彼をかけて。

CAST青山姫乃

作者：デイジースター

2025.07.20

私、青山ヒメノ！

自他ともに認める
運動オンチです。

「運動会・・・」

もうすぐジゴクの運動会。

「青山さんッ！」

いつものぶりっ子声で
私を呼んだのは、
伊藤シャノン。

「青山さん、ハルトのこと
好きなんでしょ？」

「別に・・・」

「まあいいや。
今日勝った方が
ハルトに告白する。
それで、決定ね」

一方的に決まった勝負。

決まったものの、シャノンは
運動神経バツグン。

私となんか
比べ物にならない。

「青山どうした？
顔白いよ？」

ハルトくんだった。

「ううん、なんでもない」

運動会が始まった。

綱引き、玉入れ、
リレー、徒競走・・・

いくつもの競技を行った。

私のいる東軍と、
シャノンのいる西軍。

最終競技を前に
西軍が勝っている。

「最後の競技は、
借り物競争です。
出場選手の人は、
準備をしてください」

「ヒメノ！
ほら、行って来い！」

ユアに背中を押され、
スタート位置へ行く。

「あ、負けてる東軍の
青山さんじゃない」

シャノンだ。

「あなたアンカーなの？
私もなの」

バカにしたように笑った。

「ま、せいぜいがんばって」

こんなやつに負けるもんか！

途中までは、東軍が勝っていた。

しかし、私の前の人が転んでしまい、
西軍に抜かれた。

「あと、まかせた！」

と、言われたものの
運動できないし！

シャノンは、かなり遠い。

「ヒメノ、がんばれー！」

東軍の応援が聞こえる。

「借りるもの・・・」

「えー、親友ー？」

ふと気づけば、
シャノンは横にいた。

「大切な人・・・」

私は真っ直ぐに、
ある人の元へ向かった。

「ハルトくん！」

と、私は手を出した。

持っていたタオルを
友達にあずけ、
こっちへ来た。

「借りるもの、
なんだったの？」

「“大切な人”」

「シャノンに負けるから、
本気出すぞ」

さすがサッカー部。足速い。

置いて行かれないように、
手をしっかり握る。

「優勝は、西軍です！」

ギリギリ、タッチの差で
負けてしまった。

「ハルト、私、あのね・・・」

「俺、ヒメノのこと好きだから」

「「え？」」

シャノンと私の声が、
重なった。

「ヒメノが、好きです。
つきあってください」

ちょっと照れながら、
こっちを向いてそう言った。

運動会では負けたけど、
恋の勝負では勝ったみたい！

＊ＥＮＤ＊