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犬の恩返し

CAST工藤 唯愛工藤 唯愛

作者:とも

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2025.09.06

「昨日、ユアのゆうれいを
見たんだ」





ある日の昼休み、
クラスメイトのミサキが
ポツリと言った。





「え?」





私は、思わず聞き返した。





「ユアだと思うんだよな。
顔も雰囲気も似てるし。
でも、足がなかったから
ゆうれいだよ」





ミサキは真面目な顔で
私を見つめた。





「じょうだんはやめてよ」





私は思わず、ふてくされた。





ミサキは、私の片思い中の相手だ。





それなのに、勝手に人を
ゆうれいなんかにして。





私、まだ生きてるよ。





「それで、ユアのゆうれいが
俺のこと好きって言うんだよ」





ミサキの発した言葉に
私は食べていた3色そぼろごはんを
思わず吐き出すところだった。





「へ、へえ・・・」





「なんか、心当たりない?」





「ないよ、あるわけないでしょ」





私はあわてて
お弁当をかたづけた。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





次の日の昼休み、
ミサキはまた
私のところにやって来た。





「昨日もまた
ユアのゆうれいが出たよ。
俺とつきあってくれだって」





「やめてよ。
私、なにも知らないよ」





「今度一緒に
ゆうれいを見に行こうよ」





「は?」





「塾の帰り道、
夜の10時くらいに
3丁目の交差点に出るんだ」





「その交差点って・・・」





「なにか知ってるの?」





「ううん。
なにも知らない」





私はどうも
乗り気がしなかった。





ゆうれいなんて
信じないし、





まして、自分の
ゆうれいだなんて。





なんだかんだ言いながらも
私はミサキと
夜に出かける約束をした。





私は、家に帰って
ベッドに寝転んだ。





夢にまで見た
ミサキとの初めてのデートが
ゆうれい見学だなんて。





私は、大きなため息をついた。





私は引っこみ思案な性格で
友達も多くない。





まして、彼氏なんて
いたことがない。





クラスでもいつも
1人でいることが多い。





ミサキはクラスの学級委員で
誰にでもやさしい。





顔もカッコいいので
当然モテるし、ライバルは多い。





私は自分に自信がないので
自分から告白なんでできない。





私は恋愛相談をする
相手もいないので、
よく愛犬のポチを相手に
グチっていたが、
そのポチももういない。





ポチは昨年、車にひかれて
死んでしまった。





ポチがいなくなってから
私は唯一の親友を
なくした気もちになって、
とてもさみしかった。





私はミサキとの
約束の時間になったので、
親にすぐ帰るからと言って
外出した。





夏の夜は
空が澄んでいて
星がきれいに見えた。





待ち合わせ場所で
私はミサキを見つけた。





「こんばんは」





私は、ミサキと2人きりで
少し緊張していた。





「ユア、来てくれたんだ。
もうすぐそこに
ゆうれいが出ると思うんだよ」





ミサキは、交差点の
路肩を指さした。





「ふーん」





私はあまり
興味ないふりをした。





でも本当は、ミサキと2人で
話せてうれしかった。





でも、その日は
なかなかゆうれいが
出なかった。





「今日は、出ないのかな」





ミサキが頭をかいた。





その時だった。





小さな犬の形をした
半透明のゆうれいが現れた。





「へえ、今日は
犬のゆうれいか」





ミサキは
興味深そうに言った。





「ポチ・・・」





私はびっくりした。





それは、確かにポチだった。





『かわいがってくれてありがとう』





私の頭の中に声が聞こえた。





「ポチ?」





私は、ポチともっと
話したかった。





でも、ポチのゆうれいは
スルスルと空に昇って
消えてしまった。





「消えちゃったな」





ミサキが
夜空を見上げた。





「ポチだよ。
私の愛犬だったんだ。
ポチが、私のゆうれいに姿を変えて
ミサキの前に現れてくれたんだ」





「でも、なんで?」





「あのね、
私はミサキが好き」





私は思い切って
告白した。





ポチがくれたチャンスを
決してムダにするものか。





「うん、なんとなく気づいてた。
でも、俺はまだユアのこと
よく知らないから
友達からでどう?
ユアのこと、もっと教えてよ」





ミサキは、私の手を握った。





『おめでとう』





私は確かに
声を聞いた気がした。





*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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