お休みの生徒は・・・!?」





慌てて尋ねると、





「あぁ、1人いたね。
5組の久野ナツくん」





久野・・・ナツ。




待てよ、おかしい。





久野ナツくん、
なんて知らないっ!





ナツ=ハルくん、だ!!!!





「そっ、その人って・・・っ、
た、体調不良・・・ですか・・・!?」





ドキドキ・・・





「いいえ。彼は昔から病気で
入退院を繰り返してるの。
だから、また入院したんじゃないかな・・・・・・
あっ、これは他の生徒には言わないこと!」





病気・・・・・・?
入院・・・・・・?





やっぱり、ただの
体調不良じゃなかったんだ・・・





「あっ、ありがとうございました・・・」





私はそう言うと、
ダッシュで病院に向かった。





ここの地域の人が行く病院といえば、
近くにある大学病院しかない。

















・*。・ 病院 ・。*・





「はぁ・・・はぁ・・・」





息をきらして
館内に入る。





「すっ、すいませんっ!!」





受付でナースさんに
向かって言った。





「はいっ」





「た、久野ナツさんのっ・・・
病室はどこですかっ!?」





「少々お待ち下さいっ」





ふぅ~。
息を整える。





「3階の201号室です」





ナースさんは、
そう私に答えてくれた。





「あっ、ありがとうございますっ!!」





礼を早々と済ませると、
すぐにエスカレーターへ向かい
3階へ。





フロアマップで
201号室を探す。





ここから
すぐそばのようだ。





歩いて向かう。





ナツくん、
私が急に会いに来たら
びっくりするかな・・・





なんかお見舞いのもの
持ってくれば良かったかな・・・





今更いろいろ
不安になってくる。





勢いでここまで
来ちゃったからなぁ。





部屋の前についた。





深呼吸して
ドアをノックする。





「はい」





中から声がした。





それは紛れもなく、
ナツくんの声・・・





その声に安心して、
ドアを開ける。





「・・・・・・こんにちは」





私はドアを開けて
そう言った。





ナツくんは、ベッドの上で
座っていた。





彼は目を見開いて
驚いているようだった。





でも、すぐその表情は
穏やかになって。





「来てくれたんだ」
と言った。





この笑顔が・・・
大好き。





「座って」





と言われたので、
ベッドの近くにある椅子に座る。





やっと落ち着いた私は
ホッと一息。





でも聞きたい事があったから、
ナツくんの目を見て聞いた。





「うん・・・
ねぇ、なんで久野ハルって
言ったの?
ナツくん・・・だよね?」





ナツくんは、
この言葉を聞くと
少し切ないような悲しいような
表情になった。





そして彼は口を開く。





「別れが、寂しくなると
思ったんだ」





「・・・・・・えっ?」





「ヒヨリとの別れが
寂しくなると思ったんだ」





「何、別れって?
また退院すれば・・・
すぐ、また・・・」





「もう俺は、退院出来ないって
気づいてるんだ。
昔から入退院して、病気を再発しては
治してきた。
でも、今回は・・・何も治療さえもしない。
これは、俺の病気が
もう治らないってサインなんだ・・・」





彼はうつむく。





その瞳に
涙が溢れていた。





勇気づけなきゃ。





「そん・・・な・・・・・・
そんな、ことないっ!
絶対治る・・・っ!」





「治らないよっ。
何回入退院してきたと
思ってるの?」





でも、根拠のない私の言葉なんて
かき消されて。





私はただ、
彼を見つめることしか
出来なかった。





「もっと、早くヒヨリと
出会っていたかった」





彼は上を見上げて
そう呟いた。





「私も・・・・・・」





私は、知らぬ間に
泣いていた。





「俺の残りの人生は、
後3日間」





「えっ・・・」





「なんとなく
勘で分かっちゃうんだよね。
後3日間なんてさ、
実感わかないし」





そう話す彼は切なくて・・・





私は、思わず彼を
抱きしめた。





思わぬ行動に
自分でも不思議に思う。





「残りの3日間、大切にしようっ。
そばにいてあげる。
私は・・・ナツくんが好きだから」





私はそう彼に言った。





やっと・・・
やっと届いたこの想い・・・





彼は抑えきれないほどの
涙を流していた。





「ありがとう・・・ヒヨリ。
俺も・・・俺も好きだよ」





その言葉に
喜びが込み上がってくる。





でも、この言葉は切なさも。





好きな人と、後3日間しか
一緒にいれないの?





そんな・・・
そんなの切なすぎるよ。





私は彼から離れる。





先に声を出したのは
ナツくんだった。





「前にヒヨリが教えてくれた本、
覚えてる?」





それって、
恋愛青春小説の・・・?





