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スタートの合図

CAST白水ひより白水ひより

作者:結喜

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2025.11.07

「はい、次!
タイム計るよー!」





夏の午後、グラウンドの照り返しが
まぶしい。





陸上部のヒヨリは、
スタートラインに立った。





少し離れたところで、
ストップウォッチを構えるのは───
幼なじみのリヒト。





リヒト「緊張してんの?」





ヒヨリ「してない!」





リヒト「顔、まっかだけど」





ヒヨリ「それは、暑いからっ!」





軽口を叩き合うのは
いつものこと。





けど、ヒヨリは心臓が
ドキドキしていた。





理由は、
暑さだけじゃない。





ふたりは小学生のころから
一緒に走ってきた。





練習でも大会でも
いつもライバル。





ヒヨリ「次こそ抜かしてやるから」





リヒト「言ってろ、
今度は手加減しない」





そんな会話を
何度もくり返してきたけど、





最近───
「勝ちたい」だけじゃなくて





リヒトの笑顔を見たい自分に
気づいてしまった。





スタートの合図が鳴る。





ヒヨリは、地面を蹴った。





風を切る音、息づかい、
太陽の熱。





視界の端に、リヒトの姿。





────気づけば、
彼の前を走っていた。





ゴールテープを切る瞬間、
ヒヨリの胸にあふれたのは
達成感と、少しのざわめき。





ヒヨリ「・・・やった、勝った!」





息を整えながら振り向くと、
リヒトが笑っていた。





リヒト「やるじゃん、ヒヨリ」





ヒヨリ「でしょ!」





リヒト「・・・でも、正直
ちょっと悔しい」





そう言って、近づいてきたリヒトの顔が
思ったより近くて────





ヒヨリはあわてて
視線をそらした。





ソノマ「はいはい、青春してるね~」





横からひょっこり出てきたのは
親友のソノマ。





ソノマ「今のヒヨリ、顔まっか!」





ヒヨリ「ち、ちがうし!」





ソノマ「ふーん?
汗のせいかな~?」





ソノマが、にやにや笑う。





リヒトも照れたように
頭をかいた。













・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・





夕方の部活後。
みんなが帰ったあと、
トラックに2人だけ。





風がすこし涼しくなった。





リヒト「なあ、ヒヨリ」





ヒヨリ「ん?」





リヒト「おまえが勝ったら
言おうと思ってた」





リヒトは、ポケットから
何かを出した。





それは、青いリボン。





大会で一緒にがんばろうと約束した、
おそろいのやつ。





リヒト「これ、またつけようぜ。
次の大会も一緒に走ろう。
今度は────勝っても負けても、
おまえの隣がいい」





ヒヨリは少し息をのんで、
それから笑った。





ヒヨリ「・・・ずるい。
そんなこと言われたら、
もっとがんばっちゃうじゃん」





リヒトは照れくさそうに笑って、
ヒヨリの髪にリボンを結んだ。





その瞬間、グラウンドの風が
ふたりの間を通りぬけた。





夏の空はまだまぶしくて、





けれど心の中は、それよりもずっと
あたたかかった。





───────スタートの合図は
もう鳴っていた。







*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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