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海色ブレスレット

CAST青山姫乃青山姫乃

作者:wwっか

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2025.10.30

私・青山ヒメノが住むのは
海辺のすぐ近くの、海の見える街。





小さい時から海を見て
育ってきた。





いや、海と一緒に育ってきた。





部活のない私のルーティンは、
学校帰りに海に寄ること。





夕方の海は、キレイ。





太陽が、海の神様に
導かれているみたい。





海は、人に危害を加える。





だけど私には
海は私たちをやさしく
見守ってるみたいに見える。





なんでかは、わからない。





風が心地よい。





砂場に座って、海を見つめた。





これは私だけの、大事な時間。





ここで海を見つめている時だけ、
私は真っ白になれるのだ。





なぜか懐かしい気分になった。





貝殻を拾いたくなって、
砂場に手をのばす。





キラリと光る貝殻が、
砂に埋もれていた。





なんだかうれしくなって、
拾おうとする。





「あれ?」





私が拾い上げたのは
キレイなブレスレットだった。





いくつものキレイな貝殻と、
青い美しいビーズが
私を見つけて、というように
キラキラ輝いていた。





「・・・・海に帰りたいの?」





ブレスレットを相手に
思わず聞いた。





ブレスレットは、ますます
キラキラ輝いた。





「じゃあ、
連れてってあげる」





ブレスレットを思い切り
海に放り投げた。





夕日が海色のブレスレットを
さらに輝かせた。





その瞬間、ありえないことが
起こった。





波がブレスレットを
捕まえたかのように
私には見えた。





波が何かの形になった。





それはだんだん人の形になる。





「え、えええ?」





戸惑っていると、
その人はこちらに歩いてきた。





「ブレスレットを返してくれて
ありがとう」





その人は、柔らかく微笑んだ。





手首には、さっき私が放り投げた
ブレスレットがはめられていた。





「僕、ダイジ。君は?」





「ヒメノです・・・」





彼はとてもやさしそうだけど、
ちょっと怖かった。





だって、波が人の形になって、
こっちへ歩いてくるんだもん。





「ヒメノちゃんか。
かわいい名前だね。
・・・君、いつもここにいるね?」





「あ、うん・・・なんで?」





「僕は海だから。
なんでも見てるんだ」





そんなことを言われても、
不思議と怖くはなかった。





「よくわかんないけど・・・
ダイジくんは、海ってことは・・・
ウミガメやお魚さんとも
お話しできるの?」





そう言うと、
彼はカラカラ笑った。





「もちろんだよ。
あのね、魚たちはいつも
君のことを見てるよ。
・・・おいで」





ダイジくんは
海に向かって呼びかけた。





魚がこちらに寄ってくる。





私は思わず手をのばした。





「かわいい」





つぶやくと、ダイジくんは
にっこり笑った。





「君みたいに、海を愛でる人は
大歓迎だ」





その言葉がうれしかった。





「あの・・・明日も会える?」





人懐っこい笑みを浮かべて、
彼は言った。





「もちろんだよ」





それから毎日、ダイジくんに会いに
海に行くのが楽しみになった。





放課後が楽しみで、
授業に身が入らない。





「海って、なんで青いのかな」





「澄んだ青って言うだろう?
海の者は、みんな心が澄んでるから」





「君はどうやって生まれてきたの?」





「気づいたら波だった・・・
って、感じかな」





彼は、ありとあらゆることを
知っていた。





そんな彼と話すことが
幸せだった。





「そうだ。君くらいの歳で、
放課後に海に来る子、
知っているかい?
君が帰った後に
いつも遊びに来るんだ」





同じ学校の子だろうか。





「どういう子?」





「肌がとにかく白くって、
なんだか独特な顔立ちの子だよ。
とてもかわいいけどね」





彼が自分以外の子を
かわいいと言っていることに、
ちょっとモヤモヤしている自分がいる。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





その次の日。





私は夜までずっと
海にいた。





どんな子が
海にやってくるのか、
興味があったから。





残念ながら、私は学校で
独りぼっちなのである。





同じように海を愛でる子と
話してみたかった。





「あ」





思わず声をあげた。





海の方にニコラ学園の
制服を着た少女が
近寄って行ったから。





彼女はやさしい表情で
水にそっと触れた。





彼女は海にあいさつするみたいに
頭を下げると、歩き出した。





その歩き方には、見覚えがある。





松尾ソノマ。
ニガテなクラスメートだ。





クラスの中心人物。





「そっか、ソノマちゃんも
海が好きなんだ・・・」





これから仲よくなれそうな
予感がした。





「全部ダイジのおかげだよ。
新しい友達もできたし」





あれからソノマとは
仲よくなった。





ベストフレンド、といっても
過言ではない。





「なら、もうだいじょうぶだね」





彼は、ささやくように言った。





「え?」





私は目を瞬く。





「僕は独りぼっちの君を助けたくて
波から生まれた。もう行くよ」





その言葉で、私はもう2度と
彼には会えないことをさとる。





「いやだ。
そんなの、いや・・・」





彼は、やさしく微笑んだ。
いつかのように。





「これ、あげる」





それはいつかの
海色ブレスレット。





キラキラと貝殻と青いビーズが輝く
ブレスレット。





「・・・いいの?」





「これでいつでも思い出してね」





それから私が
ダイジに会うことは
もう2度となかった。





でも、それでいい。





私には海色ブレスレットと
大切な大切な彼との思い出があるから
それで。







*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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