「覚えてるよ」





「ヒヨリと俺って、
主人公と好きな人に似てない?
ヒヨリが好きな人は、
重い病気をかかえてる人・・・」





あっ・・・・・・





「ごっ、ごめん・・・
なんか変な本貸しちゃった
・・・よねっ」





なんで、あんな本
貸してしまったのだろう。





きっと彼だって
傷ついたはず・・・





「全然! むしろ嬉しかったよ。
俺さ、この病気のせいで
元気出なかったんだけど、
小説に出てくる主人公の好きな人は、
懸命に生きてて。
俺もそうなりたいなって、
思えたからさ!」





よ、良かったぁ・・・・・・





安堵の表情を出す。





彼は笑顔だ。





あっ、そうだ。





「何か、欲しい物とか
してほしいことってある?」





そうたずねた。





「うーん・・・
あっ、オススメの本欲しいな!」





相変わらずの笑顔だ。





少し目が赤いけど。





「うん、分かった」





とっておきの本を
あげよう。

















・*。・ 次の日 ・。*・





学校終わりの放課後。





私は昨日と同様、
ナツくんの元へ。





今日はオススメの本を
持って。





「はい、これっ!」





本を彼に手渡す。





「ありがとう!」





私は彼に
本の説明をしてあげた。





説明しながら、
彼が昨日より元気がないことに
気づいた。





「大丈夫・・・?
もしあれだったら、
寝て休んでたら?」





「平気平気・・・」





ぜんっぜん
平気じゃない。





だって、
絶対辛そうだもん。





「小説は無理して
読まなくてもいいよ。
ナツくんの容態が1番大事」





「うん、ありがとう。
少し休むね・・・」





そして彼は
目を閉じて寝た。





寝顔が思ったよりも可愛くて、
しばらく見とれてしまった。





ここにいたら迷惑かな。





そう思って、
私は病室を後にした。

















・*。・ 2日後 ・。*・





今日が・・・
あのナツくんが
言っていた日。





放課後にダッシュで
ナツくんの元へ。





ここ2日で、
彼は見て分かるほど
弱っていた。





食事もあまり
取れていないんだって。





「ナツくん・・・」





「ヒヨリ・・・ごめん」





そう言う彼の声は、
かすれていた。





もう座る事が出来なくて、
ベッドに寝て上を見ている。





「ナツくん、大丈夫。
大丈夫だから・・・」





「もう・・・
無理みたいだ」





そ、そんな・・・っ。





「お、お医者さんと
看護婦さんはっ!?」





「連れて・・・来て」





「分かった・・・!!」





ダッシュで部屋を出て、
医療関係の方々を連れてきた。





「たっ、久野くん・・・!?」





戸惑いを隠せない
お医者さん。





「今すぐ設備を」





そう言う看護婦さんを
ナツくんが止めた。





「もう・・・俺は・・・
眠りにつきます・・・」





「やだ・・・やだよ・・・
やだっ!!!!!!」





思わず叫んだ。





私の顔が
涙でぐちゃぐちゃだ。





「ヒヨリ・・・・・・今まで、
ありが・・・とう・・・
はいっ・・・」





ナツくんは、
私に封筒を差し出す。





それを受け取った瞬間、
彼が差し出していた手の力が、
ふっと消えた。





思わず手を掴む。





「ナツくん・・・ナツくんっ!!
やだっ、死んじゃやだぁ~!!!!」





私の言葉が虚しく
部屋に響く。





「なんでよぉ~!!!!
ナツくんっ!
やだ・・・やだよ・・・」





涙が溢れて止まらない。





そのまま私は
泣きわめいていた・・・

















・*。・ 病院の屋上 ・。*・





やっと落ち着いた私は、
1人で屋上へ。





もう夕日が地平線に
沈もうとしている時間帯だ。





あっ、封筒・・・・・・





ナツくんがくれた
封筒をひらく。





そこには1枚の手紙と
数枚の色画用紙が入っていた。





―――――――――――――――――――――――――

ヒヨリへ。

これを読んでるって事は、
俺はもうこの世にいないってことかな。

ヒヨリともっと早く出会っていたかった。
早く想いを伝えれば良かった。

後悔はたくさん残ってるけど、

これからもヒヨリは自分らしい道を進んで。
俺はいつでも空から見守ってるよ。

この色画用紙には、
ヒヨリが貸してくれた本の感想とか
あらすじを書いてあるんだ。
結構綺麗にかけたから、図書室の壁にでも貼って。
そしたらきっと、利用者が増えるよ。

最後になるけど、ホントにありがとう。

                久野ナツ

―――――――――――――――――――――――――





涙が出てくる。





色画用紙には、小説について
書いてあった。





明日、これを貼ろう。

















・*。・ 数ヵ月後 ・。*・





「委員長さん、この本
貸してく―ださいっ!」





「はいはーい!」





あれから、図書室の利用者は
とても増えました。





どれもこれも、
ナツくんのおかげです。





きっと、ナツくんも
喜んでるかな。





これからも、図書室を、
私を、見守っていて下さい。







*おしまい*

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