お姉ちゃんだから。

CAST白水ひより

作者：ツキの名

2025.12.03

お姉ちゃんだから。

わたし、ひよりが
小さい時からずーっと、
言われてきた言葉。

わたしには、妹がいる。

かわいくてやさしくて
明るくて、人気者のサクラコ。

それに比べ、わたしは
地味なんだ。

勉強だけはトップに
入っているけど。

そんなわたしが
小さい時からずっと
言われてる言葉は、
「お姉ちゃんだから」。

妹と食べたいケーキが
被ったとき。

行きたい場所が違ったとき。

見たいテレビのチャンネルが
違ったとき。

そういうとき、両親はわたしに
「お姉ちゃんだから」と言う。

ほんとは、そんなの嫌だ。

でも、言うことを聞かなくちゃ。

「・・・・はい」

すると、サクラコは
「やった～」と無邪気に喜び、

「お姉ちゃん、だもんね！」
と、それがさも当たり前かのように
言うのだ。

サクラコがかわいくないと言ったら
噓になる。

嫌いだ。
サクラコなんか大嫌い。

そう思うのに、心のどこかで
妹を愛している自分がいる。

そんな自分が嫌だった。

そんな妹は、
恋愛のライバルでもあった。

隣に住む、幼なじみのリュウト。

明るくてやさしくて、
大好き。

でも、それはサクラコも
同じなんだろうなと思う。

彼女等は同学年で、
クラスも被ったことがあるようだし。

かわいいサクラコ、

地味なわたし、ひより。

リュウトがどちらを
選ぶのかは明らかだ。

「なんで、サクラコばっかり・・・・」

つぶやきがもれた。

もし、私がサクラコのあとに
生まれていたら？

たんと甘やかされたのかな。

サクラコにも
かわいがってもらえたのかも。

もっとかわいい外見に
生まれていたのかも。

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

そんなある日、
サクラコがつぶやいた。

「私、リュウトに
告白しようかな」

ばっと体を起こした。

サクラコはびっくりした顔で
こっちを見た。

「どうしたの？」

「・・・・ううん」

私は、肩を落とした。

ここで私もと言っても、
どうせ勝つのはサクラコ。

リュウトの横に立つのは
サクラコなのだ。

なんだか悲しくなっていると、
サクラコが遠慮がちに言った。

「お姉ちゃん。あのさ・・・・」

「え？」

私はサクラコのほうを向いた。

「お姉ちゃんさ、リュウトのこと
好きでしょ？」

「え、ふえ？」

変な声が出た。

なんでサクラコが知っているの？

「な、なんで・・・・？」

「見たらわかるよ。姉妹だもの」

そう苦笑するサクラコの顔が
やけに大人びて見える。

「ならさ、後悔しないように
お姉ちゃんもリュウトに
告白しようよ！」

お姉ちゃんだから。

そう言う、あのサクラコの
笑顔はない。
大人びた笑みだ。

フェア。
妹のサクラコと、フェアで
バトルんだ。

「うん！」

私は、力強くうなずいた。

「「好きです！」」

私たちは同時に叫んで、
リュウトに手を突き出した。

リュウトは驚いていたが、
真剣に考えてくれたみたい。

「俺は・・・・」

心臓がバクバクする。

「いつもやさしく
妹のサクラコを支えてる
ひよりを見るのが、好きだ。
俺はひよりが好きだ。
・・・・ごめん、サクラコ」

うれしかった。

でも、それ以上に怖かった。

サクラコは、私に・・・・

「おめでとう！」

心からうれしそうな声が響いた。

サクラコの声だ。

「私ね、今までずっと
お姉ちゃんに譲ってもらってばっかりで、
そんな自分が嫌だった。
お姉ちゃんを選んでくれてうれしい！
ちょっと悔しいけどね」

やっぱり、私は好きだ。

まっすぐなサクラコも、
明るいリュウトも。

お姉ちゃんだから。

私はこれからも、サクラコを
愛していくよ。

＊ｅｎｄ＊