君が笑うから
作者:イェリ
私はきっと
そんなにまで強くない
だけど、ここは
戦わないといけない
だって
私の
* ――― * ――― *
「ねーマジで
ウザイんだけどーwww」
「こっち見んなー!!www」
「おい女子ー
さすがにやばいんじゃねー??www」
「えーそおー?www」
まただ、
見たくないのに
うちのクラスの
懸樋オオゾラは
いじめられている。
名前もそうだけど、地味、
それがリーダー格の女子や
チャラけた男子に
嫌われる理由らしい。
地味なだけで
嫌われるんだったら、
私だって・・・
「カノン!!」
この子はナナ。
私の親友。
「ナナ、おはよ」
「カノン、
そろそろ元気だしてよ・・・」
「・・・心配してくれるのは、
分かるんだけど・・・」
「・・・もう、1年だよ?」
私の父は昨年他界した。
過労での飛び降り
家族なのに、
気づいてあげられなかった。
それが1番の後悔。
働いてくれてたのに
私をお母さんと
育ててくれたのに。
でも
「今、私が悩んでるのは、
また別だよ」
「え?」
「・・・再婚するって、
お母さんが」
「え・・・」
「だから、もう
忘れちゃったのかなって
思って・・・」
「・・・」
「それで、今日、会うの」
「カノン・・・」
「もう私、
信じられなくなっちゃった」
ははっと笑いながら、
言ってみた。
「いつでもうちに来ていいから!!
24時間365日
いつでも大丈夫だから!!
カノンの力になるか
わかんないけど、
ずっと居るから!!」
ほらね、
ナナは、優しい。
だから
不安になってしまう。
「・・・ありがと」
また
ナナも
いなくなっちゃうんじゃ
ないかって。
* ――― * ――― *
「こちらが、
懸樋翔大郎さんよ」
「初めまして、
カノンちゃん。
こっちはオオゾラです」
「・・・懸樋・・・?」
「・・・北川さん・・・?」
「あれ、知り合いだったの??
なーんだ笑笑」
「初めまして、
カノンの母の美愛です」
マジか。
まさか、懸樋が
再婚相手の子供なんて
絶対に言えない・・・
「とりあえず、
家を売ってしまうわね」
「・・・名前、
すぐに変わっちゃうの??」
「カノンが変えたいと
思った時に、
変えればいいよ」
「お母さん・・・」
私は一生
変えたくないけど・・・
こうして私の
懸樋カノン(仮)生活が
始まった。
* ――― * ――― *
「北川さん・・・」
「・・・カノンでいいよ。
家じゃ呼びにくいでしょ?」
「じゃあ、
僕もオオゾラで」
「どしたの?」
「お父さんが
カノンさんの荷物
手伝えって」
「うん。
そうしてくれると
すごく有難いな・・・」
「良かった。
僕、てっきり嫌われてると
思ってたから」
「え?」
「てゆうか、クラスの人は
みんな僕のこと
嫌いだけどね笑笑」
「・・・でもそれだったら
私だって
そろそろ言われるよ」
「なんで?」
「なんでって・・・
暗いし」
お父さんが死んでから、
ずっとそうだ。
前はよく女子にも
男子にも話しかけられてた。
今は・・・
「また笑顔がみたいな」
「え?」
「カノンさんの笑顔に
憧れてたんだ」
「・・・ありがとう」
素直に、なった。
そしたら
オオゾラくんも
笑った。
「どういたしまして」
オオゾラくんは
全然地味なんかじゃなかった。
なのに
私は
今まで見て見ぬふりを
していたんだ。
ナナには
言っておかなきゃ。
・LINE・
カノン《ナナ、今大丈夫?》
ナナ《大丈夫だよー
どうしたの?》
カノン《再婚相手の子供、
懸樋くんだった》
ナナ《え!? 懸樋!?》
カノン《私も昨日
ビックリしちゃって・・・》
ナナ《そうなんだ・・・》
カノン《うん》
ナナ《学校では言わないでしょ??》
カノン《懸樋のこと考えたら
尚更言えない》
ナナ《アムちゃんとかに
バレたらまずいよ・・・》
カノン《私もそう思う・・・》
ナナ《またなんかあったら言って》
カノン《ありがと(● ´▽ `● )》
アムちゃんや
はるかちゃんは
クラスのリーダー格で
ワタジュンやユウヤも
かなりやばい。
バレたら、懸樋が
大変だと思う。
頑張らないと。
「オオゾラくん、
あのね話があって・・・」
「・・・学校のことでしょ?」
「え?」
「絶対秘密だね」
「・・・なんで分かったの?」
「僕と関わると
めんどくさいよね」
「は?」
「僕のことは、
いつもどおりでいいからね」
何言ってんの、こいつ。
私はあんたに
迷惑かけたくないだけなのに。
「何それ・・・
私はバレたらアムちゃんとかが
オオゾラくんを
もっと追い詰めると
思ったからっ・・・」
「・・・え?」
「私みたいに地味なのは
もっとやめた方がいい。
バレたらもっとやられる。
だから、学校では内緒ね、
そう言おうとしたんだよ??」
「・・・ごめ」
「謝らないで、
オオゾラくんは
何も悪くないから!!」
「・・・え」
「私は自信を持って
懸樋カノンって言えるくらい
変わってみせるから」
「・・・」
「見てて」
「・・・うん。
ありがとう」
強くなる。
そう決めた。
その時くらいからかもしれない。
オオゾラくんの笑顔が
見たいと思ったのは。
この人を笑顔にしたいと
思ったのは。
* ――― * ――― *
まずはイメチェン。
「おはよ」
「北川さん??
髪下ろしたんだ、
可愛いねー!!」
クルミちゃんが
話しかけてくれた。
「ありがとう」
「わーホントだ!!
北川ちゃん可愛いよー!!」
コハルちゃんまで。
「まだ慣れないんだけど・・・
結んだ方がいいかな・・・?」
「「ぜーったいそのまま!!!!」」
笑った。
「ねぇ、カノンちゃんって
呼んでいい??」
「ぜ、全然いいよ!!!
むしろお願いします!!」
「じゃあ私はクルミで!!」
「うちコハルー!!」
「よろしく!!」
嬉しかった。
話しかけてくれた。
「カノンおはよう」
「ナナおはよ」
「野崎さんおはよう!!」
「野崎ちゃんおはー!!」
「おはよ!!
池さん!! 湊さん!!」
「あ、やば、せんせーきた!!」
「じゃあね!!」
「うん!!」
話せて良かった。
オオゾラくんの方を見たら、
笑ってくれた。
「・・・意味わかんない・・・!!!」
* ――― * ――― *
「カノンちゃん!!
お昼一緒に食べない??」
「あ、いいよ!!」
「どこ行くー??」
「屋上は??」
「寒くない??」
「野崎さんもどう??」
「私ちょっと
用事あるからいいや!!」
「ほんとにー?」
「うん!!」
「じゃあ後でねー!!」
ナナ、
どうしたんだろ・・・
「野崎さん、話って何?」
「北川カノンは
本当は懸樋カノンだよ」
「はあ?
意味わかんない」
「これ見て」
「・・・マジかよww
ネタじゃんwww」
「やばーwww
じゃあ北川もだねーwww」
「なになにー?
なんの話してんのー?」
「北川さんとこと懸樋のとこ、
再婚したんだってー!!www」
「何それうけるwww」
「終わったね、カノン」
*・。+ *・。+ *・
「ねえ、あれ・・・」
「また懸樋のこと??
いい加減
辞めたらいいのに・・・」
「1人の人いじめて
そんなに楽しいかな・・・
見てるこっちの身にも
なって欲しいよ」
「そうだよね、だって
懸樋普通に優しいし!!」
「私、小学校
一緒だったんだけどね、
メガネ外したら
カッコイイよ、懸樋」
「それほんと??」
「私、懸樋の家に
プリント届けに
行ったことあるけど
普通に優しいよね!」
「何が気に入らないのかな・・・?」
私はオオゾラくんが
どうしていじめられているのかが
すごく気になっていて、
クルミちゃん達なら
知ってるかもしれないと思った。
「北川さん!! 好きです!!」
・・・は?
え?
えええええええええええええ!?
ここここここここここここ
こここここ告られた!?
「あ、あの、えっと・・・
ごめんなさいっ!!!」
「え?」
「今は、そういうの、
あんまり考えてないってゆーか・・・
ごごごごごめんなさいっ!!」
「そうなんだ・・・」
びびっくりしたぁ!!
「おーおーやるじゃん」
「クルミちゃん!?」
「マジか、やっぱり男子も
気づいちゃったか、
カノンちゃんの可愛さに!!」
「い、いや私
可愛くなんか・・・」
「「いや可愛いからね!!」」
「カノンちゃんは
もっと笑った方がいいと思う!」
「そーだよ!!
カノンちゃんが笑ってると
みんな楽しいよ!!」
「ほ、ほんと??」
「うん!!」
「もっと笑っていいよ!!」
私、笑っていいんだ。
オオゾラくんにも、
そう思って欲しいな・・・
あれ、これって
なんて言う感情・・・?
* ――― * ――― *
「北川さん、これ
職員室に運んどいて」
アムちゃんに言われて、
机の上に山積みのプリントが
ドサッと置かれた。
「えっ・・・」
「違うよアムー!!
もう北川さんじゃなくて、
懸樋さんでしょー!!www」
「え!?」
「親、再婚したんでしょ?
懸樋じゃん」
「それ、誰が・・・」
「私だけど??」
声がした方を振り向くと、
ナナがいた。
「なんで、ナナが・・・?」
「ざっくり言うと
嫌いだから」
「え」
訳わかんない・・・
「ウザイじゃん、
いい気になって
囲まれてさ」
「何それ・・・」
「野崎さん
何言ってるの・・・?」
「カノン大丈夫?」
「大丈夫・・・」
大丈夫なわけない。
どうして、ナナが・・・?
「ねーそうでしょ?
懸樋ー!!」
オオゾラくん・・・
「・・・違う」
「はあ?
違わないでしょー?
ちゃんと言いなよーwww」
「僕は、北川さんのことは
知らない」
知らない?
知らない?
知ってるじゃん。
なんでそんな。
私が嫌いだから?
目の前が真っ暗になって、
目が覚めたら保健室だった。
* ――― * ――― *
カノンさんが
深尾さん達に絡まれてた。
僕が絡むと
何かしらやられる。
だから、違うって言うしか
なかったんだ。
最低だと思う。
だけど、
僕に関わると
ひどい目にあう。
だから・・・
北川さんが倒れた。
僕がもっと強かったら
北川さんは
倒れなかったと思うのに。
僕は、最低だ。
絡まれてる北川さんを見て
ひどいと思ったけど
同時に怖いと思った。
僕なんかが北川さんと
家族だなんて知られたら
北川さんが・・・
「んなわけないっ!!!」
「え?」
「あんたが
考えそうなことなんて
もう分かるんだから!!」
「は・・・?」
「今自分のせいで
カノンちゃんが
こうなったって思った?」
「・・・なんで・・・」
「カノンもそうだから」
「北川さんも?」
「私らに話しかけられる前に
ずっとそんな感じだったから。
分かるんだよ!!」
「それで・・・なんで・・・」
「カノンは、懸樋のこと
心配してたんだよ!?
いじめられてることも、
なんとかしたいって言って!!」
「・・・え?」
「てゆーか、懸樋って
カノンちゃんが
好きなんじゃないの!?
カノンちゃん今日
告られたんだからね!?」
「え・・・いや・・・っ」
「グズグズしてたら
誰かに取られるよ」
「てゆーかその前に
アムちゃんとかに
やられちゃうよ!?」
「・・・」
好きなんだ。
カノンさんが。
* ――― * ――― *
目が覚めたら、
保健室だった。
懸樋に嫌われた。
それがなんで
こんなに苦しいのか。
嫌われたから??
知ってるはずなのに、
知らないって
言われたから??
なんで・・・?
懸樋に会いたい。
ちゃんと謝りたい。
懸樋が・・・
好きなんだ・・・
そう気づいて
走り出した。
嫌われてるかもしれない。
だけど、
好きだから。
* ――― * ――― *
「ねー懸樋ー?
北川の机見てみー?」
「やばいよねwww
画力天才かよwww
もうちょっと言葉荒らげた方が
それっぽいかもーwww」
「死ねとか
書いちゃうー?www」
「マジかよww」
「や、やめてよ・・・」
「は? 何?」
「死ねはないよ、
だ、だから・・・
北川さんじゃなくて、
ぼぼ僕を・・・」
「はぁ!?
何それウケるwww」
「北川さんをいじめるのは、
やめて!!!!!」
「へぇ、そお、
じゃああんたなら
いいわけね、
おけおけwww」
「誰か懸樋
殴りたいヤツいるー?www」
「ちょっと、やめなよ」
「何ー?
聞こえないーwww」
「おい、それは・・・」
「さすがに
やばいんじゃね・・・?」
「はあ? 今更何
怖気づいてんの?」
「カノン・・・止めてっ」
「じゃあ私がやるから」
教室に入った瞬間に
そんな言葉が聞こえてきた。
ドアを開けた音に
みんなが気づいて、
こっちを見てきた。
「わあ、北川さん
机荒れてんねーwww」
許せない。
「ねぇ、やめなよ!!」
「もうやめよーぜ!」
「殴るのは違うよ!!」
「うるさいうるさい
うるさい!!!
じゃああんたが殴れば??」
「えっ・・・」
ナナが、懸樋を、
殴る・・・?
何それ。
私はきっと
そんなにまで強くない。
でもきっと弱くもない。
「やーれ、やーれ、!!」
本当なら、
怖くてしょうがない。
でも、戦わないといけない。
だって私の大切な
ナナとオオゾラくんが
「早くやれよ!!!」
壊れそうなんだ。
「やれって!!!」
「わ、私には、無理・・・」
「はあ!?
何言ってんの?」
「無理だよ・・・」
「じゃあ、
あんたでいっか」
やめて!!!!!
「カノン!?」
「いった・・・」
「北川ー?
何してくれちゃってんの??」
私はどうやら、
ナナの代わりに
ハルカちゃんに
殴られたらしい。
「どう? 気が済んだ?
こっちはかなり
痛かったけど」
「はぁ!?
チョーシに乗ってんじゃ
ないわよ!!!!!」
来る。
そう思った。
バシッ
「・・・は?」
「やめて・・・これ以上、
僕の大切な人を
傷つけないで・・・!!!!!」
大切な、人?
「触ってんじゃないわよ!!」
「もうやめろよ!!」
ジュンヤが叫んだ。
「な、何言ってんの??」
「そうだよ!!
カノンと野崎さんと懸樋
犠牲にしといて!!」
「今まで言わなかったけど、
ずっとずっと
ウザかったんだからね!?」
「俺らのことも勝手に
奴隷にすんじゃねーよ!!!」
みんなが、
口々に言い始めた。
「カノン、大丈夫?」
「まだフラフラするけど、
大丈夫」
「え? ちょっ・・・」
「あ、れ、・・・」
「危ないっ!!!!!」
懸樋だった。
「・・・あ、ありがと・・・」
「・・・無理しないで」
「え?」
「殴られたとこ、
腫れてるよ」
「う、嘘・・・」
「保健室行こう・・・」
「いや先生に
心配かけちゃうし・・・」
「大丈夫だから、行こう」
「・・・うん」
ナナ、私はあなたを
守ることが出来ましたか??
* ――― * ――― *
「あれまあ、かなり
腫れてるじゃない・・・!!」
秋田先生が言った。
「先生、職員室に
行ってくるわね!!」
「はい・・・」
「「あのさ」」
「「!?」」
「オオゾラくんから、
どうぞ・・・」
「そんな怪我させちゃって、
ごめん」
「え!? いや・・・
これ私が自分でしたことだし・・・」
「でも・・・
顔に怪我させちゃったし・・・」
「・・・気にしないで・・・
てゆーか、
私が気になった点が
ございまして・・・」
「な、な、
なんでもどうぞ!!」
「『僕の大切な人』って
言ったよね??
それってどういう・・・」
「え、えっと・・・
それは・・・」
「私は好きだよ」
「ええええ!?」
「・・・兄弟になっちゃうから、
無理だけど」
「ぼぼぼぼぼぼぼ僕もっ!!!!!」
「え?」
「ぼぼ僕もカノンさんが
すすすす好きだよ!!!!!」
「なんでそんなに
慌ててんの??」
そう言って、笑ったら
きっと君も
笑顔で
ほら
「やっぱりカノンさんは
笑顔が似合う」
そういうんだ。
* ――― * ――― *
「クルミちゃん、
コハルちゃん、
心配かけてごめん・・・」
「めちゃくちゃ
心配したんだからー!!!!!」
「マジで大丈夫??」
「大丈夫だよ!!」
「良かった・・・」
「あと!! 私のことは
クルミでいいから!!
なんか勝手にカノンって
呼んでたし・・・笑笑」
「私もね!!
コハルでいいから!!」
「うん!!
ありがと!!
クルミとコハル!!」
そう言って笑ったら
みんなが笑ってくれる。
「ナナ」
「・・・カノン・・・」
「ナ・・・「カノンごめん!!!」
「え?」
「カノンに酷いこと
しちゃった・・・」
「気にしないで」
「でも・・・」
「笑ってよ??」
「え?」
「ね??」
「うん・・・
ごめんね・・・」
そう言って、
笑ってくれても
やっぱり私は・・・
「カノンさん帰ろう」
「うん」
「今日の夜ご飯
なんだろうね」
「ハンバーグだといいな」
「カノンさん野菜好き??」
「美容のためって
言い聞かせて、
食べてる・・・」
「僕全部無理・・・」
「ほんとに??」
私が笑った時に
君が言ってくれる
やっぱり
「笑った」
*END*
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